ECの法律「〇と×」 元経済産業省官僚・弁護士が教える3大モールの『規約』と『ガイドライン』に泣き寝入りしない方法

「Yahoo!ショッピング」のペナルティ・誓約書などへの対処法+ 相談窓口の活用と弁護士相談の「正しいタイミング」

Yahoo!ショッピングの「プロモーションパッケージ」や「誓約書」の真相、突然の退店に対する具体的理由開示の求め方などを解説。3大モールの規約格差と弁護士相談の正しいタイミングまで、出店者が巨大モールに泣き寝入りせず生き残るためのアドバイスを弁護士が提示します。

竹内 謙礼[執筆]

8:00

連載最終回となる第4回は、「Yahoo!ショッピング」を運営するLINEヤフー編に加えて、透明化法の総括をお届けします。「Yahoo!ショッピング」では、出店者が直面している「プロモーションパッケージ」への課金構造、頻繁なルール変更などが存在します。さらに、他モールとは異なる「ペナルティ点数非公開」というリスク、一度違反を犯した店舗の「誓約書」の存在なおもあります。突然の休店・退店措置に対抗するための「具体的な理由開示の求め方」や、万が一トラブルがこじれた際の「弁護士相談の正しいタイミング」など、3大モールの規約格差を総括し、出店者が永続的にビジネスを守り抜くためのヒントを椋木弁護士との対談から解説します。

聞き手・執筆:竹内謙礼(経営コンサルタント)

有限会社いろは 代表取締役。大学卒業後、出版社に勤めた後に観光牧場に転職。企画広報担当を経て2004年に経営コンサルタントとして独立。「楽天市場」「ビッダーズ」などで多くのネットビジネスの受賞履歴あり。また、「千葉文学賞」などの小説、エッセイでも数々の受賞暦を持つ。

話し手・椋木エラン氏(メリットパートナーズ法律事務所 弁護士/元経済産業省官僚)

メリットパートナーズ法律事務所(https://www.meritopartners.jp/)で、EC事業者・EC支援事業者の支援に注力。特許や商標、意匠などの出願から紛争まで取り扱っている知的財産関係を専門としている。2022年に内閣官房へ出向、「スマホソフトウェア競争促進法(いわゆるスマホ新法)」の企画・立案に関与。その後、経済産業省に移り、「透明化法」の主にECモール分野における執行・運用に携わった。現在はメリットパートナーズ法律事務所に戻り、EC分野の法務支援に力を入れている。

一発退店の恐怖!? Yahoo!ショッピングの「ペナルティ点数非公開」と「誓約書」の真実

竹内氏竹内

LINEヤフーのペナルティや退店の措置の対処法について教えてください。

椋木椋木

LINEヤフーは他の2社と違い、ペナルティの点数が出店者に公開されていません。その代わり、何か問題があった場合、プラットフォームと出店者が「誓約書」を交わし、次にトラブルがあったら一発退店という、二段構えの対処法をとることが往々にしてあります。

竹内氏竹内

1回のミスで、退店のリーチがかかるんですね。

椋木椋木

軽微なミスも含めて全て退店のリーチがかかるわけではないですが、そのような運用もあって、透明化法の相談窓口に「『Yahoo!ショッピング』店が退店になりそうだ」という相談が多く寄せられています。ただ、ここで出店者側が誤解してしまうのは、「誓約書に違反したから、有無を言わさず退店になる」と思い込んで、過剰に萎縮してしまうケースです。

竹内氏竹内

どういう意味でしょうか。

椋木椋木

過去にLINEヤフーから警告を受けて、出店者が「誓約書」や「改善計画書」を提出していた場合、その後に退店処分の通告を受けてしまうと、「あの誓約書を破ってしまったから、即座に罰が下されたんだ」と自己完結し、パニックになって泣き寝入りしてしまいがちです。しかし、プラットフォームと出店者が交わした誓約書というのは、「契約を交わしたから一切反論してはいけない」というものではありません。つまり、透明化法が定めているプラットフォーム側の説明義務や適正手続を経ずに、強制的に退店処分にしていいという免罪符にはならないのです。

竹内氏竹内

誓約書を交わしているからといって、プラットフォームが退店理由を開示しなくてもいい、というわけではないのですね。

椋木椋木

その通りです。たとえば、プラットフォーム側から「誓約書の内容に違反している」との通知が届くと、出店者側は具体的にどの行為が違反とみなされたのか、具体的に検証せずに退店を受け入れてしまうことがあります。特に一度でも誓約書を交わしていると、「もう反論できない」と勘違いしてしまい、そのまま退店処分を受け入れてしまいやすくなります。「Yahoo!ショッピング」では、再度の出店が困難であるとも一般的には言われているので、これは出店者側にとって死活問題になります。

竹内氏竹内

以前に「悪いことをした」という自覚がありますからね。

椋木椋木

透明化法や国が求めているのは、出店者が「自分たちの何が悪くて、どう直せばいいのか」をちゃんと理解し、反論や改善の準備ができるくらい、具体的な理由をプラットフォーム側が提示することです。「誓約書に違反した」というのは結果や結論であって、理由や原因ではありません。したがって、出店者は退店通知を検証すること、もし退店理由が不明確であれば、その理由について説明を求めることも選択肢に含めることが考えられます。

竹内氏竹内

具体的には、どのような文章で開示を求めればいいのでしょうか。

椋木椋木

たとえば、処分の通知に理由が示されていないようなことがあった場合、「誓約書違反との通知をいただきましたが、具体的にどの商品(商品コード、商品タイトルなど)の、どの行為・内容が規約に抵触したのか、詳細な事実関係の開示を求めます」というような形で主張を組み立てるのが効果的になります。

竹内氏竹内

やはりここでも冷静な対応に徹することが求められるんですね。

椋木椋木

現在、LINEヤフーは退店処分などを行う場合、きちんと理由を開示する方針をとっています。それなのに、もし理由がよく分からない一方的なペナルティや身に覚えのない休店措置が届いたとしたら、それはシステムの「誤検知」などである可能性もあります。出店者は「もうダメだ」と諦めて言いなりになるのではなく、まずは落ち着いてLINEヤフーに確認や異議申し立てをするべきだと思います。

経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、Yahoo!ショッピングの利用者で3割以上が出品の停止・削除に不満を感じている。また、「停止・削除処分に対する異議申立てをしても納得のいく説明を受けることができなかった」と回答した出店者は約6%となった。(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_platform_monitoring/pdf/2026_001_s03_01.pdf
経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、Yahoo!ショッピングの利用者で3割以上が出品の停止・削除に不満を感じている。また、「停止・削除処分に対する異議申立てをしても納得のいく説明を受けることができなかった」と回答した出店者は約6%となった。(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より) 

追加費用のモヤモヤ! 「プロモーションパッケージ」と頻繁なルール変更への対処法

竹内氏竹内

LINEヤフーが運営する「Yahoo!ショッピング」に対しては、椋木さんの視点からどのような認識をお持ちですか。

椋木椋木

楽天やAmazonとは異なる独自のビジネスモデルとコンプライアンス体制をとっていると思っています。AmazonにはFBA、楽天には楽天スーパーロジスティクス(RSL)のような強固な自社物流網があり、基本出店料や販売手数料、物流利用手数料による確実な収益基盤を持っています。一方、LINEヤフーは自社配送を持っておらず、これまで出店料を無料にするという戦略をとってきました。そうなると、これは一意見ですが、他の2社とはビジネスモデルも自ずと変わってくると推測されます。たとえば、モール側が収益を上げるための動機として、店舗にいかに「アイテムリーチ」などの広告を踏ませるか、「プロモーションパッケージ」やPayPayポイントの原資となる店舗負担率をいかに引き上げさせるかといった追加の販促費を稼ぐ傾向にあるという考察も1つ考えられます。「Yahoo!ショッピング」における「透明性向上のための取組みのご紹介」においても、「ストアが支払う販売促進費の設定率」が検索順位に影響すると記載されているように、出店者としてはこれらの販促費を活用することも考えられます。

竹内氏竹内

「Yahoo!ショッピング」の運営に販売促進費を払ったとしても、どのくらいの販促効果があるのか分からないという意見も考えられますよね。この点については透明化法でどのように評価されているのでしょうか。

椋木椋木

おっしゃる通り、出店者からの不満は複数出ており、経産省の会合でも1つの論点として取り上げられています。国は、LINEヤフーに対し、報告書で「例えば、有償サービスの検索結果への影響度をより具体的にコミュニケーションするなど」という文言で出店者との理解促進に向けた更なる自主的な取組みを求めています。一方で、プラットフォーム側からすれば、あまりに詳細な基準を公開すると、不正に検索順位を上げるなどハックされる懸念もあります。国としても、重要な論点として注視していることには変わりないので、今後、どの範囲で更なる基準を公開していくのか、プラットフォームとの摺合せの結果を見守っていく必要があります。

竹内氏竹内

「Yahoo!ショッピング」の「プロモーションパッケージ」は、加入すると検索順位が優遇されたり、専用の分析ツールが使えたりするメリットがあります。一方、仕様やルールがコロコロ変わるので、出店者にとっては大きなストレスになっています。

椋木椋木

たしかに、Yahoo!ショッピングでは、手数料やキャンペーンの負担増、配送基準の変更など、店舗のコストが増えるルール変更が頻繁に起きているとの苦情が出店者から寄せられているところです。実は透明化法では、重要な条件の変更を行う場合、プラットフォーム側に「15日前までの事前通知」と「理由説明」を義務付けており、理由の説明も出店者が納得できるほどの明確なものであることが期待されています。もし直前になって通知が来たり、十分な説明がないまま不利益な変更を押し付けられたりした場合は、泣き寝入りせず相談窓口に報告して、状況を改善するアクションを起こすことが得策といえます。

経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、3大モールいずれにおいても約7〜8割の回答者が、取引条件の変更について問題点を挙げている。特に、「変更後の取引条件に対応するために十分な時間が確保されていない」と回答している出店者は3割近くを占める。(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_platform_monitoring/pdf/2026_001_s03_01.pdf
経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、3大モールいずれにおいても約7〜8割の回答者が、取引条件の変更について問題点を挙げている。特に、「変更後の取引条件に対応するために十分な時間が確保されていない」と回答している出店者は3割近くを占める。(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より) 

竹内氏竹内

「ルールがコロコロ変わってよく分からない」とか「納得いかないけれど、モールには逆らわないほうがいい」というのが、逆にプラットフォームと出店者の関係を硬化させる原因にもなってしまうんですね。

椋木椋木

出店料やオプション料金といった事業活動に直結する大事な料金変更について、「説明がよく分からなかった」「高すぎる」という意見が集まれば、国が改善に動くきっかけにもなります。透明化法の指針では、出店の際の条件を変更する際には、出店者への影響を考慮することを求めているところでもあります。プラットフォームに泣き寝入りせず、おかしいと思ったら声を上げたほうがいいということです。ただ、経産省に報告する際、「報復が怖いから社名が出せない、でも改善してほしい」と言われるケースがよくあるのですが、そうなると国としても具体的な調査や対処がしづらく、また、匿名のままプラットフォームに情報提供をして欲しいといわれても、彼らとしてもどのように受け止めていいのか難しいところがあります。令和7年に991件の相談が窓口に寄せられましたが、そのうち相当数が会社名を明かして相談しています。

竹内氏竹内

実際、プラットフォーム側からの報復措置みたいなことはあるのでしょうか?

椋木椋木

経産省の窓口経由でも1000件近く相談を受けるので、1社1社に対して報復することは物理的にも難しいのではと思います。ましてや、そのような報復行為に出てしまったら、それこそプラットフォームとしても法律違反やレピュテーションリスクといった甚大なリスクを負うことになります。それよりも、社名をあげていただいた方が個別でヒアリングをして、窓口の方でも体系立てて苦情を整理することができるので、プラットフォームにも案件を上げやすくなります。

「理不尽な追い出し」に挑む! 相談窓口と弁護士相談の正しいタイミング

竹内氏竹内

最近、LINEヤフーに限らず、楽天やAmazonも店舗数や商品点数を絞り込んでいく流れが加速している印象を受けます。プラットフォームは店舗や商品点数を増やしていくモール運営から、問題を起こしそうな商品や、出品を取りやめてもモールの総流通額に影響がないようなマイナーな商品を、何かと理由をつけて取り下げていくのではないかと懸念しています。

椋木椋木

その点は私達も強く警戒しているところです。プラットフォーム側がリスク管理を優先して、小さな店舗やマイナーな商品を強引に排除する動きになってしまうことはあり得ると思います。だからこそ国としても、そうした「理不尽な追い出し」が裏で行われていないかを厳しくチェックするために、相談窓口に寄せられた出店者への調査だけでなく、年に一度広く1000社以上の出店者を対象としたアンケート調査も実施しています。出店者が一方的に不利益を被ることがないよう、引き続き監視体制を強化していきたいと思います。

竹内氏竹内

この4回の連載を通じて、楽天市場、Amazon、LINEヤフーで、ペナルティや退店の対処法、構造的な問題がまったく違うことが理解できました。

椋木椋木

それぞれ独立した企業が、独自のガイドラインと仕組みに基づいて運営しているので、対処法もそれぞれで異なります。ただ、共通して言えることは、慌てず、臆することなく、冷静に証拠を集めて、理路整然とプラットフォームに自分たちの主張をしっかり述べることです。それでも対処が難航するようであれば、透明化法の窓口に相談をするのが、自分たちのビジネスを守る術になると思います。

竹内氏竹内

もし、仮に話がこじれてプラットフォームと徹底的に裁判をやるようなことになれば、どのタイミングで弁護士に相談するべきなのでしょうか。

椋木椋木

個人的な意見ですが、まずは「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」に相談をしていただき、その後に弁護士に相談されることをお勧めいたします。一般論として、先に弁護士が動いてしまうと、プラットフォーム側も紛争になった出店者に関する情報を訴訟以外の場で出しにくいことから、それを傍から見た場合にプラットフォーム側の対応が硬いと受け取ってしまうことは理解できます。そのため、私であれば、紛争に発展させる前に、まずは窓口への相談をアドバイスします。このように、プラットフォーム側の事情も理解している弁護士のほうが、良い解決策に向かいやすいので、やはり当法律事務所のようなECやプラットフォームの事案に詳しい弁護士に相談することをお勧めいたします。

出店者は相談窓口から相談することができる(https://www.online-mall.meti.go.jp/)

竹内氏竹内

EC業界に精通した弁護士は、本当に数えるほどしかいませんからね。

椋木椋木

法律の知識だけでなく、各社のルールやEコマースの商習慣をキャッチアップしていかなければいけないので、EC業界に詳しい弁護士は結果的に少なくなってしまうのかもしれません。また、最近では、デジタルといった最先端の情報や、商標や著作権といった専門知識も時には必要になってくるので、真にEC事業者・EC支援事業者の皆様へ適切な支援ができる弁護士も絞られてくるかもしれないですね。

「巨大モールに泣き寝入りしない」ために! EC事業者が「透明化法」を最強の武器に

竹内氏竹内

最後に、透明化法と向き合っていく出店者のみなさんに一言お願いします。

椋木椋木

過去にペナルティや退店処分を受けても、報復を恐れて泣き寝入りしてしまったEC事業者の方も少なくないと思います。今回、お話しをさせて頂いた透明化法は、EC事業者とプラットフォームとのコミュニケーションの間に、国が立ってくれる法律です。EC事業者の皆様にとって強力な武器になり得ます。 一方で、まだまだ認知不足のため、十分にこの法律を活用できてないのが現状ではないかと思います。プラットフォームにおいても、EC事業者の皆様とより良い関係を築くべく、皆様のご意見を知りたいのではないかと思います。ぜひ、今後も積極的に透明化法を活用していただければ幸いに思います。

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