「選ばれ続ける店舗」はどう作る? 「ソムリエ@ギフト」と「腕時計のななぷれ」が「楽天NATIONS」10周年で語ったEC成長の条件
楽天グループは9月14日、出店店舗向け育成プログラム「楽天NATIONS」の10周年記念イベントを開催。ベルヴィの宮﨑義則社長とnanapleの國分英一社長が登壇し、付加価値づくりやブランド化、目標設定など「選ばれ続ける店舗」づくりの要諦を語った
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大きく変化したEC環境のなかで「選ばれ続ける店舗」をつくるためにはどうすればいいのか? 楽天グループが実施した「楽天市場」出店店舗向け育成プログラム「楽天NATIONS」の10周年記念イベントに登壇した年商100億円規模のギフトEC「ソムリエ@ギフト」のベルヴィ・宮﨑義則社長と、腕時計EC「腕時計のななぷれ」を展開するnanapleの國分英一社長が、「『NATIONS』を起点にずっと成長できる、店舗づくり」をテーマに「選ばれ続ける店舗」をつくるための考え方や実践例を語った。

「楽天NATIONS」のリーダー店舗を複数回務めてきたベルヴィとnanaple。セッションでは、価格競争に巻き込まれないための付加価値づくりやブランド化、挑戦を続ける姿勢、明確な目標設定など、両社が現場で積み重ねてきた取り組みを紹介した。
「NATIONS」で「教える側」になったことが自社の成長にもつながる
ベルヴィの宮﨑氏は、父親が営んでいたギフト事業会社に21歳で入社。当時は年商4~5億円規模で赤字が続く会社だったという。2005年に「楽天市場」へ出店したものの、当初は苦戦し、月商1000万円に達するまで5年を要した。
2007年に31歳で社長を継ぎ、現在はギフト店2店舗のほか、家具・雑貨、ベビー用品など複数ジャンルを展開。ふるさと納税の中間事業者として複数の自治体も支援している。
一方、nanapleの國分氏は29歳まで定職に就かず、飲食店経営などを経験。その後、EC会社で働いたことをきっかけに、ECの可能性を感じて独立した。現在は腕時計を主力に販売し、約26人の体制で事業を運営する。創業時から掲げるテーマは「お客さまの喜びを」。対面の飲食業で感じていた「ありがとう」と言われる喜びを、オンラインでも実現したいという思いが事業の軸になっているという。EC事業を成長させ、現在の年商規模は23億円となっている。
宮崎氏と國分氏に共通していたのが、「楽天NATIONS」での登壇経験が自社の成長にもつながったという点だ。宮﨑氏は2017年に初めて「NATIONS」のリーダー店舗の依頼を受けた際、「自社のノウハウを他店舗に開示することに抵抗があった」と言い、「当初は依頼を断るつもりだった」と話す。ただ、「楽天への恩返しが必要ではないか」という周囲の言葉を受け、登壇を引き受けたという。
実際にリーダー店舗を引き受けたベルヴィとnanapleは、「受講店舗に成果を示す責任を持つことで、自分たち自身も挑戦を止められなくなった」と振り返る。互いをライバルとして意識しながら、売上成長や受講生の成果達成を競い合ってきたことも成長につながったという。
リーダー店舗として登壇することで自分たちも怠けられなくなった。教える立場になったことが、社内の成長や組織力向上にもつながった。(nanaple 國分氏)

「一点突破」から「自店ならではのプラスオン」へ
10年前と現在では、EC店舗を取り巻く環境も大きく変わった。
宮﨑氏は10年前を振り返り、売り上げが伸びない時期は資金も人材も不足していたため、まず1商品を強くする「一点突破」が有効だったと説明。商品力、ページ、アクセス、利益設計を集中して強化し、成功した商品を2商品、3商品と広げていく――この繰り返しが成長の土台になったという。
一方、國分氏は、かつては「写真をきれいに撮って掲載する」こと自体が大きな差別化になったと振り返る。
現在は商品登録項目の増加に加え、SNS、「楽天ROOM」、YouTubeなど集客・販売チャネルも増え、必要な業務量は格段に増えた。基本施策を実行するだけでは足りず、そこに「自店ならではのプラスオン」を加えられる店舗が選ばれやすくなっていると指摘した。
nanapleは「合格ウォッチ」で価格以外の価値を創出
その具体例として紹介したのが、「腕時計のななぷれ」の「合格ウォッチ」だ。競争が激しく、通常は1本あたり100~200円程度しか利益が残らないカシオの時計に、電池交換と刻印サービスを組み合わせ、「受験を応援する時計」として訴求した。きっかけは、顧客レビューや知人から聞いた「受験で使った時計が思い出の品になった」という声だった。
単なる型番商品でも、利用シーンや贈る意味を再設計することで、価格以外の価値を付けられる。実際、「合格ウォッチ」は追加で1200~1300円程度の利益を生み、販売タイミングで最も売れた腕時計になったという。
また、シチズンの小型時計を「主張しない時計」として訴求した事例も紹介した。メーカー名や型番を前面に出すのではなく、「ファッションに自然になじむ」「時計そのものを主張しすぎない」といった顧客の自己イメージに寄り添った見せ方のページを用意したところ、対象商品の売り上げは約130%伸びたという。
お客さまは価格だけで見ているわけではない。使う場面や贈る意味が明確なら、追加の価値にお金を払う。(國分氏)

検索で見つけてもらうだけでなく「指名されるブランド」へ
宮﨑氏は、今後さらに重要になるのがブランド化だと指摘した。「楽天市場」ではパーソナライズ検索が進み、ユーザーごとに検索結果が異なる。加えて、今後はAIに選ばれなければ表示されにくくなる可能性もある。こうした環境では、検索で偶然見つかる商品だけでは厳しくなる。そこで重要なのがブランドだと力説した。
ギフト市場では割引販売が長年の慣習となっているうえ、購入者が贈り先に価格を知られたくないため、店名を前面に出しにくい事情もあった。そうしたなか、「ソムリエ@ギフト」を信頼されるブランドへと育てる方針を打ち出し、ロゴ刷新や商品パッケージへのブランド表示にも踏み切った。
ベルヴィはカタログギフトでシェアを築いた後、競争激化に対応するため、母の日、父の日、お中元、お歳暮、敬老の日、クリスマスなどシーズナルギフト全般へと領域を拡大。ラッピング、サムネイル、商品ページ、特集ページまで用途ごとに最適化し、ギフト需要を深掘りしてきた。
また家電・雑貨ジャンルも強化した。自家需要も取り込み、現在は家電・雑貨で約40億円規模の売り上げをつくっているという。ギフトを軸にしながら商材領域の拡充など「プラスオン」をして成長につなげた。
さらにオリジナルブランドとして、高品質カタログギフト「THE RED」や、菓子を中心としたプライベートブランド「ギフトリエ」も展開。「THE RED」は発売約2か月時点で約80件のレビューを集め、評価4.8を記録、今後は4.9を目標にしているという。型番商品への依存から脱却し、独自の商品・ブランドを育てる動きを強めている。

「失敗しても成功するまでやり続ける」一方、挑戦は時に大きな失敗も伴う。
一方、挑戦は時に大きな失敗も伴う。
ベルヴィでは、ベビーカー用冷却シートを約1億円分生産したものの、競合増加と価格下落によって在庫が7000個残ったことや、ディズニーとのギフトサービスでも想定通りの成果を得られなかったことを率直に共有した。そのうえで宮﨑氏は、失敗を経験しても挑戦を続ける重要性を強調した。

店舗運営で重要なのは「挑戦し続けること」。失敗を重ねても、成功するまで挑み続ける姿勢が生き残りにつながる。ベルヴィも数々の失敗を重ねてきた。ただ、挑戦しなければ成功の可能性も生まれない。(宮﨑氏)

売上目標から逆算して「ロジックを組み直す」
終盤では、挑戦を実行に移すための「明確な目標設定」についても語られた。
「NATIONS」では半年で売上1.5倍~2倍といった目標設定をするが、従来の延長線上では届かない。そのためには、目標達成に向けたロジックをゼロから組み直す必要があると指摘。國分氏は、自社でも売上目標を全社やバイヤー単位で明示した結果、過去最高の売り上げと利益につながったと紹介した。
宮﨑氏も、「まったく根拠はなかったが20代の頃から『50歳で100億円』と言い続け、実際に50歳で達成した」と話す。次は60歳までに300億円をめざすとし、その成長を従業員の幸せにつなげたいと意気込んだ。
「選ばれ続ける店舗」は地道な積み重ねから
今回のセッションでは、ECで成長するための特別な裏技ではなく、基本施策を徹底し、顧客視点で付加価値を設計し、失敗を恐れず挑戦を続けることの重要性が語られた。
そこに、ブランドとして選ばれるための工夫と、大きな目標を掲げて達成へのロジックを組み直す取り組みを重ねる。変化の激しいEC市場で「選ばれ続ける店舗」をつくるためのヒントが、ベルヴィとnanapleが10年にわたって積み重ねてきた実践の中に示された。

