米Amazonが始めた出品・コンプライアンス・物流の一元管理で「初日からの世界進出」を支援する取り組みとは?

米Amazonは、出品、コンプライアンス対応、物流を一元管理し、販売事業者の海外展開を支援する新たな取り組みを発表した。各国ごとに必要だった商品登録や法令対応、在庫管理の負担を減らし、「初日から世界で売る」体制づくりを後押しする。

鳥栖 剛[執筆]

7:30

米Amazonは9月24日、出品、コンプライアンス対応、物流を一元的に管理し、販売事業者の海外展開を後押しする新たな取り組みを発表した。国ごとに商品登録や法令対応、在庫配分を個別に進める必要があった従来の越境販売の負担を減らし、「初日から世界で売る」体制づくりを支援する。

同日から一部機能の提供を開始し、今後数週間から数か月かけて各機能を順次導入する。2027年には、さらに多くの機能をリリースする計画だ。

米Amazonが始めた出品・コンプライアンス・物流の一元管理で「初日からの世界進出」を支援する取り組みとは?
Amazonは「初日から世界で売る」体制づくりを支援

Amazonによると、複数国で販売している出品者の売上高は、1か国のみで販売する出品者と比べて平均70%高い。一方、現在複数国で出品している販売事業者は全体の30%にとどまる。Amazonはその背景として、各国で在庫、法規制対応、商品登録、物流などを個別に管理しなければならず、海外展開に伴う業務が煩雑になっていることをあげている。

各国の販売機会や採算性を1つの画面で確認

こうした課題に対応するため、Amazonは各国の販売機会を一覧で確認できる統合ダッシュボードの提供を拡充する。

対象はまず米国、欧州、日本。年内にさらに対象国を広げる予定で、販売事業者は、どの国で自社商品の需要が見込めるのか、採算性はどうか、販売開始までに何が必要なのかを1か所で確認できるようになる。

商品情報の登録についても、国ごとに繰り返すのではなく、1回の登録をベースに各国へ展開しやすくする構想を打ち出している。

Amazonのシステムが出品時点で販売先候補の国に照らして商品を評価し、商品説明の翻訳、通貨や単位の現地化、国ごとに必要な法令対応の洗い出しなどを自動で進める。要件を満たした商品は、各国向けにローカライズされた状態で展開できるようにする。

米Amazonが始めた出品・コンプライアンス・物流の一元管理で「初日からの世界進出」を支援する取り組みとは?
各国の販売機会を一覧で確認できる統合ダッシュボードのイメージ

AIアシスタント「Seller Assistant」も機能強化

さらに、AIアシスタント「Seller Assistant」の機能も強化する。まずは長期在庫や納品計画に関する支援機能を追加。今後はパーソナライズされたアドバイザーへと発展させる考えで、必要な対応を提案するだけでなく、その理由や各推奨事項の根拠となるデータも示すという。

コンプライアンス対応を「1回の申請」に集約

海外展開における大きな障壁の1つが、国ごとに異なるコンプライアンスへの対応だ。包装や表示、安全試験、成分規制などの要件は国によって異なり、これまでは製造後に販売国ごとに個別対応する必要があった。

Amazonは今回、コンプライアンス対応について、玩具カテゴリーから新たな仕組みを導入した。各国で別々に試験や認証を取得するのではなく、複数国の要件をまとめた単一の仕様書に沿って、1回の申請で複数国の認証要件を満たせるようにする。既存の認証も活用し、すでに証明済みの内容について再試験や再提出を不要にすることで、手続きの重複を減らす。

Amazonによると、試験の一括申請を先行導入した事業者では、コンプライアンスコストが最大60%削減されたという。

この単一申請型の対応は、まず安全性試験が複雑な玩具から開始し、年内に家電やベビー用品にも広げる予定。2027年にはさらに対象カテゴリーを拡大するほか、商品を製造する前の段階で、国ごとの規制要件や対応コストを把握できるようにする方針も示している。

カナダの収納用品メーカーの事例では、各国のコンプライアンス要件の確認と物流をAmazonの仕組みで一元的に進められたことで、複数国への展開に伴う業務の複雑さが減り、中小規模の事業者でも海外展開を進めやすくなったという。

コンプライアンス試験の一括申請のイメージ

物流は「1か所に納品」して複数国へ展開

物流面では、グローバル倉庫・配送の「Global Warehousing and Distribution(GWD)」を軸に、1回の製造ロットを1か所のAmazon運営倉庫に送ることで、複数国への販売に対応しやすくする体制を整える。

これまでは販売国ごとに在庫を分けて送り込む必要があったが、今後は製造地に近いAmazon拠点にまとめて納品し、需要が発生した国へ在庫を振り分けられるようにする。

在庫は各国別ではなく1つの在庫プールとして管理し、実際の需要が生じた時点で必要な国へ移動させる。到着後は各国のFBA拠点に流し込み、現地顧客への配送につなげる。

GWDは現在、米国向けに接続しており、年内には英国、日本、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、カナダを加えた計8か国体制に広げる予定だ。

Amazonによると、GWDを活用した場合、米国内の倉庫・配送サービス「Amazon Warehousing and Distribution(AWD)」と比べて保管コストを最大45%抑えられ、「Fulfillment by Amazon(FBA)」への補充も最大5日短縮できるという。

なおAWDについても、米国以外に欧州、英国、オーストラリアへ展開を広げており、低コストでの一括保管と自動補充の選択肢を拡大している。


Amazonは、販売機会の発見から商品登録、コンプライアンス、在庫・物流まで、これまで国ごとに分かれていた海外販売に伴う業務を一元化することで、事業者がより早く複数国で販売を始められる環境を整える。

「初日から世界で売る」という海外展開のハードルを下げることで、特に複数国への進出に人員やノウハウを割きにくい中小規模の販売事業者にも、グローバル販売の選択肢を広げる狙いだ。

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