通販新聞 2014/11/26 7:00

コメ兵はリアル店舗と通販サイトをシームレスにつなぐオムニチャネル化が進展している。顧客が利用しやすいサイト構築はもちろん、店頭販売員の教育や意識付けを徹底することでウェブを利用した店頭取り寄せ商品の買い上げ率は5割まで高まっている。

そもそも、同社がオムニチャネル化を志向するきっかけとなったのは5年ほど前のこと。通販顧客から実際に商品を見てみたいと電話があったため、通販サイトに店頭取り寄せ機能を実装したのがはじまりだ。併せて、商品カテゴリーごとに分かれていた組織を店舗、商品管理、ウェブ事業の機能別としたのに伴い、7つあった通販サイトを統合。ECを強化するとともに、店頭との相乗効果を発揮できるインフラ作りを進めてきた。

具体的には、サイト構築を手がけるコマース21と組み、自社通販サイトの掲載商品を顧客が希望する店舗に送って実物が確認できる「お取り寄せサービス」や、来店客が希望する商品がない場合などに販売員がパソコンやタブレットを見せながら他店舗の商品を提案し、取り寄せる仕組みを整備。商品を手に取れる安心感や店頭販売員の提案力をベースに満足度の高い買い物ができるようにした。

コメ兵が挑むオムニチャネル
進展するコメ兵のオムニチャネル化

コメ兵は、インフラ整備と並行してオムニチャネルの肝となる“人”の改革にも着手。通販サイトの掲載商品は基本的に実店舗にあるため、取り寄せ商品の売り上げは店舗に計上する。一方、各店舗の販売計画には通販比率を上乗せすることで、各店がECを積極的に活用する意識を根付かせることに成功した。

教育面では、取り寄せ商品が店舗に届くとすぐにロールプレイングを実施。来店客を椅子に座らせ、じっくり商品の説明ができれば買い上げ率も高まるため、こうした研修は欠かせないという。とくに、初めて取り寄せ機能を使った顧客を店舗側が把握できるようにしており、初回のサービス利用時に好印象を持ってもらえるよう、ロープレを入念に行う。

一方の配送面では、取り寄せ商品について、顧客の“欲しい”という気持ちがさめないうちに提供することを心がけており、申し込み日から最短で翌日に希望店舗へ届けている。

以前は、A店からB店に商品を送る場合、一度、センターを通していたが、現在は商品が1点だけでも店舗間で直送する。同社では、在庫調整の目的でA店からB店に複数の商品を一気に動かすこともあるが、そうした便に取り寄せ商品は混載せず、店着後すぐ顧客に連絡できるようにしている。

こうした取り組み成果は消費者の満足度にも表れており、取り寄せサービスを利用した顧客にアンケートをとったところ(1073人が回答)、「取り寄せ商品の到着速度」については5段階評価の上位2つ「とても満足」と「満足」の回答の合計が全体の93%となったほか、「店頭ですぐに商品が出てきたか」という質問についても、3段階で一番上の「適切だった」が87%を占めたという。

同社によると、今年4月~10月までの集計では、月平均1800件の取り寄せ依頼があり、そのうち購入につながったのは約900件で、年々、買い上げ率は高まっているようだ。

また、高級時計やバッグなど高額品ほど実物を見てから買いたい消費者が多いため、通販サイトでそのまま購入する純ネットの客単価が約7万円なのに対し、取り寄せ商品の単価は約21万円に跳ね上がるという。

直近の取り組みとしては、ブランドバッグや高級時計などと比べて購入頻度の高い衣料品の強化に乗り出す。現在、通販サイトに掲載するアイテム総数約4万7000点のうち、衣料品は17%に当たる約8000点だが、これを1年後には倍程度増やしたい意向。ただし、良質な中古品・古着にこだわるとしており、平均商品単価は2万5000円程度に設定。比較的高いアイテムに限定する考えだ。

衣料品の強化・拡充に伴い、10月には写真撮影と商品登録を行うスペース(約400平方メートル)を名古屋市内に設けた。これまで、通販サイトに掲載する商品はどこかの店舗にあったが、バックヤードやオペレーションの問題もあって衣料品の一部を一時保管し、店頭に並ぶ前から通販サイトで販売できるようにしている。

なお、コメ兵の今上期(4~9月)のオンラインストア掲載商品の売り上げは約27億円。そのうち取り寄せサービスの割合は58・6%で、純ネット売り上げ(自社とモール経由含む)を上回っている。

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