通販新聞 2014/11/25 7:00

仕事とプライベートの充実を求める社員が増える中、その風潮に応えるように職場環境の改善に取り組む企業が増えた。ただ、大手によくみられる充実した福利厚生や支援制度も、成長過程にある企業にはハードルが高く、導入できないものが少なくない。だが本来、こうした仕組みは企業の理念や醸成したい風土、目的を反映させ、これと社員のニーズを一致させて作り上げていくもの。その形は千差万別であって良いはずだ。大手にはない“小回りの利くアイデア”で、モチベーションアップや職場環境の改善を図り、社員の力を最大限引き出すことを考える企業の取り組みを追った。

ロコンド・ほっこり制度7 チーム力や挑戦意欲を育む

ロコンドは福利厚生制度を刷新した
ロコンドは福利厚生制度を刷新した

靴とファッションのネット販売を手がけるロコンドは今年9月、次の成長フェーズに向けて物流拠点と本社オフィスを移転し、併せて福利厚生制度を「ロコンド・ほっこり制度7」として刷新した。

同社では、採用面や従業員の働きやすさ、モチベーション向上などを目指して福利厚生制度を整備。従来からあった社外教育費用の補助(受講費の20%負担)や社内部活動費の補助(月5000円)、全社員対象のストックオプション制度などに加え、9月からは本社(東京・渋谷区)および倉庫(同・江東区)と同じ区に住む従業員に月額2万5000円の家賃を補助する「同じ区手当」、新入社員の歓迎会に1人当たり2000円を手当てする「ウェルカム手当」を追加した。

「同じ区手当」を目当てに引っ越しを行った社員はまだいないが、採用面を強化しているため、「ウェルカム手当」は利用されているようだ。

ロコンドでは事業が成長する中、チームワークの向上につながる取り組みには積極的で、社内部活動はヨガやダンス、ランニング、フットサル、調理、スノボーなど幅広い。本社と物流チームなど普段はオフィスの異なる従業員同士が一緒に行動する機会を持つことが、結果的に業務の円滑化にもつながっているとする。

一方、業務のスキルアップに向けた活動も支援。経理担当者が簿記検定を受験したり、広報担当者がPR戦略を学ぶ夜間学校に通うなどしてレベルアップに努めているという。

また、同社では年2回、全社員が出席して事業の進捗状況などを共有する総括会を実施。その際、全社員の事前投票でロコンドが大事にする「ほっこり目線」「挑戦」「責任」「チーム」の4項目を対象に各項目のMVP社員を発表してモチベーションの向上につなげている。10月末には、改めて4項目を核とした働き方のスローガンを「ロコンド・コアバリュー」として定め、会議室などに掲出して社員の意識を高めているようだ。

ロコンドが8月に開いたサプライヤー向けのイベントの様子

ランクアップ・社員自ら職場の充実に動く

化粧品通販を行うランクアップではこれまで経営陣が中心に「女性が働きやすい環境づくり」に力を注いできた。41人の社員のうち、19人がワーキングマザー。時短勤務や2~4時間の時間休、子供の病時シッター法人契約は、働く女性に嬉しい制度だ。だが今では社員自ら職場の充実に向け動きだしている。

中堅規模の会社の中で福利厚生の充実ぶりは際立っている。就業中のヨガ教室やスポーツクラブの助成(月1万円)、無農薬野菜の無料支給、さらには会社の全額負担で生命保険に加入できるなどあらゆる面で社員の健康を支える。1人あたりに使われる福利厚生サービスのコストは年65万円。

社員も業務内容や福利厚生に関する「改善提案制度」を積極的に使う。提案は採用の可否に関わらず1件につき500円が社員に支払われる。中には年間60件提案する社員もいる。採用され、最近、導入されたのが無添加の惣菜を100円で買える「オフィスおかん」のサービス。ほかに、仕事に直接関わりがなくても月2000円まで、自由に書籍が買えるようになった。社員の発想を柔軟にし、視野を広げると判断したためだ。健康面でもバレーボール部やジョギング部を社員自ら立ち上げ、意識は高い。

ランクアップの取り組み

ただ「1年くらいたつと健康が二の次になり、飽きを感じて利用や参加が少なくなる」(同)という。そこで立ち上がったのが有志社員4人。自ら「一生健康で働き隊」を結成し、イベントを企画して、社員に健康管理を啓発していくという。

充実した福利厚生も使われなければ意味がない。理念に掲げる“挑戦”風土の浸透が職場環境の充実につながっている。

オイシックス・副業を認め社員の成長を促進

オイシックスは今夏から、社員の兼業や副業を認める制度をスタートした。多様な働き方を認め、個人の成長を支援することが狙い。現在までに4人が制度を利用しているという。一般的に、機密事項の漏えいや本業への影響を考慮し兼業を禁止する企業は多いが、オイシックスでは理念に共感して入社する社員が多いため「兼業を認めるリスクは感じていない」(総合企画本部人材企画室)という。

オイシックスの副業や兼業を認める制度は、本人の申請を受けて会社側が認める仕組み。人事担当部門「人材企画室」の室長が面談を行い、外部団体の活動や他社で行う事業の内容を聞き取り、本人の時間の使い方や働き方を確認して承認する。ただ、収入を増やすことや、個人の成長に寄与しないと会社が判断した場合は認めないという。

面談を通じて、社員が出勤する曜日や時間帯を決定し、「少なくとも週の半分は出勤してもらっている」(同)という。正社員待遇となるが、出勤日が減少する場合は考慮する。承認後の本人から外部での活動報告は求めず、外部で得たスキルを活かしてオイシックス社内でのパフォーマンスが高まれば評価する。

現状、制度を利用する4人は新たに採用した2人と、社員2人。制度を利用して入社した社員の1人は、東北の食品を通じて復興支援を行う一般社団法人「東の食の会」のメンバーで、入社後にオイシックス社内に東北を支援するプロジェクトを立ち上げた。団体との連携の活発化に寄与しているという。また、広い視点を社内に取り込むことで、社内の活性化にも期待する考え。

制度導入のきっかけは、優秀な人材の採用に兼業を認めない社内規則がボトルネックとなる可能性があるためだ。優秀な人材を採用したいが、本人が起業していたり、NPOでの活動を行っているケースが多く、採用が遅れる懸念があった。高島社長が一般社団法人「東の食の会」の代表理事などを兼任しており、兼業を認めるベースがあったことも制度化の実現につながった。

制度を利用して入社した社員には通常通りに、産地訪問や顧客を招いたパネルディスカションなどの研修を行う。ブランド価値への理解を深め、企業理念の浸透を図る。

ベガコーポレーション・「NO残業」で生産性向上

家具のネット販売などを手がけているベガコーポレーションでは、従業員が定時で帰れる「NO残業」制度を導入して生産性向上を図っている。

元々同社は営業マンがおらず商談のための外出などにとられる時間がないため、時間内で自分の業務に専念できるようになっている。残業を行う場合は業務内容を上司にメールで送り、当日中にやるべき内容かをまず上司が判断する。また、90分以上残業する際は役員に申請して承認を得なければいけないため、実際にはほとんどの社員が残業をしないというのだ。

同制度によって終業後に英会話や各種稽古事など自己啓発に充てられる時間が増加。業務に活かせるスキルを身に付ける従業員もいるという。また、他部署間での交流も増えるため、商品開発の発想や業務効率化の観点などを新たに共有することで生産性の向上にもつながっているのだ。

そのほかにも、入社1年目以上の社員は月曜日から金曜日までの平日5日間を有給休暇として連続取得できる制度があり、土日とつなげて最大で9連休にすることも可能。また、仕事への意欲を上げるという点では、自社開発商品のアイデアについて正社員に限らず契約社員、派遣社員、アルバイトなどからも広く意見を募集。部署や雇用形態を問わず発言の機会を設けることで積極的に商品開発に関われるようにもしている。

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