J.フロント リテイリング、輸入ワイン販売のピーロート・ジャパンを完全子会社化。催事、ギフト、ECなどを横断した新たな顧客接点を創出

「ワインといえば大丸松坂屋」へ——。J.フロント リテイリングが輸入ワインのピーロート・ジャパンを子会社化。EC・外商・催事を横断し、高単価ワインの新たな販売モデル構築をめざす。

鳥栖 剛[執筆]

8月4日 8:30

大丸と松坂屋ホールディングスの共同持株会社であるJ.フロント リテイリング(JFR)は8月3日、輸入ワイン販売を手がけるピーロート・ジャパンを傘下に持つClaret Holdingsの全株式を、日本企業成長投資が投資助言を手がける投資ファンドとそのグループから取得すると発表した。株式譲渡契約は7月31日に締結済みで、株式取得は9月1日に実行する予定。

JFRは今回の子会社化を通じ、ピーロート・ジャパンの商品力や営業力、企画力と、自社グループが持つ顧客基盤や店舗、催事、外商、ギフト、ECなどの販売チャネルを組み合わせる。百貨店の酒売り場強化にとどまらず、オンライン・オフラインを横断した新たな顧客接点の創出をめざす。

J.フロント リテイリング、輸入ワイン販売のピーロート・ジャパンを完全子会社化。催事、ギフト、ECなどを横断した新たな顧客接点を創出
ピーロート・ジャパンは全国32拠点と17万人の会員基盤を持つ

ワインを新たな成長領域に位置付け

JFRはグループビジョンとして「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する。」を掲げ、「価値共創リテーラー」への進化を推進している。

なかでも重視するのが、品質や希少性に加え、作り手の思想やストーリー、体験価値を重視する「高質高揚消費層」である。これまでファッションやラグジュアリー、時計、アート、カルチャーなどを強化してきたが、新たな成長領域としてワイン事業を本格化する。

JFRはワインを単なる商材ではなく、食やギフト、記念日、社交、旅行、文化、学びなど、多様なライフスタイルと結び付くカテゴリーと位置付けている。商品そのものの品質だけでなく、産地や生産者のストーリー、食とのペアリング、人と共有する時間といった体験価値を提供しやすい点を評価した。

全国32拠点と17万人の会員基盤を持つピーロート・ジャパン

ピーロート・ジャパンは1969年、ドイツの老舗ワイナリー「ピーロート」の日本法人として設立された輸入ワイン専門商社。本社は東京都港区に置き、全国32拠点の営業ネットワーク、5店舗の直営ワインバー、1拠点の物流センターを展開している。

「お客様の人生をより豊かにするワインジャーニーを提供する」を理念に掲げ、22か国・1600種類以上のワインを取り扱う。個人会員は17万人、飲食店やホテルなど法人顧客約1万9000店と取引している。

事業の柱は、「高品質ワインの輸入販売」「試飲会・催事の企画運営」「ワインバー運営」の3つ。年間約300回開いている試飲会や生産者を招いた催事は、顧客との直接的な関係構築やブランドロイヤルティ向上につながっている。取扱銘柄は、オーパス・ワンやボルドー五大シャトーなどの高級ワインから日常使いの商品まで幅広く、専門知識を持つ営業スタッフが顧客の嗜好や予算に応じて提案しているという。

2025年度の売上高は約100億6300万円。従業員数は432人(2026年3月末時点)。

外商・催事・ECを組み合わせた販売モデルを強化

JFRは、ピーロート・ジャパンが持つ直接販売機能や体験型の販売ノウハウが、外商をはじめ長期的な顧客関係を重視する自社グループの事業モデルとの親和性が高いと判断した。

今後は、外商顧客を含む富裕層向けの提案を強化するほか、店舗や食品売り場、催事、ギフト、ECなど多様な接点を活用し、ワインに触れ、学び、楽しむ機会を広げる考えだ。

具体的には、次の4つの施策を検討している。

  • 高質高揚消費層に向けたワイン提案の強化
  • 店舗内外の接点を活用した顧客接点の拡大
  • ワインを起点とした体験価値・コミュニティの創出
  • 相互送客やクロスセルによる事業基盤の活用

JFRは、売り場面積に依存しない成長モデルの構築を掲げており、リアル店舗や外商、催事、ECを横断した販売と顧客育成を進める方針である。中長期的には、「ワインといえば大丸松坂屋」と想起される独自ポジションの確立をめざす。

なお、JFRは今回の株式取得による連結業績への影響については精査中としている。

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