通販新聞 2014/11/12 7:00

来春に始まる食品の新たな機能性表示制度を見据え、日本健康・栄養食品協会(日健栄協)は10月30日、新制度活用を目指す企業を支援するプランを発表した。単独での機能性評価が困難な企業を対象に、コンサルティングを行うもの。企業の新制度活用を後押しし、健康食品業界全体の底上げを図る。

業界8団体で構成する健康食品産業協議会(関口洋一会長)の要請を受けて決めた。協会では、早ければ年内、遅くとも1月には、支援体制の構築に向けた準備室を立ち上げる。

支援事業は、「機能性評価」「安全性評価」「容器表示の確認」で構成する。協会は2011年度に消費者庁の委託事業として「食品の機能性評価モデル事業」を行ったほか、毎年、独自に機能性評価事業を継続。これまで11成分の機能性を評価してきた。「機能性評価」では、そのノウハウを活かし、「システマティック・レビュー」を請け負う。

「システマティック・レビュー」は、機能性評価事業を行ってきた「機能性評価委員会」(座長=金澤一彦東京大学名誉教授)が担当。コンサルを依頼した企業にも参加してもらい、共同作業をすることで企業のレベルアップを図る。委員会には新たにメンバーの追加も検討し、案件ごとに作業部会を立ち上げて評価を行う。規制改革会議委員の森下竜一大阪大学教授らが所属する抗加齢医学会との連携も視野に入れる。

「安全性評価」では、協会が運用する品質規格「JHFA規格」を基に、機能性関与成分の規格を策定する。また、「GMP認定制度」や「安全性自主点検認証制度」を活用し、製造管理や食経験、原料の基原保証、医薬品等との相互作用の確認を行う。「容器表示」も有識者による委員会を組織し、表示の合法性や妥当性を見る。

支援を受ける企業には、基本的に機能性、安全性、容器表示の3つの要件を満たすことを求める。ただ、すでにGMPやJHFA規格を取得する企業の場合は、コンサル費用から減額する。

費用は明らかにしていないが、「機能性評価事業」では、1成分あたり300万円前後の費用がかかっているという。これに人件費などを上乗せした金額を想定するが、収集した論文の数によっても費用が変わるとみられる。会員と非会員も区別し、「2倍ほど金額が変わるのが(従来の各事業の)通例」(下田理事長)とする。

協会と共同で評価を行ったことについて、パッケージに表示することにも「消費者の目安になり、他社と差別化も図れるのでした方が良いのでは」(同)と積極的な姿勢を示している。

新事業について全国消費者団体連絡会(消団連=事務局・東京都千代田区、河野康子事務局長)やFoodCommunicationCompass(フーコム=事務局・同、松永和紀代表)など消費者団体への事前説明を行っており、「(パッケージに)分かるように表示して欲しい。不適切な事業者の排除もしっており行って欲しいと言われている」(同)としている。

日健栄協、コンサルで責任回避、にじむ「認証ビジネス」への固執

消費者庁による食品の機能性表示制度(新制度)の検討を前に、日健栄協では、自らを第三者機関とする機能性の認証制度構想を発表していた。今回の支援策は「第三者認証ではない」(下田智久理事長)とするが、「認証」から「コンサル」に形を変えてはいるものの、協会の認証ビジネスへの固執がにじむ。

新制度は、企業の自己責任で表示を行うもの。機能性評価を外部に依頼することもできるが、最終的な責任は製品の販売者である企業が負うことを基本としている。

評価の責任の所在について、この日の会見で健康食品産業協議会の関口洋一会長は“コンサルティングであること”を何度も強調。機能性評価も依頼する企業との共同作業で行い、企業側の責任で表示を行うとした。

とはいえ、コンサルしたことの責任は残る。協会では弁護士と相談しつつ、契約書を作成するとしている。ただ、事業上の責任論はクリアできても、仮に協会が関わった評価にミソがつけば“業界最大規模の団体”として、健食業界をけん引する立場にある協会の見識を問われかねない危ないビジネスとも感じる。

業界関係者の中には「企業単独で評価するのが難しい中小もいる。専門の試験受託機関からすると、一つの試験で数千万円の売り上げになるトクホ関連試験と比べ、『システマティック・レビュー(SR)』は金にならず、やりたがらない」との声も聞かれる。その意味で、協会の新事業は意味があるのかもしれない。ただ、実際にビジネスとして成立するかも不透明だ。

新制度では、企業が機能性などに関する科学的根拠の情報を消費者庁に届け出、これを公開する必要がある。

協会に高い金を払っても、これが公開され、他社に利用される可能性もある。これには「例えばSRの際、収集した論文から"なぜ除外したか、なぜ採用したか"といった理由が開示されないのであれば、他社が真似たとしてもその理由が説明できないなど優位性は保てる。開示情報がどこまでなのか、消費者庁のガイドライン待ち」(日健栄協)とする。

また、同じ原料を使った機能性評価をコンサルした場合、先行する企業の費用負担が大きくなる。追随する企業に有利に働き、協会も2社目からはコストをかけずに評価できることになる。これには「理想は、複数社が申し合わせて同原料に対して依頼してもらうこと。悩ましい問題だが、今後考えていく」(同)とする。

健康食品産業協議会の要請を受けて行い、消費者団体にも根回しするなど支援策の発表は慎重に進めた。ただ、ガイドラインを待っての発表でも遅くなかったのではないか。「お金はとるが、責任はとらない」。そんな支援策に、新制度への便乗ビジネスとの声が聞こえてきそうだ。

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