ステーブルコイン支払いでコスト負担を低減へ。3PLの丸和が日本円ステーブルコイン「JPYC」提供企業と資本業務提携
AZ-COM丸和ホールディングスが日本円ステーブルコイン「JPYC」を提供するJPYCに約10億円を出資し、資本業務提携する。銀行送金手数料や支払い処理時間の負担軽減を狙い、物流現場向けの決済基盤構築をめざす。
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日本円建てステーブルコイン「JPYC」を提供するJPYCと資本業務提携すると発表した3PLを手がけるAZ-COM丸和ホールディングス。物流現場で課題となっている銀行送金手数料の軽減や支払い処理時間の短縮をめざし、「JPYC」を活用した社内外の決済プラットフォームを構築する狙いがある。

AZ-COM丸和ホールディングスは、3PLを主力とする物流企業。人手不足や人件費・燃料費などのコスト上昇に対応するため、省人化や業務効率化を進めている。今回の提携では、物流業界で日常的に発生する業務委託ドライバー、従業員、取引先などへの小口支払いに着目した。
AZ-COM丸和ホールディングスによると、物流業界ではこうした支払いに伴う銀行送金手数料や処理時間が課題となっている。特に、会員企業数2968社(2026年6月末時点)を抱える、中小のトラック運送事業者を中心とした会員制の経営支援ネットワーク「AZ-COMネットワーク」の運営や物流サービス事業の拡大に伴い、今後は小口決済がさらに増えると見込む。こうしたコスト負担の軽減が必要と判断した。
「JPYC」を活用した決済基盤を構築へ
「JPYC」は、日本円と1対1で交換可能な日本円建てステーブルコイン。資金決済法上の「電子決済手段」に位置付けられ、日本円と連動する価値を保ちながら、ブロックチェーンを活用した送金・決済ができる。JPYCによると、発行価値の裏付け資産は日本円の預貯金および国債で保全している。なお、同社では「JPYC」は「暗号資産」とは異なる法的位置付けとしている。
今回、AZ-COM丸和ホールディングスはJPYCのB1種優先株式11万6000株を引き受ける。議決権保有比率は2.9%となる見込みで、払込期日は7月30日を予定としていた。
資本提携にとどまらず、両社は「JPYC」を活用した決済プラットフォームを構築する。まずはAZ-COMネットワークの会員企業、業務委託ドライバー、従業員、取引先などへの支払いを想定。将来的には、決済代行やインセンティブ配布など、外部企業向けサービスへの展開も視野に入れる。
独自ウォレットや自動支払いも構想
AZ-COM丸和ホールディングスは独自のウォレットアプリも提供し、「JPYC」を活用したロイヤリティプログラムやキャンペーンでの即時報酬付与を低コストで実現する構想を示している。優先的に同社の事業を利用するパートナー事業者の拡大にもつなげたい考えだ。
物流業務との連動も視野に入れる。スマートコントラクトを活用し、GPSや証明書データによる配送完了確認と支払いを連動させることで、請求書照合、承認、振込処理など人手を介する事務作業の削減をめざす。事務コストの低減に加え、人的ミスや支払い遅延の抑制につなげる構想だ。
今回の提携についてAZ-COM丸和ホールディングスは、「JPYC」を活用した社内外の決済プラットフォームを構築することで、将来的にシステム提供事業者として関与する道を開くものと位置付ける。「3PL&プラットフォームカンパニー」への変革を進めるうえで、強力な推進力になるとしている。
JPYCは先行投資が続く一方、実需に根差した活用を拡大
JPYCの2025年7月期の業績は、売上高が前期比62.5%減の300万円、営業利益が6億1200万円の赤字(前期は2億4300万円の赤字)、経常利益が6億1200万円(前期は2億3700万円の赤字)、当期純利益が6億1500万円の赤字(前期は2億3800万円の赤字)だった。
またJPYCは4月時点で、シリーズBラウンドの累計調達額が約46億円となる見込みを公表していた。2026年5月30日時点では、発行・償還プラットフォーム「JPYC EX」の累計発行額が30億円を突破し、累計口座開設数は1万9000件に到達したとしている。さらに2026年7月10日時点で、「JPYC」のオンチェーン流通額は20億円を突破。4月時点の「JPYC」保有実績のあるウォレットアドレス数は13万7000超としていた。
AZ-COM丸和ホールディングスのような物流大手との提携を通じ、決済・送金の実需に根差したユースケースの拡大を図る局面にあるといえそうだ。
政策面でも、ステーブルコインなどを活用した決済の環境整備が進む。7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針2026)」では、物流・商流の効率化に向けた取り組みが盛り込まれている。
AZ-COM丸和ホールディングスは、物流と決済を一体で効率化する取り組みの一環として、日本円建てステーブルコインの活用を中長期的な戦略と位置付けている。なお、今回の提携による2027年3月期の業績への影響については、具体的な影響額は軽微との見通しを示している。
「JPYC」は実店舗・EC・企業間送金へ活用領域を拡大
「JPYC」を取り巻く動きは、物流分野にとどまらず広がっている。直近では、ローソンがPOSレジを使ったステーブルコイン店頭決済の実証実験を開始した。EC領域では、CAICAテクノロジーズが「JPYC」を活用した決済ソリューションの提供を開始し、ガイアックスもEC・フリマ向け決済インフラの受託開発を始めている。送金コストの削減や資金移動の効率化を軸に、「JPYC」は実店舗決済、EC決済、企業間送金へと活用領域を広げつつある。

