大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢

楽天グループの2026年1-6月期は、国内EC流通総額が約3兆円に拡大し、収益性も改善した。あわせて三木谷浩史会長は、AIを軸に楽天エコシステム全体をつなぐ「スーパーエージェント」構想を打ち出し、成長戦略を鮮明にした。

鳥栖 剛[執筆]

8:30

楽天グループの2026年1-6月期(中間期)連結業績における国内EC流通総額は2兆9958億円で、前年同期比4.9%増となった。2026年4-6月期(第2四半期)単体では同5.3%増の1兆5322億円だった。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
国内EC事業の指標(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

中間期の国内EC流通総額の内訳は、コアビジネスが前年同期比5.2%増の2兆7064億円、成長投資ビジネスが同2.6%増の2894億円だった。2026年6月末時点の出店者数は5万5408店舗で、前四半期から302店舗増えた。

国内EC流通総額は、「楽天市場」の流通総額に加え、トラベル、ブックス、ブックスネットワーク、ゴルフ、ファッション、ドリームビジネス、ビューティ、「Rakuten24」などの日用品直販、Car、ラクマ、Rebates、ネットスーパー、楽天チケット、クロスボーダートレーディングなどの流通額を合算した数値。なお楽天グループは2026年第2四半期から国内EC流通総額の定義を一部見直しており、過去数値も遡及修正している。

国内ECは増収増益、トラベルや広告も好調

2026年1-6月期(中間期)の連結国内EC売上収益は前年同期比4.7%増の5006億6500万円、Non-GAAP営業利益は同30.0%増の605億5700万円だった。2026年4-6月期(純第2四半期)の国内EC売上収益は前年同期比5.3%増の2545億円、Non-GAAP営業利益は同30.8%増の297億円だった。コアビジネスの成長に加え、成長投資ビジネスの収益改善も進み、国内ECの収益性が改善した。

トピックスとしては、トラベル事業の取扱高が前年同期比17.2%増。国内関連が10%増、グローバル関連が78.5%増と大きく伸び、特に世界の旅行事業者向け在庫提供サービス「Rakuten Travel Xchange」の成長が寄与した。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
トラベル事業はグローバルが大きく伸びた(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

広告事業は国内ECの広告伸長にAIが貢献し好調だった。売上収益は656億円、前年同期比15.6%増となった。広告クリエイティブの制作や審査、入札へのAI活用に加え、楽天の顧客データを活用した高精度なターゲティングが成長を支えたという。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
広告事業は国内ECの広告伸長にAIが貢献し好調(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

このほかインターナショナル部門では、セグメント全体の売上収益が前年同期比3.9%増と堅調に推移。Non-GAAP営業利益は同4.1%減となったが、Vikiや米国のRakuten Rewardsは順調に利益を伸ばしているという。また、楽天フランスのマーケットプレイス事業については、年内に閉鎖することを決定した。

インターネットサービスセグメント全体では、中間期売上高は前年同期比4.1%増の6557億6000万円、Non-GAAP営業利益は同67.2%増の442億2700万円。第2四半期単体の売上収益は前年同期比4.2%増の3381億1500万円、Non-GAAP営業利益は同68.6%増の230億5700万円だった。

連結業績は営業黒字、中間純損失は大幅改善

楽天グループの中間期連結業績は、売上収益が前年同期比12.9%増の1兆3090億5200万円、IFRS営業利益は504億4000万円(前年同期は66億1000万円の赤字)だった。親会社の所有者に帰属する中間損失は109億4100万円だったが、前年同期の1244億3500万円の損失から大幅に改善した。第2四半期単体では、税引後四半期利益が272億円となり、6年ぶりに黒字化。親会社の所有者に帰属する四半期利益も77億円となり、6年ぶりに黒字となった。

AIで楽天エコシステムを増幅、「3つの軸」で成長を狙う

こうした業績とあわせて打ち出したのが、AIを軸に楽天エコシステムを増幅する成長戦略だ。楽天グループはその方向性を「エンゲージ」「拡張」「差別化」の3つの軸で整理している。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
楽天エコシステムを増幅させる3つの軸(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

エンゲージ:あらゆるタッチポイントで最適な体験を提供

「エンゲージ」は、あらゆるタッチポイントで最適な体験を提供する取り組み。検索、レコメンデーション、広告を高度化し、各タッチポイントでの体験をよりパーソナライズし、高付加価値化することで、商品やサービスの定着率、顧客満足度の向上につなげる。

具体例の1つが、Rakuten LLMによるクエリ理解の高度化だ。ユーザーの検索クエリのコンテキストを理解し、探索(情報収集)段階なのか、購入意思決定段階なのかを判別することで、検索結果の最適化を進めている。

2026年6月23日から30日に楽天市場の検索機能で実施したA/Bテストでは、注文数が0.52%増、GMSが0.87%増となり、年間換算で約128億円のGMS押し上げ効果を見込む。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
LLMによるクエリ理解の高度化により流通総額もプラスに(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

拡張:潜在ニーズを早期に把握し最適なアクションを誘導

「拡張」は、潜在ニーズを早期に把握し、最適なアクションにつなげる取り組み。漠然としたアイデアの段階から顧客に関与し、選択肢を具体化しながら、事業を横断して関連性の高い商品・サービスを提案することで、クロスユースを広げていく。狙いは、楽天エコシステムの拡大と深化だ。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
潜在ニーズを早期に把握し最適なアクションにつなげる(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

この拡張を支えるのが、各サービスを補完し、相互に連携するエージェントのエコシステム。現在、17のサービスでAIエージェントが稼働しており、さらに7サービスが近日中の導入を予定している。今後は50超のサービスへの展開も見込む。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
AIエージェントが稼働している17サービス(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

各エージェントは個別事業を強化するだけでなく、楽天エコシステム全体とつながることで、グループ横断のクロスユースの可能性を広げる。

接点拡大の面では、Web版、iOS/Android向けモバイルアプリに加え、Windows PCで利用できる「Rakuten AI for Desktop」も投入した。Mac版も近日提供予定。HPとの協業により、PCへのプリインストールも進めている。

こうした展開を通じて、新規ユーザーやエージェント経由のトラフィックを獲得するとともに、既存ユーザーの利用頻度や購入単価の向上にもつなげる考えだ。Webのトラフィック自体が検索からエージェントへ移行するなか、その構造変化を取り込む姿勢を鮮明にしている。

差別化:オンラインからオフラインまで一貫した体験を提供

「差別化」は、オンラインでの発見からオフラインでの配送までを一貫してつなぐ体験の提供を指す。汎用エージェントには実現しにくい、楽天エコシステムとAIを組み合わせたエンドツーエンドの体験を競争優位の源泉に据える。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
楽天市場や楽天トラベルでAIによる成果が出ている(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

成果はすでに出始めている。楽天市場では、Rakuten AIがチャットから購入完了まで顧客を案内することで、購入にかかる時間を約41%短縮し、平均注文単価を17%押し上げた。

楽天トラベルでも、AIが発見から予約までを一つの流れで案内する仕組みを導入。7月には、AIを活用した予約の平均宿泊予約額が非AI予約より13%高く、家族旅行・グループ旅行の宿泊予約数は29%増加したという。

三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想

この3つの軸を束ねるのが、「スーパーエージェント」構想だ。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
スーパーエージェント構想の概要(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

各アプリに組み込まれたAIエージェントが相互に連携し、エコシステム全体のクロスユースを拡大させる。Rakuten AIスーパーエージェントは、すべての商品・サービスを横断して顧客体験をつなぎ、エコシステム内のあるエージェントから別のエージェントへと処理を引き継ぎ、取引まで完了させる構想だ。

加えて、複雑なタスクを処理し、発見から購入、配送までをワンストップで完結させるほか、地図、カレンダー、メール、メッセージなどの外部サービスとも連携する。さらに、インターネット上の外部エージェントともつながることで、店舗や宿泊施設、ビジネスパートナーに対して、より多くのエージェント経由のトラフィックを呼び込む構想を描いている。

楽天市場で開発を進めている「AI店長」も、この流れの中に位置付けられる。各店舗に関する専門知識を持つAI店長が、商品のおすすめ提案や問い合わせ対応を担い、店頭で接客を受けるようなショッピング体験をオンライン上で再現する。年内のローンチを予定している。

楽天の2026年1-6月期の国内EC流通総額は約3兆円で4.9%増。三木谷氏が描く「スーパーエージェント」構想+エコシステムを加速させる3つの矢
楽天市場の「AI店長」のイメージ(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

AIは単なるツールではなく、楽天の全事業を動かす「OS」。その成果はすでに数字に表れており、広告事業における15.6%の成長は、クリエイティブ作成から入札、パフォーマンス評価までのAIによる完全自動化がもたらした実益そのもの。全社的なAI活用はオペレーションコストを劇的に下げると同時に、1.5億を超える楽天IDから生まれる膨大なデータを、新たな顧客体験へと変換する。財務的な安定を確保した今、楽天は再び「攻め」に転じる。2026年度第2四半期。それは単なる四半期報告の場ではなく、楽天グループが真のグローバル・イノベーション・カンパニーとして飛躍する「第二の創業」の瞬間。(三木谷浩史会長兼社長)

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