「楽天市場」の2026年下半期戦略の全ぼう。AI軸に売り場・販促・物流・店舗運営を強化、出店者負担はどう変わる?
「楽天市場」が2026年下半期に打ち出す成長戦略が明らかになった。「AI店長」構想やAIコンシェルジュの進化に加え、買い回り施策、RSL拡張、広告・アフィリエイト改革、RMS改善まで施策は広範囲に及ぶ。一方で、月額出店料や販促関連費用の見直しもにじみ始めた。実務インパクトまで含めて詳しく読み解く
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楽天グループは8月5日に開いた「楽天市場」出店者向けカンファレンス「楽天EXPO」で「2026年下半期戦略共有会」を実施、国内流通総額10兆円の実現に向けた戦略を示した。目標達成に向け、楽天はAIを軸に、売り場、販促、物流、広告、店舗運営までを一体で進化させる。
定期購入、AIコンシェルジュなど一部では成果が出始めている
目標達成に向けた動きはすでに一部で成果が出つつある。定期購入のリニューアル後、流通額は約3.8倍、月間新規購入者数は約8.9倍に拡大(2025年3月と2026年6月を比較)。「楽天市場」AIコンシェルジュの対話数は「スーパーSALE」期間中に約10倍となった(2026年3月4~11日と同年6月4~11日を比較)。「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」の利用店舗数も、2026年6月末時点で1万2000店舗を突破している。
下期は、こうした施策を個別に伸ばすだけではなく、「顧客を呼び込む」「買い回り・継続購入を促す」「AIで商品を選びやすくする」「確実に届ける」「店舗運営を効率化する」という一連の流れとしてつなげる。
今回の戦略を読み解くうえで重要なのが、AIによる接客・店舗運営支援、買い回りの再強化、定期購入などのLTV向上策、RSLの拡張、アフィリエイトを含む外部送客の強化だ。
「楽天市場」10兆円に向け「モール全体」を再設計
戦略共有会には、楽天グループの松村亮氏(副社長執行役員 コマース&マーケティングカンパニー プレジデント)が登壇した。松村氏は、「楽天市場」が2025年に国内流通総額6.3兆円を達成したと発表。10兆円目標の実現に向けた具体策として、
- マーケティング改革
- 売り場の進化
- 継続的な物流の強化
- AI活用による進化
- 店舗コミュニケーション
の5つのテーマを提示した。
今回の発表で目立つのは、AIを単独の新機能として投入するのではなく、「楽天市場」の顧客接点から店舗運営、広告、物流までを横断して活用しようとしている点だ。
これまでの「楽天市場」の成長を支えてきた大型セールや楽天経済圏に加え、AIによる商品選択支援、定期購入による継続利用、RSLによる配送品質向上、外部メディアからの送客などを組み合わせ、流通総額を押し上げる考えだ。
【マーケティング改革】
楽天経済圏から「楽天市場」へ送客 カード・モバイル利用者を囲い込む
マーケティング戦略では、楽天カードと楽天モバイルを軸とした楽天経済圏から「楽天市場」への送客を引き続き重視する。
カード・モバイル併用ユーザーの購買力を重視
松村氏によると、楽天カードと楽天モバイルの両方を利用するユーザーは、非利用者と比べて月間購入金額が1.5倍、月によっては2.5倍に達するという。
2026年6月開催の「楽天スーパーSALE」では、楽天カード・楽天モバイル両方を利用していないユーザーと比べ、楽天カード利用者の購買金額は32.8%高かった。さらに、楽天モバイルのみを利用するユーザーと比べても、カードとモバイルを併用するユーザーの購買金額は53.5%高かった。
楽天モバイルユーザーによる「楽天市場」の流通金額シェアは23%。若年層との接点の強さも特長としてあげた。
「楽天モバイル最強感謝祭」を第3の大型販促へ
こうした楽天モバイルユーザーの購買力を「楽天市場」の成長につなげる施策として、「楽天モバイル最強感謝祭」を拡充する。「楽天スーパーSALE」「お買い物マラソン」に続く第3の大型販促イベントとして育成する方針だ。
「楽天モバイル最強感謝祭」の流通額は大きく伸びており、2026年4月実施分は2025年12月実施分と比べ39.9%増、2026年7月実施分は同年4月実施分と比べ44.8%増で、7月実施分には1400店舗が参加した。
「Rakuten Link」内に店舗公式アカウントを開設。料率は2~4%
楽天モバイル利用者との接点をさらに増やすため、10月からはコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」内で「楽天市場店舗」の公式アカウントを開設できる仕組みを提供する。店舗が楽天モバイルユーザーに直接情報を発信し、自店舗への送客につなげる狙いだ。なお利用料金体系は、発生した経由売上の2~4%を予定している。
「お買い物マラソン」を再強化。買い回りと継続購入を伸ばす
テレビCMとジャンル特化型施策を継続
「楽天市場内」の販促では、買い回り率の引き上げを重要テーマに据える。中核となる「お買い物マラソン」は、テレビCMによる認知拡大を続けると共に、イベントに合わせたジャンル別セールを展開。カテゴリ単位での訴求を強める。
対象ジャンルにおける2026年実施時の流通額は、2025年同月の「お買い物マラソン」と比べて9.3%増。韓国コスメでは、2026年5月前半の「お買い物マラソン」の流通額が前年同期比23.7%増となるなど、ジャンル特化施策の効果も表れている。
「楽天スーパーSALE」「お買い物マラソン」「BLACK FRIDAY」を軸とした大型買い回りイベントについても、テレビCMやジャンル特化型施策を継続する。
継続購入ユーザー優遇のポイント施策を2027年上期に導入へ
楽天は2027年上半期に、継続購入するユーザーほど得になる新キャンペーンの導入も検討している。直近数か月の購入実績に応じて、次回の「スーパーSALE」や「お買い物マラソン」などで通常より多くのポイントを付与する構想だ。
たとえば、直近3か月以内に購入金額10万円・購入件数5件だったユーザーには、「スーパーSALE」や「お買い物マラソン」でポイント進呈倍率を1倍上乗せし、「ご愛顧感謝デー」や「ワンダフルデー」では2倍上乗せする。購入金額30万円・購入件数15件のユーザーには、「スーパーSALE」や「お買い物マラソン」で3倍、「ご愛顧感謝デー」や「ワンダフルデー」で5倍を加算する案を示した。
単発のセールで購入を促すだけでなく、過去の購入実績を次の購買につなげることで、顧客の継続利用を高める狙いだ。
2028年頃にはマーケティング活動費用の負担改定も検討
一方、買い回りイベントを継続的に強化するため、イベント期間中の一部マーケティング活動費用について、経済的な負担方法の改定も検討している。改定時期は2028年頃を予定しているという。
【売り場の進化】
定期購入・ソーシャルギフトで「セール以外」の購入を増やす
定期購入は流通額約3.8倍、新規購入者数約8.9倍
「楽天市場」が流通総額を中長期的に伸ばすうえで、重要性を増しているのが継続購入だ。定期購入では、機能リニューアル後に流通額が年間で約3.8倍、月間新規購入者数が約8.9倍に拡大した。大型セールに依存しない購入機会の創出にもつながっている。
2026年6月にはクーポン機能を導入。2027年以降は、定期購入専用カートの整備や申込管理画面の改善などを進め、店舗・ユーザー双方の使い勝手を高める。
ソーシャルギフトの商品数は22倍超
ソーシャルギフトも強化していく方針だ。対応商品数は2026年4月のサービス開始時と比べ、同年6月には22倍以上に増加。「母の日」におけるソーシャルギフトの流通額は、直前1週間平均と比べ5月10日当日は約5倍に伸びた。
今後はギフト訴求に加え、ユーザーが定型のギフトカードに自由にメッセージを入力できる機能なども追加する。
AIで「商品を探す」から「相談して選ぶ」売り場へ
「楽天市場」の売り場では、検索やレコメンドによる商品発見に加え、AIを使った比較・相談型の購買体験を強化する。
「ディスカバリーレコメンデーション」を高度化
2026年下期は、ユーザーの行動データや商品情報など複数の情報を組み合わせ、商品の意味や関連性、長期・短期・リアルタイムの行動傾向を反映した、より高度なパーソナライズを進める。
インフルエンサーによる動画やライブコマース動画など、エンターテインメント性の高いコンテンツも拡充し、商品との新たな接点を増やす。
「ディスカバリーレコメンデーション」では約2万店舗が20万件以上のオリジナルコンテンツを制作している。コンテンツ閲覧後1か月以内のコンバージョン率は上昇傾向にあり、2026年6月のCVRは8.7%だった。
AIコンシェルジュは「比較」「深掘り」「個別提案」へ
AIを活用した接客では、「楽天市場AIコンシェルジュ」の機能を拡充する。
2026年7月に、商品価格、サイズ、特長、配送期間などを一覧で確認できる「商品比較」機能と、商品特長やおすすめポイント、レビュー、使用時の注意点などを深掘りできる「詳細を聞く」機能を追加した。2026年下期には、購買履歴やユーザーの嗜好をもとに、1人ひとりに適した商品や比較軸を提示する「パーソナライズ提案」機能の導入も予定している。
AIコンシェルジュの利用は拡大しており、「スーパーSALE」期間中のAIコンシェルジュでの対話数は、2026年3月開催時と比べ、6月開催時は約10倍となった。
「AI店長」で「楽天市場」5万超店舗の個性を接客に生かす
今回の共有会で特に注目なのが、「AI店長」構想だ。「楽天オプティミズム」で楽天グループの三木谷浩史氏(代表取締役会長兼社長 最高執行役員)も言及した構想で、「楽天市場」に出店する5万超の店舗それぞれが持つ商品知識や専門性、接客ノウハウをAIに反映し、店舗ごとに異なる商品提案や接客を実現することをめざす。
商品オプションを刷新。店舗独自の販売方法にも対応
売り場機能では、商品オプション機能も大きく刷新する。
2027年上半期には、既存のオプション項目に価格、出荷リードタイム、画像設定などを追加し、ユーザーが選択した内容を買い物かごに反映できるようにする。また、名入れ、裾上げ、防水加工、ラッピングなど、店舗独自のサービスにも対応。共通オプションを複数商品にひも付けられる一括管理機能も整備する。
単に商品を並べるだけでなく、店舗ごとの販売方法や付加価値を「楽天市場」上で表現しやすくする狙いだ。
【継続的な物流の強化】
物流は「最強翌日配送」とRSL拡張で強化
物流では、配送品質を「楽天市場」の競争力につなげる。
「最強翌日配送」の認知と露出を拡大
「最強翌日配送」ラベルの訴求を強化し、2026年5月からラベル対象商品のポイントキャンペーンを毎週末実施、ユーザー認知を高める。
2026年6月からは、ラベル獲得商品の検索優遇も開始した。配送スピードを重視するユーザーに対して対象商品の露出を高め、売上拡大につなげる。
「RSL」利用店舗は1万2000店を突破、冷凍・大型も対応へ
「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」も拡張する。
365日出荷への対応などを背景に、2026年6月時点の利用店舗数は1万2000店を突破した。小型商品向けにはメール便5cmと宅配便40サイズを導入。2026年上半期の利用数は2025年下半期比で13.8%増となった。
今後は冷凍・大型商品にも対象を広げる。2026年8月からは60~140サイズの冷凍配送、10月からは180~260サイズの大型商品を取り扱い、いずれも「最強翌日配送」に対応する。
「置き配」を原則設定へ
受け取り方法では、「置き配」も大きな変更点となる。楽天は2027年以降、「置き配」をデフォルト設定に移行する方針だ。新ガイドラインの施行に伴い、日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便の宅配便、宅配便(特定送料)、小型宅配便について、原則として「置き配」設定を必須とし、従来の店舗申込制は撤廃する。
【AI活用による進化】
店舗運営はAI・データ分析で効率化
楽天はユーザー側の購買体験だけでなく、出店者の運営負荷を下げる取り組みも進める。
「Rakuten AI for RMS」の利用店舗は約2倍
「Rakuten AI for RMS」では、2026年4月から店舗・商品の売上データ分析機能を提供。7月に店舗・商品レビューとの連携を開始し、今後は広告パフォーマンスとの連携も予定する。商品情報を元にバナーを生成する機能も強化する。「R-Cabinet」では「画像・動画管理」機能を2027年から提供開始予定だ(参考:「「楽天市場」がAI戦略を公開。「AI店長」「バーチャル試着」「RMSバナー画像生成」の全ぼう【Rakuten AI Optimismレポート】」)。
「Rakuten AI for RMS」は5割以上の店舗が毎月利用しており、月間利用店舗数は2024年12月と比べて、2026年5月に約2倍となった。
商品一括編集機能を2027年1月から無料化
商品一括編集機能については、2027年1月から月額1万円だった利用料金を無料にする。5万件を超える商品のCSVダウンロードについても、従来の複数回操作から1回の操作で実行できるよう改善する。
「R-Karte」で商品ページや流入経路を分析
店舗向け分析ツール「R-Karte」では、新機能「商品ページ分析」を追加する。2026年8月から、商品詳細ページへの流入ページ、流入キーワード、転換率、遷移先ページ、顧客属性などを分析できるようにする。
10月からはコンテンツページ別の売上貢献度も可視化。「ディスカバリーレコメンデーション」など、どの流入経路が売り上げにつながったのかを把握しやすくする。
広告運用もAI化 商品ページからバナー・キーワードを自動生成
広告では、ターゲティングディスプレイ広告(TDA)と検索連動型広告(RPP)を進化させる。
2026年6月からはTDAのAIバナー生成機能を強化。商品ページを入力するだけで、バナーとキャッチコピーを自動生成する。RPPでは8月からAIによるキーワード運用の自動化を提供。店舗側の広告運用負荷を抑えながら、出稿効率を高める。
TDAとTDA-EXPでは配信チャネルも拡大し、ファッション、ビューティー、スポーツ、インテリア、ゴルフ、カー用品など幅広いジャンルで広告パフォーマンスの向上を図る。
「Criteo」や「SmartNews」など外部メディアへの展開も進め、10月には動画を含む広告フォーマットの拡充も予定する。
【店舗コミュニケーション】
店舗との対話とセキュリティ支援を強化
上期に約3800件の店舗の声、75%で改善着手
出店者とのコミュニケーションも強化する。2026年上期には約3800件の店舗から意見を集め、主要トピックスの約75%で改善に着手した。内訳は改善済みが38%、改善中が37%。直近の改善例として、「RMS」や「Rakuten AI for RMS」の精度改善、新店舗トップページのユーザビリティ改善などをあげた。
サイバー攻撃への対策も強化
店舗向けの情報セキュリティ支援も下期の重点施策としてあげた。特設サイトでチャージバック補償保険やサイバー保険などを案内するほか、不正注文対策としてパスキーや、買い物ステップ上の情報変更に対する二要素認証を導入する。情報セキュリティハンドブックも刷新し、新たな脅威やリスク、対策をわかりやすく伝える。
外部送客を強化。アフィリエイト料率は最大70%へ
「楽天市場」内だけでユーザーを獲得するのではなく、外部メディアやクリエイターからの送客も強化する。
商品別に最大70%まで料率設定
アフィリエイト料率を引き上げた商品の流通額は、2025年上半期の前年同期比1%増に対し、2026年上半期は12.1%増となった。
2026年第4四半期には「RMS」を刷新し、商品別に最大70%まで料率を設定できるようにする。さらに、どの提携メディアから成果が発生したのかを把握しやすくするため、レポート画面も更新する。店舗側が商品ごとにアフィリエイト投資をコントロールしやすくし、クリエイターやメディアからの外部送客を増やす狙いだ。
「YouTube Shopping」による売上拡大
松村氏は「YouTube Shopping」の活用によって売り上げが拡大していることを紹介。クリエイター数、動画数、紹介商品数も増加しているという。
越境ECは東アジア・東南アジアへ
越境ECでは、中国に加え、東アジアの韓国、台湾、香港などと、東南アジアのASEAN地域を優先拡大エリアとして位置付ける。各国の有力ECモールやメディアとの連携を広げ、「楽天市場」の出店者が海外顧客と接点を持つ機会を増やす。
国内では地方自治体との連携も強化し、県産品などの海外を含む販路拡大を支援する。
出店者の負担も改定へ。AI・物流などへの継続投資を優先
今回の戦略発表では、「楽天市場」への継続投資に伴う出店者負担についても触れた。
AI開発に必要なGPUコストや人件費の上昇、インフレ環境などを背景に、楽天は投資を抑えるのではなく、AIや物流、プラットフォーム機能への投資を継続する方針だ。その一環として、2027年第1四半期に月額出店料の一部改定を予定する。
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