飲食料品の消費税率が「1%」へ引き下げへ。ECサイトのシステム改修など事業者が気を付けること

飲食料品の軽減税率を2027年4月から2年間、8%から1%へ引き下げる方針が固まった。EC事業者には、商品マスタやカート、受注、会計、価格表示まで含めたシステム対応が求められそうだ。

鳥栖 剛[執筆]

7:30

飲食料品に適用している軽減税率が、時限的に「8%から1%」へ引き下げられる方針が固まった。対象は現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品で、ECで販売する食品も同様に対象となる見通しだ。飲食料品を扱うEC事業者には、税率変更に向けたシステム改修や表示、受注、会計処理の見直しが求められる。

8月5日の閣議決定後に会見に応じる高市早苗首相(画像は首相官邸の公開動画から編集部がキャプチャ)

8月5日に「給付付き税額控除」の基本方針を閣議決定

高市早苗首相は7月30日、「飲食料品に係る消費税率の引下げ」について会見し、2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる方針を表明。あわせて、2029年度に本格導入をめざす「給付付き税額控除」までの「つなぎ」と位置付ける考えも示した。「給付付き税額控除」は、税や社会保険料の負担と給付を組み合わせ、所得に応じて負担をきめ細かく調整する仕組みで、政府は2029年度の本格導入をめざしている。

その後、政府は8月5日、臨時閣議で「給付付き税額控除」の制度導入に向けた基本方針を閣議決定した。内閣官房も同日、同基本方針を公表。内閣官房が公表した「『給付付き税額控除』の制度導入の基本方針」には、制度の経過措置として、2027年4月1日から2年間、「軽減税率の対象となっている飲食料品に係る消費税率を1%とする」と明記している。

なお現行の軽減税率制度に関する国税庁の見解として、「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」の中で、「インターネット等を利用した通信販売であっても、販売する商品が『飲食料品』に該当する場合には、『飲食料品の譲渡』に該当し、軽減税率の適用対象となる」と明記。今回の政府方針は、「軽減税率の対象となっている飲食料品」の税率を1%に引き下げる立て付けであるため、現行制度上、軽減税率の対象となるECの飲食料品も、今回の措置の対象に含まれる見通しだ。一方、酒類や外食など、現在の軽減税率の対象外となっている商品は、今回の引き下げ対象には含まれない。食品と酒類、日用品などを同時に扱うEC事業者では、商品ごとの税率区分を改めて確認する必要がある。

今回の制度の背景には、物価高への対応を急ぐ狙いがある。高市首相は会見で、税・社会保険料負担や物価高に苦しむ中低所得層の負担軽減を「最重要課題」と位置付け、給付付き税額控除を改革の本丸としつつ、飲食料品の消費税率引き下げをその実施までの経過措置と説明した。あわせて、2027年度には、飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲内で、現時点で公的機関が保有する所得情報を活用した所得に連動した給付を導入し、全体として「実質ゼロ化」を実現する考えも示している。

EC事業者に求められるシステム対応

EC事業者にとって重要になるのが、2027年4月1日の税率変更に向けたシステム対応。また2年後には新制度への移行に伴う再対応も想定される。

まず確認したいのが、ECサイトやカートシステムの商品・税率設定だ。商品詳細ページ、カート、注文確認画面、受注メール、納品書、請求書など、税額を表示・計算する箇所を洗い出し、施行日に1%へ切り替えられるよう準備する必要がある。

食品と非食品、酒類、雑貨などを同じECサイトで販売している場合は、商品マスタに設定された税率区分が正しいかどうかも確認しておきたい。

また、受注管理システム、基幹システム、会計システムなどとの連携も重要になる。ECサイト側の表示や計算だけを1%に変更しても、受注データや請求・会計データが8%のままでは、システム間で不整合が生じる可能性がある。

特に注意したいのが、施行日前後にまたがる取引だ。予約販売や定期購入、出荷日が注文日から大きく離れる商品、返品・キャンセルなどについて、どの時点の税率を適用するのか、制度の詳細を踏まえて運用ルールを確認する必要がある。

税率変更に伴う価格表示も確認

価格表示についても対応が必要になる。税込価格を表示している場合、税率が8%から1%に変われば、税抜価格を維持した場合の税込価格は変わる。一方、税込価格そのものを維持するのであれば、税率変更分を販売価格側で調整することになる。

そのため、商品ページだけでなく、キャンペーンページ、広告、メールマガジン、モール内の商品情報など、価格を掲載している箇所を横断的に確認する必要がある。

特に複数の販売チャネルを運営している事業者では、自社EC、ECモール、実店舗、モバイルオーダーなどで、価格や税率設定が一致しているかを確認することが重要になる。

「STORES」は税率変更に対応、予約設定機能も提供へ

ECシステムベンダーでも、対応に向けた動きが始まっている。STORESは7月31日、食料品の消費税率変更を見据え、「STORES レジ」「STORES ネットショップ」「STORES モバイルオーダー」「STORES 請求書決済」などで新税率に対応すると発表した。税率の一括設定や予約設定機能も提供する予定で、制度変更に伴う事業者の対応負担を軽減する。そのほか、BASEも対応準備を進めているという。

ベンダー側の対応状況を確認しながら、自社で利用しているECカート、受注管理、在庫管理、会計など各システムの対応方針を早めに確認しておく必要がある。

システム改修期間を踏まえ、早めの準備が必要に

政府の議論では、税率変更に伴う事業者のシステム対応も課題となってきた。政府の基本方針は、「消費税率の変更に柔軟に対応できるシステムの普及促進を図る」。今後は、法制化の議論とあわせて、システム改修支援や周知策の具体化が焦点になりそうだ。なお、高市首相は7月30日の会見で、1%への引き下げであれば0%とする場合よりシステム改修期間を短縮でき、2027年4月からの実施が可能との認識を示していた。

今後の流れとして、高市首相は9月に大綱を決定した上で、臨時国会に法案を提出し、早期成立をめざす方針を示している。現時点では法制化に向けた手続きが残されているものの、基本方針では実施時期を2027年4月1日からとしている。EC事業者にとっては、制度の詳細を確認しながら、改修に必要な期間を逆算して準備を進める段階に入ったといえそうだ。

まずは、自社で販売する商品のうち軽減税率の対象となる飲食料品を棚卸しし、商品マスタや税率設定を確認したい。そのうえで、ECカート、受注、在庫、請求、会計、決済、販促表示など、税率変更の影響を受けるシステムや業務を洗い出しておきたい。

政府は、「給付付き税額控除」を2029年度に本格導入する方針。制度の詳細次第では、2029年度以降に再対応が必要になる可能性もあるため、今回の改修では単発の税率変更だけでなく、将来的な税制変更にも対応しやすいシステム設計を検討することが重要になりそうだ。

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