矢野経済研究所が公表した国内の食品通販市場に関する調査結果によると、2025年度の国内食品通販市場規模は前年度比3.3%増の5兆74億円となり、初めて5兆円を突破する見込みだ。新型コロナウイルス禍による特需は一巡したものの、食品通販の利用が日常的な購買行動として定着し、市場は安定成長局面に入っている。

2024年度の国内食品通販市場規模は小売金額ベースで前年度比2.2%増の4兆8472億円だった。業態別の市場規模構成比は、ショッピングモールが44.3%で最も大きく、生協が32.8%、食品メーカーダイレクト販売(直販)が15.2%、ネットスーパーが5.5%、自然派食品通販・宅配が2.2%となっている。

物価上昇や生活防衛意識の高まりを背景に消費者の購買姿勢は慎重になっている一方、保存性の高い商品やコストパフォーマンスに優れた商品、簡便性の高い冷凍食品などへの需要は底堅く推移。加えて、米不足や価格高騰を背景に、インターネットで米の在庫を検索・購入する動きが広がり、米の通販需要の拡大も市場全体を押し上げた。
2025年度は、複数の商品を横断的に比較購入できる利便性や、ポイント・クーポン施策が節約志向の消費者ニーズに合致していることから、ショッピングモールが市場拡大をけん引するとみられている。一方、生協や自然派食品通販・宅配は利用者数の伸び悩みや割高感が重しとなり、ネットスーパーは成長の一巡や事業採算性の見直しを背景に転換期を迎えているとしている。
注目トピックとしてあげたのが、食品通販で広がるソーシャルギフトだ。贈り先の住所を知らなくても、SNSやメールで専用URLを送付するだけで食品ギフトを贈れる仕組みとして、新たな購買導線になっている。
新型コロナウイルス禍以降は、自宅で楽しむ良質なグルメ商品を親族や知人へ自由なタイミングで贈るカジュアルギフト需要が拡大。近年は法人利用による認知拡大もあり、誕生日や母の日、お礼、手土産など個人間ギフトにも用途が広がっている。
食品はソーシャルギフトとの親和性も高く、スイーツ、果物、米、うなぎ、総菜などで利用が拡大しているという。即時に贈れる利便性から、イベント直前の駆け込み需要も取り込みやすく、今後も日常的なコミュニケーション手段の1つとして利用拡大が見込まれる。
今後の市場成長のカギについて、矢野経済研究所は、単なる利用者数の拡大ではなく、既存利用者の購買頻度や購入単価をいかに高めるかにあるとみている。日常食品では、重さ・保存性・簡便性を備えた商品のまとめ買い需要が引き続き市場を下支えする一方、高単価のお取り寄せ商品は節約志向の影響を受けやすく、本格的な回復には時間を要する見通しだ。
調査概要
- 調査期間:2026年3~5月
- 調査対象:通信販売事業者、食品関連企業、生協、食品小売事業者、食品卸売事業者など
- 調査方法:矢野経済研究所の専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査、電話ヒアリングおよび文献調査
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