行政不服審査会、景表法の不実証広告規制の運用を問題視。根拠資料の評価を具体的に記載するよう求める
大正製薬の審査請求をめぐり、行政不服審査会(以下、審査会)が景品表示法の不実証広告規制の運用を問題視していたことがわかった。答申に関する付言のなかで、企業の提出資料を根拠と認めない場合の「理由」について、「理解しやすく記載されているとは言い難い」と指摘。根拠資料の評価を具体的に記載するよう求めた。
第三者機関での製品試験の結果認めず、措置命令を下す
今年4月、審査会は請求棄却が妥当と答申している。
付言を受けた対応について消費者庁は、「対応への言及は個別案件に踏み込むことが避けられない。まったく聞かないということではなく受け止めはするがお話できない」(表示対策課)とコメント。重ねて一般論として対応の説明が可能と指摘したが「答申は匿名化された個別案件の付言であり、一般化して話すのは不適当」(同)とした。
審査請求は、19年7月、消費者庁が下した措置命令について。大正製薬は光触媒技術を活用したマスク「パブロンマスク365」シリーズで、マスクに付着した粒子が分解されているイメージ図とともに「ウイルス」、「光触媒で分解」、「太陽光、室内光でも」などと表示していた。
消費者庁は、不実証広告規制(景表法7条2項)の規定に基づき、表示の裏付けとなる合理的根拠を要求。同社は、複数の第三者機関で実施した製品試験の結果を提出した。消費者庁は、これを認めず措置命令(優良誤認)を下した。
大正製薬はこれを不服として同年10月に審査請求。棄却を受け、行政処分取消訴訟の提起に向けた準備を進めるとしていた。「提訴の方針に変更はなく、近く予定している」(同社)としている。
資料への評価「理由として具体的に記載」を求める
請求は棄却されたものの、審査会は答申のなかで不実証広告規制の運用に付言している。
不実証広告規制は、表示内容・媒体・期間に加え、「あたかも」との文言を用いて表示が示す効果・性能を認定。企業の提出資料が「合理的根拠とは認められないものであった」旨が公表される。
審査会は、この記載が行政手続法14条1項が求める「不利益処分の理由の提示」を「満たしていないとはいえない」としつつ、「理由が理解しやすく記載されているとは言い難く、記載が具体的でないことで審理手続の長期化を招いた」と指摘。「14条の意義を十分踏まえ、資料について行った評価を、理由として具体的に記載することが望まれる」とした。
また、審査会に提出した「諮問説明書」も、消費者庁が「審理員意見とは結論を同一にするものの、判断過程を異にする」と記載しながら、判断過程が異なる理由の説明がないとして改善を求めている。
審査請求は、事業者の審査請求を受け、審査庁が指名した審理員の意見書を踏まえ、審査会に諮問する。審理員は、請求内容と関連のない職員を指名される。
実環境とかい離あり「根拠として十分ではない」と判断
大正製薬は、製品について抗ウイルス性や抗アレルゲン、抗菌性等の試験をJIS規格に沿って行い、光触媒の効果を確認。学術界・産業界で一般的に認められた試験方法であり、得られた結果から「分解」と表示したとする。合理的根拠の判断要素である(1)客観的に実証された内容、(2)表示された効果・性能と根拠の一致を満たすと主張した。
審理員意見書は、試験について、使用する実環境すべてを想定した光照射条件を設定することは「合理的ではない」と一定の理解を示す意見があった。一方、室内光の実環境と明らかなかい離があるものがあり、「室内光でも」との表示の根拠とはいえないなどと指摘。また、代表的な使用場所に応じて照射条件を選択することも可能であり、根拠として十分ではないとの意見があった。
審査会も意見を踏まえ、「試験は、実際の使用環境に応じた照射条件を設定するJIS規格の定めからかけ離れたもの」として妥当性に疑問を呈し、少なくとも「表示された効果と根拠の一致」の要件を欠き、命令に違法な点はないとした。
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