消費者庁は1月16日、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針(案)」について、パブリックコメントの募集を開始した。意見募集期間は2月14日まで。3月上旬までに意見のとりまとめを行い、3月下旬に公表し、4月1日からの運用を目指す。指針案では「科学的根拠」の考え方と、「広告表示」の考え方の2つの柱を中心に定められている。

2015年にスタートした「機能性表示食品制度」。届出公表件数は2,300件を超え、市場も3,000億円規模に成長したが、「基準が不明確」という声も多く、景品表示法などに触れて行政処分を受ける事業者も後を絶たない。打ち出された指針案は制度の円滑な運用に寄与するのか? 公開された指針案の概要についてまとめる。

なぜ指針が必要なのか

健康食品の広告などの表示において、「不当表示」と判断される基準は下記の2つ。

① 「著しく」優良または有利に見える表現

広告にはある程度の誇張が含まれていることは消費者も想定しており、消費者も競合企業も容認できる些細な誤認ならOKだが、消費者が「表示が実際と違うのなら購入しなかった」「知っていればその商品でなくても良かった」と思うような表現はNG

② 一般消費者に誤認される表現

消費者は表示を手がかりに商品を選択する。世間並みの常識のある消費者が、表示から受け取る印象、認識、期待感などが、実際の商品と差が生じるような表現はNG。ただし、消費者の無知から生じる勘違いや、事実とは異なるが誰も本気では受け取らない表現は除く。

こうした基準はあるものの、「特定の文言を使っていたらNG」というような単純なものではなく、広告を構成する文章、図版、写真などから総合的に判断し、その広告を見た一般的消費者が持つ「印象」や「期待感」と、事実との間に相違があると判断されたらNGということになっている。実際に事業者からも、

「処分を受けた会社と、処分を受けなかった会社の表示はどこが違うのかわかりにくい」

「広告全体で総合的にケースバイケースで判断され、基準が抽象的」

「規制を予見できる可能性が低すぎる」

といった声が寄せられてきた。このため消費者庁は、ルールの予見性と透明性を高めるため、有識者や業界団体と「事後チェック指針」の作成を進めてきた。今後は各業界団体内でのチェックを含め、機能性表示食品制度の円滑な運用を目指す。

事後チェック指針「広告表示」の考え方

1月29日に健康食品産業企業議会、日本健康・栄養食品協会、日本抗加齢協会、日本チェーンドラッグストア協会、日本通信販売協会の5団体と消費者庁が共同で開催したセミナー「機能性表示食品、新ルールを徹底解説」の中で、消費者庁表示対策課特命室長の田中誠氏は、「広告表示において、事業者の方がつい行き過ぎてしまうポイントが7つある。事後チェック指針では、アクセルを踏みやすい部分にオービスを設置した」と語った。

消費者庁表示対策課特命室長の田中誠氏
消費者庁 表示対策課 特命室長 田中誠氏

指針案の中で「景品表示法上問題となるおそれのある広告その他の表示の要素」としてあげられているのは下記の7つ。

①解消に至らない身体の組織機能等にかかる問題事項等の例示

届出された食品又は機能性関与成分が有する機能性では解消に至らない疾病症状に該当するような身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示することや、当該食品又は当該機能性関与成分が有する機能性ではおよそ得られない身体の組織機能等の変化をイラストや写真を用いるなどにより表示することは、一般消費者が、表示全体から受ける印象によって当該食品を摂取するだけで当該身体の組織機能等に係る問題が解消されるものと誤認する蓋然性があり、そのような表示は、届出された機能性の範囲を逸脱したものとして景品表示法上問題となるおそれがある。

つまり、「飲むだけで(他には何もしなくても)悩みが解消する」というような、あり得ないことを印象づける表現はNG。

②届出された機能性に係る表示

簡単に言うと下記の4つ。

  • 届け出された機能性の範囲を逸脱した説明をしてはいけない
  • 機能性関与成分ではない成分を強調してはいけない
  • 医薬品や医薬部外品で認められているような効果効能を標ぼうしてはいけない
  • 効果が得られた対象者が限定されている場合、誰でも効果が得られるような表示をしてはいけない

具体的には「花粉症に効果あり」「糖尿病の方におすすめ」「高血圧の人に」など医薬品的な効果効能にあたる表現がNGのほか、健康の維持・増進という本来の範囲を超えた「肉体改造」「増毛」「美白」などの表現は「意図的な健康の増強の標ぼう」とされるためNG。

③実験結果及びグラフ

消費者に信憑性の高さを印象付ける試験結果やグラフにおいて、実際の試験結果よりも過大な効果があるかのように表示することは景品表示法上問題となるおそれがある。

④医師や専門家等の推奨等

医師や専門家の推薦がNGというわけではないが、下記の場合はNG。

  • 特定の疾病名を示すことにより、当該疾病の予防・治療効果が得られるかのように表示する
  • 推奨等の事実がないにもかかわらず、推奨等を得ているかのように表示する
  • 全面的に肯定していないにもかかわらず、肯定している部分のみを引用する
  • 有償、無償を問わず、肯定するよう依頼して行われた利害関係者の推奨等であるにもかかわらず、客観的な立場からの推奨等であるかのように表示している
  • 推奨者の肩書を、事実に反して利用者に信頼される専門家であるかのように表示する

⑤体験談

体験談において機能性表示食品の効果に言及されている場合において、一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該体験談を表示するに当たり事業者が行った調査における①体験者の数及びその属性、②そのうち体験談と同じような効果が得られた者が占める割合、③体験者と同じような効果が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示することが推奨される。

体験談によくある「個人の感想です」という打ち消し表示については、下記のように記載されている。

体験談については、これに関連する「個人の感想です」等の表示が一般消費者に認識されるものであったとしても、体験談で示された効果に係る打消しの効果は認められないことに十分留意し、体験談に表示されている内容が届出された機能性の範囲を逸脱していないかを、十分にチェックする必要がある。

つまり、「個人の感想です」と書けば何を言わせても良いわけではないということ。打ち消し表示についてはこれ以外にも

  • 強調表示と同一視野に記載されていない
  • 同一視野であっても離れた箇所に記載されている
  • 隣接した箇所に小さな文字で記載されている

など、強調表示と一体として認識されない表示方法である場合には、景品表示法上問題となるおそれがあるとしている。

⑥届出表示又は届出資料の一部を引用した表示

届出表示の一部を切り出して強調し、本来期待される効果の範囲を逸脱した過大な効果が得られるかのような誤認を与えてはいけない。また、届出資料に用いた論文を広告などで引用する際、届出表示やその根拠となる論文から逸脱した内容を表示した場合は景品表示法上問題となるおそれがある。

⑦その他留意すべき事項

効果を暗示させるキャッチコピーやイラスト、図版などについても、「一般消費者がどう認識するか」を十分に考慮する必要がある。

機能性表示食品の広告その他の表示においても他の一般的な商品又は役務の広告その他の表示と同様に、例えば、「売上NO.1」などといった商品の優良性を示す表示が行われることがあるが、その根拠が極端に短い期間のものであったり、対象者が限られていたり、機能性表示食品として届出する以前の当該食品の売上実績を合算したりする場合は、それらが明瞭に記載されていない場合、一般消費者に実際よりも著しく優良なものと誤認させる蓋然性があり、景品表示法上問題となるおそれがある。

このほか、景品表示法上問題となる恐れがあるのは下記の4項目。

  1. 届出された機能性の範囲を逸脱した表示
  2. 特定保健用食品と誤認される表示
  3. 国の評価、許可等を受けたものと誤認される表示
  4. 表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いている場合

事後チェック指針「科学的根拠」の考え方

広告表現が「事実である」と認められるには、下記の2つの要件を満たさなければならない。

  1. 提出資料が客観的に実証された内容のもの(「試験、調査によって得られた結果」か「専門家もしくは専門機関の見解、または学術文献」のどちらか)であること
  2. 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

科学的根拠について消費者庁食品表示企画課保健表示室長の森田剛史氏は、科学的根拠には真っ白(編注:間違いなく問題がないと言えるもの)と真っ黒(同:間違いなくNG)があるとし、「今回示したのは黒い部分だけ。黒に近いグレーについては、今後は、客観的に評価できる第三者機関の設置を含めて対応していきたい」としていた。

消費者庁表示対策課特命室長の田中誠氏
消費者庁 食品表示企画課 保健表示室長 森田剛史氏

主なNG例(指針案から抜粋)

  • 表示する機能性に見合ったリサーチクエスチョン(PICOまたはPECO)が設定されているが、表示の内容が科学的根拠の内容に比べて過大、また当該根拠との関係性が認められない
    例:主要アウトカム評価項目(成果のこと。通常1つを設定)において、表示する機能性についての有意な結果が得られていない
    例:主要アウトカム評価項目が複数設定されており、一部のアウトカム指標で有意な結果が得られていない場合に、その関連性を踏まえた説明がされていない
  • 条件を限定しない場合には特定の目的が期待し難いと考えられる結果であるにもかかわらず、表示の内容で当該条件に言及していない
  • 根拠論文が撤回され、機能性表示の科学的根拠となる査読付き論文が存在しない
  • エキスおよび分泌物(以下「エキス等」)に含有される特定の成分を機能性関与成分としているものであり、当該特定の成分のみでは表示する機能性を根拠論文等により合理的に説明できていない
  • エキス等を機能性関与成分とする場合において、指標成分が機能性関与成分たるエキス等との同等性について合理的に説明できていない
  • 根拠論文の対象者の一部に疾病に罹患している者が含まれる場合に、適切な層別解析がなされず、疾病に罹患している者が除外できていない(例外あり)
  • 試験の実施計画または実施方法に不備がある
    例:臨床試験(ヒト試験)の計画がガイドラインに規定する登録システムに事前登録されていない(例外あり)
    例:UMIN臨床試験登録システム等への事前登録後に、機能性の実証に係る項目に関して実質的な変更をおこなった
    例:倫理審査委員会の承認を受けていない
    例:プラセボ食等を摂取する対照群が設定されていない
    例:介入群に評価指標が高値または低値の者が恣意的に割り振られているなど、適切な参加者の割り付けが行われていない
  • 試験結果の評価に不備がある
    例:主要アウトカム評価項目における介入群と対照群の群間比較で統計的な有意差(P<0.05)が認められていない
    例:評価指標について、当該分野の学術的なコンセンサス等の観点から当該機能性を評価する指標として合理的な説明がされない
    例:評価指標に主観的な指標を用いる場合、日本人への妥当性が得られたものであり、かつ、当該分野において学術的に広くコンセンサスが得られたものであることについて合理的な説明がされていない
  • 必要な資料について、下記の情報等に関して客観性・透明性が担保されていない
    • 論文の検索条件や採択・不採択の論文情報など、結論に至るプロセス
    • 当該研究レビューにおけるスポンサー、共同スポンサー(研究の発案、運営、資金のすべて、またいずれかに責任を負う個人、企業、研究機関、その他団体)および利益相反に関する情報
    • 出版バイアスの検討結果
  • 研究レビューで採用した論文(臨床試験(ヒト試験)の内容に不備がある
    例:RCT(ランダム化比較試験)で表示する機能性を支持する査読付き論文が1報もない
    例:表示する機能性に見合ったアウトカムを適正に研究レビューへ反映せず、肯定的な結果のみを恣意的に選出している
  • 研究レビューにおける成分と届出食品中の機能性関与成分との同等性が担保されていない
    例:研究レビューで評価した成分(エキス等を含む)と届出食品中の機能性関与成分の同等性が合理的に説明されない
  • 研究レビューで有効性が確認された量よりも届出食品中の機能性関与成分の含有量が少ない
    例:研究レビューで有効性が確認された際の摂取時の形態や剤型と届出食品での形態や剤型が異なる場合において、有効性が確認された機能性関与成分の有効量の同等性が合理的に説明されていない
  • 「totality of evidence」の判断(採用論文数、最終的に肯定的と判断できる要素など)が適切になされていない
    例:バイアスリスクを著しく過小評価した論文をもとに、肯定的な結論を導き出している
    例:表示する機能性に対して否定的な結論での論文データを恣意的に除いている
    例:表示する機能性について総合的に肯定されるとの判断をするに至った合理的な理由が具体的に示されていない
    例:表示する機能性を支持する査読付き論文が1報もない
    例:結果の客観性・透明性を担保するために必要な情報が示されない
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