今年(2014年)は、6月と11月の2回にわたり景品表示法の改正案が成立し、6月の改正部分は既に(多くは12月1日から)施行されています。今年の景品表示法の改正は、大きな問題となったホテルや百貨店、レストランなどにおいてメニューの不当表示が横行していた状況を踏まえたもので、広告やメニューなどの「表示」を行う事業者に対する規制が、相当強化されているのが特徴です。で改正法により具体的に何が変わったのか、事業者としてはどのような対策を行うべき概観してみましょう。

改正景表法で押さえておくべき3つのポイント

今回の景品表示法の改正案の変更点は、主に3つのポイントがあげられます。

  1. 事業者に対して課されるコンプライアンス体制
  2. 都道府県による監視指導体制の強化
  3. 課徴金制度の開始

以下、それぞれのポイントを詳しくみてみます。

1.事業者に対して課されるコンプライアンス体制

これまでの景品表示法では、過大な景品類の提供や不当な表示といった「行為」を禁止する形で、一般消費者が自由かつ合理的に購入する商品を選択できる途を確保してきました。ところが、平成26年6月の改正では、事業者に対し、こうした「行為」を禁止するだけでなく、景品表示法を遵守するために「必要な措置」を講じる義務を課しています。

改正法の条文第7条第1項をみてみると、

事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、……その他の必要な措置を講じなければならない

とされています。要は、事業者が自ら景品表示法を遵守するためのコンプライアンス体制を構築しなければならないということです。

とはいえ、事業者といっても、個人事業者から上場企業まで様々な事業者が存在し、事業規模、人員、業種など千差万別です。大企業であれば、コンプライアンス部を設置して対応にあたるのが自然だとしても、これを零細企業や個人事業者にあてはめるのは現実的ではありません。

この改正を踏まえて公表された「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年11月14日内閣府告示第276号、以下「管理指針告示」という)においては、

各事業者によって、必要な措置の内容は異なることとなるが、事業者の組織が大規模かつ複雑になれば、不当表示等を未然に防止するために、例えば、表示等に関する情報の共有において、より多くの措置が必要となる場合があることに留意しなければならない

としつつも、

他方、小規模企業者やその他の中小企業者においては、その規模や業態等に応じて、不当表示等を未然に防止するために十分な措置を講じていれば、必ずしも大企業と同等の措置が求められる訳ではない

とされています。要は、事業者ごとに身の丈に合った管理体制を構築すればよいことになるわけです。

また、「管理指針告示」においては、事業者が講ずべき表示等の管理上の措置の内容として、以下の項目が掲げられています。

  1. 景品表示法の考え方の周知・啓発
  2. 法令順守の方針の明確化
  3. 表示等に関する情報の確認
  4. 表示等に関する情報の共有
  5. 表示等を管理するための担当者等を定めること
  6. 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
  7. 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応

別添部分で、その具体例もあげられています。

たとえば、「景品表示法の考え方の周知啓発」とは、景品表示法に関する勉強会を定期的に開催したり、表示等に関する社内外からの問い合わせに備えるために景品表示法の考え方をメール等によって配信し、周知・啓発することです。景品表示法に精通したコンプライアンス要員がそろい、管理体制も十分とはいかない事業者も少なからず存在すると思われます。必要に応じ、弁護士など外部の専門家への協力を求め、合理的に管理体制を構築していくことが重要と考えられます。

2.都道府県による監視指導体制の強化

事業者に対する規制が強化される一方で、行政の監視指導体制も強化されました。事業者との関係で特に重要なのは、都道府県に措置命令権限が付与されたことです。

「措置命令」とは、景品表示法違反の行為を差し止め、違反行為の再発防止に必要な事項を命ずる行政処分のことです。これまで、発せられた措置命令は消費者庁ホームページにアップされてきました。名の通った会社や上場企業などが措置命令を受けるとニュースとして取り上げられることも少なくありません。

措置命令は、消費者庁長官(内閣総理大臣から委任されている)のみが発することができることとされていましたが、平成26年6月改正により、都道府県も措置命令を出すことが可能となりました

また、都道府県知事に措置命令権限が付与されたことに併せ、従来、消費者庁長官にのみ認められていた「合理的な根拠を示す資料の提出」を求める権限も付与されました。「合理的な根拠を示す資料の提出」とは、事業者が一定期間内に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出しなければ、不当表示とみなす制度であり、一般に不実証広告規制と呼ばれるものです。美肌効果、痩身効果をうたった健康食品の表示の規制として、これまで多くの事例で適用されてきていた実績もあります。

このように、都道府県の景品表示法に関わる権限が大幅に強化されているのが特徴です。事業者としては、都道府県が調査に入った場合でも、初動を怠らないことが重要となります

3.課徴金制度の開始

課徴金制度は、平成26年11月の改正法で可決成立したものです。不当表示に対して、これまでの措置命令に加え、課徴金の形で違反行為者に経済的不利益を賦課することにより、不当表示規制の抑止力を高めようとするものです。

景品表示法における措置命令は、不当表示を「直す」ことに主眼があり、違反した事業者に対する利益の収奪を予定したものではありません。そのため、悪質な事業者の「やり得」を排除することができませんでしたが、今回の改正でこれが可能となったといえます。

課徴金は、対象行為(不当表示。一部除外規定がある)に係る売上高(期間は3年が上限)の3%の額となっており、150万円未満の場合、課徴金は課されません

課徴金制度は、不当表示の抑止力を高めようとするものですから、一定の手続に従い被害者に対し自主的に返金措置を行った場合には、課徴金が課されないか、減額され、また、違反行為を自主的に申告した事業者には、課徴金額の2分の1を減額されるといった形になっています。また、仮に違反した場合であっても、真摯な努力をした事業者に対しては、「一種の温情措置」が用意されています。

そのため、事業者としては課徴金制度の対策として、景品表示法の遵守を記録に残る形で行うことが重要となります。

措置命令に至る手続と、課徴金納付命令に至る手続とは別個の手続きですので、措置命令を受けた事案のすべてについて課徴金が賦課されるわけではありません。課徴金賦課要件として、事業者の主観的要素が(消極的な)要件とされ、違反行為がされた期間を通じ、不当表示であることを「知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でない」場合には、課徴金を課されないこととされています。

この課徴金賦課の(消極的)要件である「相当の注意」の内容は、今後、消費者庁のガイドラインなどにより明確化が図られていくことになっています。

ただ、その際、上記1で述べた「必要な措置」をきちんと講じていることが「相当の注意」を払っていたのかということが前提となるものと考えられます。その意味で「必要な措置」を講じ、これを実践していることを形として残すことが重要であるといえます。

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松元 優季

弁護士

1980年東京都生まれ。2005年司法試験合格。2006年慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了。2007年弁護士登録。現在、御宿・長町法律事務所所属。弁護士登録後、広告取引、業務委託に関する案件に携わる。

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