ユニクロの「レジ待ち解消」「精算時間の短縮」を実現した新技術「RFID」とは?【EC物流の専門家が解説】
「物流2024年問題」が1年後に迫っている。ドライバーの賃金アップのため、配送業者が荷主や利用者に転嫁することによる運賃値上げが懸念されており、EC事業者が受ける影響は甚大だ。また、物流・配送周りの自動化・効率化も進んでおり、EC事業者が取り組むべき課題は山積している。EC物流の最新事情や、これからEC事業者が取り組むべき施策について、200社を超えるEC事業者のフルフィルメントに携わってきた筆者(編注:スクロール360 取締役の高山隆司氏)が明かす。
物流最新アイテムがユニクロのレジ待ち行列を解消
精算時間が有人レジの3分の1に! 「RFIDタグ」とは?
最近、ユニクロのレジ待ち行列が少なくなったと感じた方も多いのではないだろうか。これはRFID(Radio Frequency Identifi cation)タグという物流最新アイテムが使われていて、一瞬で商品IDを読み取るシステムが採用されているからだ。今回は店頭から物流現場まで活用されるようになった、このRFIDタグを取り上げてみる。
RFIDタグとは、電波を用いてタグのID情報を非接触で読み取るシステムだ。Suicaよりも電波が遠くに届き、さらに複数点を一括で読み取れるところが秀逸なところだ。このタグを採用することによって、これまで1点1点バーコードで読み取り確認していたものが、一瞬で複数点を読み取ることができるようになった。
ユニクロではセルフレジに商品を投げ込むと、一瞬で商品点数と会計金額が表示される。これによって精算所要時間が有人レジと比較して最大約3分の1に短縮されるという。
店舗:「入荷検品」「レジ精算時間」「棚卸」を省力・短縮
RFIDタグに書き込まれている商品コードにはすべて連番が振ってあり、個品管理になっている。同じ商品(色、柄、サイズも同じ)であっても、リーダーに載せれば1点1点の識別が一瞬で完了する。これにより店舗側には、①商品入荷検品の省力化 ②レジ精算時間の短縮化 ③棚卸時間の短縮化などのメリットが生じる。
以前は、店舗に商品が到着すると1人が納品明細書の商品名を読み、もう1名が商品をカルタ取りしていたことを思うと、夢のような時代が訪れたことになる。
万引き減少にも貢献
そしてもうひとつ「万引き防止」というメリットがある。RFIDのシステムはデータ読み取りに加えてデータの書き込みができる。
商品がレジを通過したときには、「レジ通過番号」が追加で書き込まれる。たとえば、万引きした商品をポケットに隠して持ち出しても、その商品タグに「レジ通過番号」がなければ、店外に出るときに、盗難ブザーが鳴る仕組みだ。これにより、万引きそのものが大幅に減少された。
このように、入荷検収が素早く正確になり、さらに万引きが減ることで、商品の在庫精度が大幅に向上することもメリットだ。
在庫が正確になると、店舗と倉庫の両方から確実な在庫引き当て・正しい発送ができるため、アパレル関係者はRFIDについて、「オムニチャネルには必要不可欠なモノになっている」と口をそろえて言う。
物流倉庫:検品も棚卸も一瞬で可能に
次に物流倉庫側のメリットを見てみよう。弊社(編注:スクロール360)物流センターでもRFIDタグを採用しているクライアントがある。当初は読み取りの感度調整にかなり苦労したが、現在は非常に効力を発揮している。
メーカーから入荷する商品のすべてにRFIDタグが貼付されるため、入荷検収も出荷検品作業も、数十点を一瞬で完了することができる。
ただし、RFIDタグが重なっていると読み取れない時があるため、商品が入った袋やカゴを揺すると、正確に読み取ることができる。そしてRFIDタグは棚卸でも威力を発揮する。1点1点数える必要がないのだ。
現在はまだ、商品タグの重なりなどが障害で、棚の外からのリーダー読み取りでは精度が悪く、ひと棚ごとに棚卸を行っているが、将来は無人の陸走ドローンが夜のうちに倉庫を回って朝には棚卸が完了する日も近いと思っている。
このように最新の物流では商品調達先のRFIDタグ貼付から始まり、物流センターでの入荷~保管(棚卸)~出荷~店舗側の省力化といった「サプライチェーン全体を俯瞰(ふかん)したシステム構築」が重要ということだ。
現在は1枚10円前後と言われるRFIDタグだが、物流倉庫への入荷から出荷、そして店舗での入荷、レジ、棚卸までの人件費を考えると、コストダウンのメリットの方が多いのは明確だ。
今後もますますRFIDタグを活用する店舗が増えていくと感じている。
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