Digital Commerce 360[転載元] 8/1 8:00

Googleが「Chrome」のサードパーティCookieの廃止計画を断念しました。一方で、サードパーティCookieの代替手段となるサービスを開発し、エンドユーザーのプライバシー保護に取り組む方針です。Googleが2020年に発表したサードパーティCookieの利用終了は、開発中の「Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)」(Googleによる、プライバシー保護と広告の効率化を両立できる新技術、サードパーティCookieの代替手段と位置付けている)の新たな方針を発表する前に、2022年から2025年へ延期されていました。

Google、サードパーティCookie廃止計画を断念

Googleによる「Chrome」ブラウザでのサードパーティCookieは、インターネット上のユーザーの行動を追跡し、広告主がユーザーに関連性の高いターゲティング広告を配信できるようにする役割を担っています。

サードパーティCookieの利用終了は度重なる延期の末、2025年に完全に終了することを予定していましたが、GoogleはサードパーティCookie廃止の計画を撤回すると発表しました。

GoogleによるサードパーティCookie廃止に向けた変遷と、計画撤回までの流れ

サードパーティCookieによってユーザーデータを取得し、新規顧客獲得につなげてきた小売事業者を筆頭とする「Chrome」を利用する広告主は、サードパーティCookieの廃止が「Chrome」 の顧客ターゲティング機能にどのように影響し、自分たちに不利益が生じるかを懸念していました。

そんな小売事業者はサードパーティCookieの代替案として、たとえば「リテールメディアネットワークへの広告出稿を通じたユーザーデータ取得」といった手段などを模索してきました。

しかし、Googleの「プライバシーサンドボックス」を担当するアンソニー・チャベス副社長は7月22日、オフィシャルサイトで、「Googleがこれまでの方針を転換しつつある」と説明しました。

Googleが2024年7月22日に発表した声明(画像はGoogle日本法人のサイトから編集部がキャプチャ)
Googleが2024年7月22日に発表した声明(画像はGoogle日本法人のサイトから編集部がキャプチャ)

チャベス氏はWeb上の発表で、次のように記しています。

GoogleはサードパーティCookieを廃止しない代わりに、「Chrome」に新しい機能を導入し、Webブラウジング全体に適用される情報をユーザーが選択ができるようにします。その選択は、ユーザーはいつでも変更可能です。この新しい方法については、Web上のプライバシー規制を警鐘している当局と共に議論しており、新機能を展開する際には業界全体と協調していきます。(チャベス氏)

Cookieに代わる「プライバシーサンドボックス」を立ち上げ

Googleは誰もが使用・閲覧できるオープンなWebにおけるユーザーのプライバシーを保護するために、「プライバシーサンドボックス」の開発を計画していました。声明を発表した7月22日まで、「プライバシーサンドボックス」のビジョンのなかにはサードパーティCookieは含まれていませんでした。

Googleの「プライバシーサンドボックス」チームは、プライバシー保護を重視する業界の有識者や政府の知識人と協力し、「プライバシーサンドボックス」の採用をサードパーティCookieに代わる新しい解決策として推し進めてきました。

サードパーティCookieに代わるサービスの提供に向けたプロセスでは、英国の競争・市場庁(CMA)や情報コミッショナー事務局(ICO)のような規制当局、出版社、Web開発者、標準化団体、市民社会、広告業界など、さまざまな利害関係者からフィードバックがありました。

これらのフィードバックは、Googleと広告主が望む、競争力がある市場を実現しつつ、ユーザーのプライバシー保護を強化する技術「プライバシーサンドボックス」の採用を推し進めることに役立ちました。(アンソニー氏)

Googleはプライバシー保護の強化を推進

Googleは最終的に、「Chrome」内で「プライバシーサンドボックス」を実装しながら、サードパーティCookieの廃止を進めないことが望ましいと判断しました。

サードパーティCookieの廃止は当初、2020年の発表後に検討が始まり、検討初期は2022年には完全に廃止することをめざしていました。2024年4月、GoogleはCMAがサードパーティCookieの提案を検討する必要があること、また「業界、規制当局、開発者からの多様なフィードバックを調整するための継続的な課題」があることを認め、サードパーティCookieの廃止期限を2025年まで延期していました。

サードパーティCookieの廃止が中止になったとしても、開発者にとってプライバシーを保護する代替手段を持つことが重要であることに変わりはありません。Googleは広告主が「プライバシーサンドボックス」APIを利用できるようにし続け、プライバシーと実用性をさらに向上させるために投資していきます。

また、エンドユーザーにさらなるプライバシー保護の選択権を提供するため、IPアドレスの保護を「Chrome」のシークレットモードにも導入する予定です(アンソニー氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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