通販新聞[転載元] 9/5 7:00

「紅麹」による健康被害問題で、小林製薬は、厚生労働省に報告する死亡との関連性を調査する対象事例数に誤りがあったと公表した。8月19日、同社は補償の受け付けを開始。報告漏れを公表した会見で、山根聡社長は、「補償をやり切ることが大前提。正確な内容の把握の基盤になる」と、体制を強化する方針を示した。

健康被害の報告漏れ11件

原因はオペレーターのチェック漏れ

補償対応に向けデータベースを改めて検証するなかで、担当者が8月8日に可能性を確認した。同日、山根社長も確認。翌9日、集計数に齟齬があることを知った。同13日に会見で公表した。

報告漏れは、今年3~7月に寄せられた11件。同社の紅麹関連製品を摂取していないことが確認されたのは5件、医師への詳細調査を進めるのが4件、製品摂取の有無の精査中が2件あった。

この件数を加え、厚生労働省に報告する死亡の申し出件数は356件になる(8月8日時点)。製品摂取の確認中は3件、詳細調査中が113件、調査完了は22件(同)。

顧客からの申し出は、健康被害情報、解約など複数の項目に分類して記録している。オペレーターによるチェックに漏れがあり、遺族の問い合わせを受け、定期解約や返品の申し出した中に、健康被害情報が含まれているものがあった。健康被害情報は、「飲んでいたかもしれない」など、可能性を否定できない事例を広く収集していた。

相次ぐ報告遅延、報告漏れ

小林製薬は、再発防止に向け、「システムやルールの設定と徹底、人員体制の拡充を進める」(山根社長)としている。

8月19日には、紅麹関連製品の健康被害に対する補償の受け付けを始めた。調査完了は22人(8月8日時点)。いずれも「因果関係の有無は調査中だが、一定数。積極的に関係性が認められるものは確認されていない」(渡邊淳信頼性保証本部本部長)とする。

製品から検出された「プベルル酸」のほか、2つの化合物の検証結果が確定していないことも、因果関係を確定できない一因になっている。主治医による詳細調査も加え、対応を決める。

健康被害問題では、今年3月の製品回収の公表の報告遅延のほか、6月には、死亡の疑いのある事例数の報告遅延があった。小林製薬は、腎障害に絞り死亡例を調査し、がんなどの死亡例は報告しなかった。7月には、原料供給先の報告漏れが見つかった。

信頼回復に向け、ルール徹底+人員拡充を強化

小林製薬の山根聡社長
小林製薬の山根聡社長

小林製薬は、「紅麹」の健康被害問題で、厚生労働省への調査対象数の報告漏れが発覚した。正確・迅速な情報の把握に向け、人員体制の強化を図っていく。8月13日の会見で、同社の対応を聞いた。

――度重なる報告遅延や報告漏れをどう改善する。

山根聡社長(以下敬称略):大混乱のなかで人員体制が追い付かず、徹底できていなかった。再発防止に向け、ルールの徹底と人員拡充を図る。

――人員体制に加え、コールセンターにおける情報管理強化に向けた取り組みはあるか。

渡邊淳信頼性保証本部本部長(同):各オペレーターの判断のぶれがあった。ダブルチェックも一つの方法。オペレーターがどのような点でばらつきに悩むか、ルール化や教育も必要に思う。

山根今回の件では学びが多くあったが、それをきちんと見える化し、周知徹底していくことだと思う。

品質や安全を徹底し、取り組みは開示

――8月8日開催の取締役会で、紅麹事業からの撤退を決めたが、それ以外の健康食品等の販売は続ける。事業継続に向け、業界、消費者に向けてどのような取り組みが必要と考えているか。

山根2つある。1つはモノづくりについて、社内外に向けて品質・安全の徹底などポリシーを実践していくこと。もう一つは、その取り組みを積極的に開示していくことだと思う。

――製薬業界では「医薬品副作用被害救済制度」がある。健食で同社独自の取り組みとして想定していることはあるか。

山根現時点で明確に答えられないが、今後、検討したいと私は考えている。

――製品回収の状況は。

渡邊:9割台まできている。

――信頼回復に向けた取り組みの検討の過程においても健康食品の販売など事業は継続する認識か。

山根そう考えている。

――国内は、紅麹の健康被害問題の発生以後、全製品の広告を停止している。再開のタイミングはどう考えている。

山根:少なくとも年内は停止と考えている。

――海外は広告展開しているか。

山根エリアにより再開しているところもある。

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