通販40年間の変遷とターニングポイント+現在の業界が抱える懸念とは? JADMA粟野会長が語る
日本通信販売協会(JADMA)は1983年に設立し、今年で40周年を迎えた。通販チャネルは社会インフラとして成長する一方、市場規模の拡大や技術革新に合わせてさまざまな規制の対象となってきた。直近でも法改正が相次いでおり、JADMAが果たす役割も高まっている。約3年前に第14代会長に就任した、高島屋参与(現ジェイアール東海高島屋社長)の粟野光章氏に、通販の歴史やJADMAの取り組みなどを聞いた。
粟野会長と振り返る通販市場の変遷
1970~80年代、通販の定着進む
――この40年の通販市場においてターニングポイントとなった出来事は。
国内で通販が盛んになってきたのは70~80年代だ。JADMAがスタートしたのも83年で、その頃の通販は「安かろう悪かろう」のイメージがあって、マスコミからの取材も消費者トラブルに関することが多かったと聞いている。ただ、実際には大半の消費者が賢く通販を利用していたし、女性の社会進出が加速したこともあり、買い物の手段として通販は定着していった。
通販がおしゃれで賢い買い物の仕方として脚光を浴びるようになったのは、「すてきな奥さん」や「LEE」といった女性向けの雑誌でカタログ通販が取り上げられるようになったことや、百貨店はもちろん、商社などの大手企業が通販市場に参入したことで、業界の信頼感が増したこともあげられる。
当時は百貨店も通販に相当力を注いでいて、高島屋の通信販売事業本部(当時)の売上高は今よりも大きかった。JADMAの二代目の会長も高島屋の綾元文元専務が務めさせてもらった。
2000年以降、インターネットが普及拡大
――その後についてはどうか。
70~80年代が現代における通販の草創期とすると、その後の変化として一番大きいのは何と言ってもインターネットの登場と普及で、通販市場へのインパクトは大きかった。2000年代に入ると楽天(現楽天グループ)やヤフー(現LINEヤフー)などのECモールが力をつけ始めた。
その後は、スマートフォンの普及によって消費者はより手軽に通販で買い物ができるようになり、17年にはスマホからの注文がパソコンからの注文を上回った。19年には国内のインターネット広告費が初めてテレビの広告費を抜いた。この40年の間に技術的な進歩が通販業界にとっても大きな影響を与えたことは間違いない。
コロナ禍では社会インフラとして急成長
――コロナ禍で通販チャネルの重要性がさらに高まった。
それまでも、通販市場は平均して年率約8%成長を遂げてきたが、コロナ禍1年目の20年は20.1%成長となった。外出がままならない中で通販の利便性に改めて注目が集まったし、社会インフラとしての役割を果たした。コロナ禍では初めて通販を利用する人や、通販に参入する企業も増えた。
21年は前年の高成長もあって伸び率は7.8%だったが、22年は10.9%成長と好調を維持し、通販業界にとっては大きなターニングポイントになった。
懸念は「過度な広告表現」「悪質プレーヤーの増加」
――コロナ禍で通販プレーヤーが増えたことによる懸念材料は。
メリットもデメリットもある。メリットとしては、競争の原理が働くので、より良い商品が生まれてくる。消費者にとっては選択の幅が広がるし、比較購買できる。
その裏返しもあって、選択肢が広がることで絞り切れなくなるし、一部のプレーヤーは消費者に選ばれようとして過度な表現の広告に走ってしまうといった怖さもある。
また、ECチャネルは通販参入のハードルが低いので、悪いことを考える人も簡単に入ってきてしまうというデメリットがある。EC以前の通販であれば自社でカタログを出したり、各種媒体に広告を掲載したりと、ある程度の資本力が必要だったし、媒体社の審査や代理店を通すことで“足跡”が残るため、プレーヤーが何者かがわかった。ネット上では姿を消してしまうと追跡できない危険性がある。とはいえ、陰の部分にスポットが当たりがちだが、実際にはまっとうなプレーヤーがほとんどだ。
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