通販新聞[転載元] 7:00

ジャパネットグループが長崎市内に建設したスタジアムを中心にアリーナやホテル、商業施設、オフィスなどからなる大型施設「長崎スタジアムシティ」が10月14日に開業した。長崎スタジアムシティの建設・運営は地域創生事業の一環として手掛けているが、主力の通販事業とシナジーを生み出す仕掛けも施されており、注目される。通販の雄、ジャパネットグループが作り上げた「長崎スタジアムシティ」の全貌とは――。

スタジアム、ホテル、商業施設、オフィスビルまで擁する大型複合施設

「長崎スタジアムシティ」は長崎市内を流れる浦上川沿いに建つ「V・ファーレン長崎」がホームとしても使用するスタジアム「PEACE STADIUM」を中心に多機能・可変型のアリーナ「HAPPINESS ARENA」、眼下にスタジアムが広がるホテル「スタジアムシティホテル長崎」、商業施設などが入る「スタジアムシティSOUTH」、オフィスビルの「スタジアムシティNORTH」の主に5つからなる複合施設だ。

来場者が楽しめる施設やアクティビティを多数展開

軸となるのはスタジアムやアリーナだろうが、「長崎スタジアムシティ」にはジャパネットグループのジャパネットウォーターが施設内で醸造したビールを提供する店や温泉・サウナが楽しめる温浴施設、長崎の町を見ながら無料で利用できる足湯、スタジアムを縦断するジップラインなどなど来場者にとって魅力的なさまざまな施設、アクティビティがさまざまある。

通販とのシナジーを生み出すジャパネット唯一の実店舗

そうした施設の1つとして出店しているのがジャパネットたかたで取り扱う商品を展示、販売する実店舗「ジャパレクラボ」。今夏まで福岡市内の商業施設に出店していたが同施設閉鎖に伴い、長崎スタジアムシティに移転させた店舗で現状、同社唯一の実店舗となる。

ジャパネットたかたで唯一の実店舗「ジャパレクラボ」
ジャパネットたかたで唯一の実店舗「ジャパレクラボ」

広さ約330平方メートルの店内ではテレビ通販などで販売する大型テレビや掃除機、炊飯器、羽毛布団などの売れ筋や一部アウトレット品のほか、「スタジアムシティホテル長崎」の客室で使用している寝具やアメニティなどの備品な70~80点の商品を展示。「利益還元祭」などジャパネットたかたが全社的に実施するセール期間中は対象商品なども展示するという。

気に入った商品は来店者がその場で購入し持ち帰ることができる
気に入った商品は来店者がその場で購入し持ち帰ることができる

来店者は展示している商品を実際に手に取って、店員に質問しながら商品の性能などを確かめた上で購入を検討できる。

その場で購入可能

いわゆるショールーミング店とは異なり、持ち帰ることができる小型商品については店内で在庫しており、来店者は気に入った商品があればその場で購入して持ち帰ることもできる。テレビや布団など持ち帰りが困難な大型商品は在庫しておらず、注文を受け付けて顧客宅に配送する手続きを行う。

実演や体験コーナーも充実

商品の展示のほか、調理家電を使った実演ができるようキッチンコーナーを設けたり、ジャパネットで売れ筋の高圧洗浄機「ケルヒャー」を使って汚れ落としが体験できる高圧洗浄機コーナー、来店者が記念撮影するなどして楽しめるテレビ通販番組収録の疑似体験ができるスタジオ体験スペースなども設けている。

顧客の反応を商品改善・開発に生かす

「ジャパレクラボ」の目的について「(通販ではできない)商品を実際に手に取って確かめてから購入することができる場を設けたいということも1つだが直接、お客さまと触れ合える貴重な場でお客さまの『生の声』を集めたい。店内で商品をお試し頂いたり、購入頂いたお客さまに、アンケートやインタビューをして許可を頂いた上でテレビショッピングや通販カタログに『お客様の声』を掲載させて頂くほか、たとえば『こういうところが使いにくい』など接客時にお客さまに伺った内容を吸い上げて商品の改善や開発に生かしている

チラシも制作チームに顧客の声をフィードバック

また、たとえば過去に作った2パターンの新聞折込チラシを見て頂き、どちらが見やすいかと伺い、チラシの制作チームにフィードバックして、よりよいチラシ作りに役立てていく取り組みなども行う」(全社商材企画戦略部ジャパレクラボ企画運営課店舗グループの豊村和矢氏)という。

「ジャパレクラボ」は顧客の生の声を聞ける場

「ジャパレクラボ」の運営は福岡にあった前店舗が開業した2016年9月から8年目。「店舗運営や接客、目的であるお客さまのご意見の収集方法についてもある程度、ノウハウを蓄積していた。新店舗でも経験を生かして、店舗独自の販促を含めてより効果的な店舗運営を行ってきたい」(同)とする。

通販番組で気になる商品を直接、確かめる術がなかった顧客にとっても、顧客の生の声を収集して媒体や商品の改善などに役立てたいジャパネットにとっても「ジャパレクラボ」は有用と言え、通販事業とのシナジーが期待できそうだ。

寝具からアメニティまで顧客が試用できるホテルステイ

顧客は気に入った備品を購入できる

通販事業とのシナジーという意味でもう1つ注目したい施設が「スタジアムシティホテル長崎」だ。

「スタジアムシティホテル長崎」の客室の一例
「スタジアムシティホテル長崎」の客室の一例

客室の備品にはジャパネットたかたで販売している商品を多く採用。たとえば、寝具ではマットレスは「エアウィーブ」、布団は西川の羽毛布団を使用している。

このほか、シャープの液晶テレビ、ダイソンのヘアドライヤー、アテックスの足用マッサージ器、アルインコの首用マッサージ器、アイリスオーヤマのデスクライト、パナソニックの衣類スチーマー、オムロンの血圧計、アラミックのシャワーヘッドなどが備え付けられている。

備品を使って気に入った宿泊客はこれらすべてを購入することができる。なお、ホテルオリジナルのシャンプーやトリートメント、ボディソープなども購入可能だ。

客室内のテレビから備品のECに誘導

備品を購入したい宿泊客は客室にあるテレビを操作すると「ホテル案内」というコンテンツが表示され、同画面上のQRコードをスマートフォンなどで読み取ることで専用通販サイトに遷移、当該商品の特徴などを見ながらネット販売で購入できるもの。

客室内のテレビで表示される「ホテル案内」から専用通販サイトに遷移する
客室内のテレビで表示される「ホテル案内」から専用通販サイトに遷移する

通販のほか、これらの備品は前述の「ジャパレクラボ」でも展示、販売しており、そこですぐに購入することもできる

ジャパネットたかたが取り扱う売れ筋商品などをホテルの備品とすることで、「実際に体験してもらい、商品の良さを実感して頂きたい」(同社)とし、同社の通販利用に入り口としたい狙いもあるようだ。

通販事業との連携を推進

「長崎スタジアムシティ」は通販事業とは別の地域創生事業の一環として運営していくが、「ジャパレクラボ」や「スタジアムシティホテル長崎」などで行う通販と連動した取り組みのほか、今後はスタジアムシティで行うコンサートやホテル宿泊などをツアーに組み込んだ旅行をジャパネットたかたの通販で販売していくなど通販事業との連携も推進していく考え。

主力事業の通販とも連携させながら、今後も継続的に「長崎スタジアムシティ」を盛り立てて事業面で成功に導くことができるか。通販の雄、ジャパネットの新たな挑戦が始まった。

髙田旭人社長に聞く「長崎スタジアムシティ」活用の展望

ジャパネットグループが長崎市内に建設した大型複合施設「長崎スタジアムシティ」が10月14日に開業を迎えた。ジャパネットグループを率いる髙田旭人社長に「長崎スタジアムシティ」の開業に向けた思いとこれからについて聞いた。(同日開催の会見での本紙記者を含む報道陣との一問一答から要約・抜粋)

ジャパネットホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO 髙田旭人氏
ジャパネットホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO 髙田旭人氏

――長崎スタジアムシティが開業した。今の思いは。

昨日(※編注:10月13日)の(福山雅治さんのこけら落としの)ライブでは多くの皆さんに楽しんで頂き、共有できたことが本当にうれしかった。皆さんが「ここに毎日行きたい」と思える仕掛けをたくさん重ね、人々が集まり、楽しく喜びをシェアする場所を作っていきたい。

――長崎スタジアムシティの魅力は。

“非日常”の体験については、スタジアムやアリーナで行われるサッカーの試合やコンサートで味わって頂きたいが、“日常”の体験についてもさまざまな施設で楽しめると思う。

レストランは高級なところからリーズナブルなところまでさまざまあり、テナントに入って頂く店舗にもこだわって本当においしいところばかりだ。我々の直営のレストランもたくさんあり、優れた人材も多く入って頂き、私も料理を食べたが本当においしい。

商業施設では(スタジアムの上を縦断する)ジップライン、温泉やサウナが楽しめる「YUKULU」という温浴施設も素晴らしい。

これから屋内型スポーツアクティビティ「VS STADIUM NAGASAKI」という子供たちが楽しくなるような場所もできていく。

また、スタジアムの座席に座って(※スタジアムの座席は無料開放する)ゆっくりしたり、(商業施設にある棟の)最上階に設けた足湯に入ったりとか、何かを買わなくとも楽しめる

フットサル場やバスケットボール用の3×3コートもあり、皆さんに楽しんで頂ける本当によい場所だと思う。

――ジャパネットグループが「長崎スタジアムシティ」の運営を行う理由や意義は。

(地元である)長崎のためのチャレンジで長崎でなければ、1000億円という大きな投資は行わなかったと思う。だからこそ、しっかりと黒字化して持続可能な事業にしないと意味がない。民間企業がきちんとビジネスとして地域の方に感動を届けるということを成功させることこそ我々の意義だ。

長崎というのは日本の地方都市が持つ良さや課題を含めて縮図となっている。その場所でやっていくことが先々、全国(の地域創生事業)にとって意味が出てくると思う。

ジャパネットは計算して収益が上がるから行うというよりも、よいと思ったら踏み込んでやってみて、よいことをやり続ければ収益もついてくるという考え方で、あらゆるビジネスをやってる会社だ。

これは父の代から守っていることだが、そういう意味では昨日、今日と皆さんを見て、我々がやっていることがいかに人を幸せにするかということを感じられたので、それを健全な形で持続的にビジネスとして成り立たせることにもこれから力を入れていく。

――「長崎スタジアムシティ」の今後の展望は。

持続可能にする、感動を生み続けるということの成功確率を高めないといけない。そのためのアイデアと仕掛けはまだまだある。我々のグループは旅行業も持っており、スタジアムシティを含めた長崎の旅を販売することも行う予定だ。

先日、ゆこゆこというオンライン旅行サービスを行う会社をM&Aさせて頂いたが、そのなかで長崎を中心とした温泉宿をもっともっと訴求していったり、来年1月には我々が行っているBS放送がチャンネルの引越しして、リモコンでBSの10ボタン押すと番組が見られるようになる。

そこでの番組を通じてもさらに全国の方々にスタジアムシティや長崎のよさを知っていただく機会をこれまで以上に増やしていけると思う。

また、たとえば、音楽イベントに関しても長崎スタジアムシティでコンサートをするだけではなくて、音楽番組を放送することができれば、そこでコストを吸収でき通常では呼ぶことができないミュージシャンを呼べるかもしれない。グループ内のあらゆるリソースを使って、また必要であれば新たな取り組みも重ねていきたい。

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