カリスマ引退後の“新生ジャパネットたかた”が描く未来、髙田明氏と旭人氏の新旧社長が語る
ジャパネットたかたは1月16日付で、社長人事を行い、創業者の髙田明氏に変わり、長男で副社長の髙田旭人氏が新社長に就任した。同時に組織体制を大幅に変更。販売を行う「ジャパネットたかた」と受注を担う「ジャパネットコミュニケーションズ」という既存のグループ2社と広告代理業務を行う「ジャパネットメディアクリエーション」、物流業務を行う「ジャパネットロジスティクス」、修理・アフターサービス業務を担う「ジャパネットサービスパートナーズ」を加えた5つの事業会社と、それら会社の管理系業務を担う持ち株会社「ジャパネットホールディングス」という6社による新たな事業遂行体制となり、次のステージに向け、動き始めた。“新生ジャパネット”の今後や想いなどについて新旧社長が語った。(1月16日開催の会見での本紙を含む報道陣との一問一答より抜粋・要約)
次世代にバトン渡す
――長男で副社長の髙田旭人氏が新社長となり、社長を退任したが今の心境はどうか。
髙田明前社長(以下、明氏)「私は29年間、ジャパネットたかたの代表取締役を務めてきたが、今日で無事に私の役目を終えることができた。すっきりしている。小さなカメラ屋からスタートし、ラジオやテレビでの通信販売を始め、チラシやカタログの制作やインターネット通販など時代に合わせてメディアミックスを進めながら、お客様のことを第一に考えた、“お客様目線”を心掛け、それを追求し続けてきたが、この29年は長かったと言えば長かったが、あっという間という感じもする。当社の“お客様目線”はまだまだ完璧とは言えない。その追及はこれからずっと続いていく事業の中で、実現されていくものだと思っており、私は現在、66歳になったが、60歳を過ぎたあたりから真剣に若い世代にどうやってバトンを渡していくか、を考え続けてきた。長男の旭人とは約10年間、一緒にやってきて、彼の姿勢を見てきたし、様々な議論を戦わせてきた。その中で『彼であればバトンを託せるかな』と自信を持った。そして、(社長交代を)決断した。私は37歳で社長になったが、当時は小さなカメラ屋で従業員も女房とパートさんが2、3人の規模だった。しかし、現在では皆様に大きくして頂いた。この規模の企業を35歳という年齢で引き継ぐのは、私の決断以上に、大変な決断が必要だったと思う。しかし、『やれる』と自信を持って決断してくれた。“お客様目線”という私がずっと追い続けてきた部分を、一段と充実させて、皆様から必要される企業になるようますます精進して行ってもらいたい」
――社長退任後の去就は。
明氏「経営には一切、タッチしない。会長や顧問、相談役などにもならずに退社する。私はラジオやテレビに出演していることもあり、目立ちすぎる。もし私が社内に残れば、私の影響力が残ってしまい、新社長が思い切ったことが出来なくなるかもしれない。これからは彼らの勝負だ。私は見守りたい。ただ、テレビやラジオ(通販番組へ)の出演は少しだけ続けようと思う。特にテレビは当社の中でも核となる部分でもあり、1年をメドにできるだけ出演回数は減らしながら皆にもう少し自分の経験を伝えたり、アドバイスができればと考えている。また、プライベートの予定は定かではないが、個人的な会社を作った。社名は『株式会社AandLive』だ。『A』は私の名前である『明(あきら)』のAだ。『明は生きていますよ』という意味だ(笑)。私はいつも素晴らしい商品を発掘し、伝えていきたいと思っていたが、時間に追われ、これまではできなかった。全国を歩き、色々な優れた商品を発掘し、『AandLive』を通じて、“新生ジャパネット”に提供するようなこともできればという想いもある」
――社長に就任したが今後の方針は。
髙田旭人新社長(以下、旭人氏)「(いずれは社長になると)意識はしていたものの、思ったより早いタイミングでこういう立場になり、身の引き締まる思いだ。創業からの“理念”を大切にしつつ、お客様を幸せにするということを精一杯、全社を挙げてやっていきたい」
――"理念"とは。
旭人氏「大切にしたい理念はたくさんあるが、例えば『お客様に対して、商品を売る』という感覚を父も私も、また、大半の社員もあまり持っていない。やはり、商品は使って頂けなければ意味がないと思っているためだ。そのため、商品をとりあえず買ってもらうための“きれいごと”を言う販売の仕方は絶対にやらないし、商品選びについても、作り手側が単価をあげたいから、実際には使われない機能をつけているなと感じた場合には、例えば前のモデルで安い方がお客様は喜ばれるのではないかと判断をしてそれらを販売する形を採っている。お客様が求めることをとことん追求することで、世の中を幸せにしていきたい」
――新社長としての具体的な今後の方針は。
旭人氏「私は『ジャパネットたかた』は世の中にある隠れた良いモノを見つけ出し、また、本当にお客様が求められているものを目利きし、整え、それを伝えていくということで成長してこられた会社だと思っている。そのジャパネットたかたをより強くするために、今回、組織体制を変え、『ジャパネットたかた』と受注を担う『ジャパネットコミュニケーションズ』、広告代理業務を行う『ジャパネットメディアクリエーション』、物流業務を行う『ジャパネットロジスティクス』、修理・アフターサービス業務を担う『ジャパネットサービスパートナーズ』と業務ごとに事業会社化した5社とそれら会社の管理系業務を担う持ち株会社『ジャパネットホールディングス』による6社によるホールディングス(HD)制にした。それぞれの業務でプロとなり、ジャパネットたかたのお客様に今まで以上に感動して頂けるような会社に極めていきたい」
――各業務を別会社化してHD体制を敷いた具体的な狙いやメリットは。
旭人氏「社員にそれぞれの部門でプロになって欲しいという狙いが大きい。また、幹部人材の積極的な登用や育成という狙いもある。ジャパネットたかたの役員は増やしにくいが、各事業会社であれば若手や外部からの役員の登用もしやすいためだ」
――修理やアフターサービスを行う『ジャパネットサービスパートナーズ』は中でも目を引くが、新設した理由は。
旭人氏「この部分はジャパネットとして極めていきたいところだ。商品に関する問い合わせなどの電話を受けるチームと商品の修理や整備を行うチームを一緒にして、当社で購入頂いたお客様の問題をすべてスピーディーにクリアにすることを目指したいという想いで設立した。組織を電話対応と修理というチームに分けるのではなく、カテゴリ単位に分けた。例えば掃除機の担当、デジタル家電の担当という形にだ。その中で修理中心のメンバーと電話対応中心のメンバーがクロスしながら業務を行うような運用を考えている。要はお客様からの電話に対応した人が修理のこともわかるようにしたい。そうすれば電話の問い合わせ段階で、わざわざ商品を送ってもらわなくても言葉でお伝えすれば治るものもたくさん見つけられると思っている。そうなればお客様の満足度も高まるはずだ」
――ジャパネットの"顔"である髙田明氏が通販番組からいなくなることによる影響は。
旭人氏「影響はもちろんあるだろう。髙田明という個人から、ジャパネットという会社で買うというという風に切り替えてもらうための必殺技みたいなものがあれば知りたいが、それはない。真摯に丁寧に父がやってきたことをみんなで一緒になってやっていくしかない。今日から『髙田明ではなく、会社から買う』と切り替わる瞬間はないと思うが、父には悪いが、2~3年後には父が抜けても大丈夫だなと思って頂けるようにしていきたい。ただ、私としてはMCとしての父の凄さよりも経営者としての凄さを感じることが実は多い。お客様への想いやサービスへの想い、アイデア、情熱などの方が凄いと思っている。やってみなければわからないが、そうしたジャパネットの大切なところは、私と社員みなでカバーできるのではないかと思う」
明氏「髙田明がいなくなっても、お客様はジャパネットから購入下さると思う。しかし、そのためにはジャパネットの品質とサービス体制を強くしなければいけない。その一念で新社長は新体制を作ったのだと思う。例えば、新設した『ジャパネットサービスパートナーズ』だが、『ジャパネットは売る時は良いことを言っているが、その後はね...』ということを極力なくすべく、お客様の満足度をどう最高レベルまで持って行けるかを私は常に考えてきたがそれを継承して、さらに強化していこうという形を具現化したものが『ジャパネットサービスパートナーズ』だと思う。また、同じく新設した『ジャパネットロジスティクス』を通じて、12月に2度、関東圏のお客様を対象に『当日配送』を行ったが非常に反応は良かった。私が考えていなかったことも考え、チャレンジしていって欲しいと思っている。新生ジャパネットの今後が楽しみだ」
――その当日配送の結果は。
旭人氏「12月22日と24日の2日間、テレビ東京の朝帯の番組で関東圏の1都7県を対象に、当日午前10時半までに受注分を対象に初めて『当日配送』を行った。時期的にクリスマスや大掃除の時期だったため、玩具(※「おしゃべりいっぱい!タッチであそぼ!アンパンマンはじめてEnglish」)と家庭用高圧洗浄機で行ったが、通常より4~5割くらいの多くの注文を頂いたという感覚だ。想像以上に『当日届く』ということの価値はあるのかなと感じた。当日配送を恒常的にやっていくのかは『ジャパネットロジスティクス』のメンバーと一緒に考えていきたい」
――新生ジャパネットしては、初年度となる今期(2015年12月期)の目標は。
旭人氏「売上高の目標は1650億円(前期は1538億円)だ。経常利益に関しては今回、HD制となり、グループ間取引が始まることなどもあり、ジャパネットたかた単体でのコストの考え方がどういう風になるのか正直やってみないと分からないところがあり、何とも言えないが、180億円(同174億円)という目標を立てている。前社長が抜けるという大きな変化はあるが、社員全員でそれを乗り越えて必ず増収増益を達成したいと思っている。本当にやりたいことはたくさんある。新生ジャパネットが早くこういうものなのかと皆様に分かる形にしていきたい」
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