瀧川 正実 2021/1/6 11:00

小売店舗で衣服販売業を営んでいたところ、コロナの影響による売上減少を契機に店舗を縮小し、ネット販売事業やサブスクサービス事業に業態を転換――。政府は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で新規事業への進出、業態展開、事業再編などを進める中小企業に対する補助事業「中小企業等事業再構築促進事業」を始める。

2020年12月15日に閣議決定された令和2年度第3次補正予算案に盛り込まれており、2021年1月の通常国会で予算案が承認された後、「中小企業等事業再構築促進事業」の詳細が公表される見通し。予算案額は1兆1485億円。

「中小企業等事業再構築促進事業」は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、需要や売り上げの回復が難い中、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するために中小企業などの事業再構築を支援する制度。

新規事業分野への進出、業態転換、事業・業種転換、事業再編などを通じた業再構築に意欲を有する中小企業の挑戦を支援するという。特に中堅企業へと成長する中小企業については補助上限を最大1億円に引き上げて支援を重点強化する。

政府は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で新規事業への進出、業態展開、事業再編などを進める中小企業の補助事業「中小企業等事業再構築促進事業」を始める
「中小企業等事業再構築促進事業」について(画像は中小企業庁の公表資料からキャプチャ)

事業再構築の想定イメージ

  • 小売店舗による衣服販売業を営んでいたところ、コロナの影響で売り上げが減少したことを契機に店舗を縮小し、ネット販売事業やサブスクサービス事業に業態を転換
  • レストラン経営をしていたところ、コロナの影響で客足が減り、売り上げが減少。店舗での営業を廃止し、オンライン専用の注文サービスを新たに開始し、宅配や持ち帰りの需要に対応
  • ガソリン車の部品を製造している事業者が、コロナ危機を契機に従来のサプライチェーンが変化する可能性がある中、今後の需要拡大が見込まれるEVや蓄電池に必要な特殊部品の製造に着手、生産に必要な専用設備を導入
  • 航空機部品を製造している事業者が、コロナの影響で需要が激減したため、当該事業の圧縮・関連設備の廃棄を行い、新たな設備を導入してロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に立上げ

補助対象要件

  • 申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業など
  • 自社の強みや経営資源(ヒト/モノなど)を生かしつつ、経産省が示す「事業再構築指針」に沿った事業計画を認定支援機関などと策定した中小企業など
    ※「事業再構築指針」は現在のところ公表されていない
  • 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、または従業員1人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成

補助金額・補助率

政府は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で新規事業への進出、業態展開、事業再編などを進める中小企業の補助事業「中小企業等事業再構築促進事業」を始める
補助金額と補助率について(経産省の資料からキャプチャ)
  • ※1. 中小企業(卒業枠)について
    • 400社限定。計画期間内に、①組織再編②新規設備投資③グローバル展開――のいずれかにより、資本金または従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠
  • ※2. 中堅企業(グローバルV字回復枠)について
    • 100社限定。以下の要件を全て満たす中堅企業向けの特別枠。
      • 直前6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、15%以上減少している中堅企業
      • 事業終了後3~5年で、付加価値額または従業員1人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成すること
      • グローバル展開を果たす事業であること

補助対象経費の例

  • 建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計など)、研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展など)などが補助対象経費
    ※補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費は補助対象外

店舗を縮小してネット通販を始める場合、店舗縮小にかかる店舗改修の費用、新規オンラインサービス導入にかかるシステム構築の費用など。レストランが店舗営業を廃止しオンラインサービスを始める場合、店舗縮小に関する建物改修の費用、新規サービスに関する機器導入費やコウコク宣伝のための費用などが対象になる。

◇◇◇

「中小企業等事業再構築促進事業」は、事業者側と認定支援機関、金融機関が共同で事業計画を策定。事業者と支援機関、金融機関が連携し一体となって事業再構築に取り組むことを求めている。

担当は中小企業庁 経営支援部 技術・経営革新課(Tel03-3501-1816)。

公募開始時期や対象業種については未定。申請にはjGrants(電子申請システム)での受付を予定しており、補助金申請には「gBizIDプライムアカウント」が必要となる。

認定支援機関は、中小企業庁のホームページの「経営革新等支援機関認定一覧」を参照。

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