ジャパネット、ツインバードへのTOBを取り下げ。髙田旭人社長の「当社見解のお知らせ」で記した公開買付の経緯、買収への思いとは

ジャパネットホールディングスは9月2日、ツインバードへのTOB提案を取り下げた。公表した「当社見解のお知らせ」では、シナジー算出に必要な情報が十分に得られないなかでも、30億円分の発注通知書や売上高約40%伸長の初期試算を示し、対話を尽くしてきたと説明している。

鳥栖 剛[執筆]

9月3日 8:30

ジャパネットホールディングスは9月2日、ツインバードに対するTOB(株式公開買い付け)提案を取り下げると発表した。髙田旭人社長名義の「当社見解のお知らせ」では、8月31日にツインバードが反対意見を表明したことを受け、その結果を「真摯に受け止め」、6月19日に公表したTOB開始予定の内容通り、提案を取り下げると説明した。

ジャパネットは当初、ツインバード取締役会の賛同を前提条件とし、賛同が得られない場合や10月30日までに意見表明がない場合はTOBを実施しない方針を示していた。

ジャパネットは、ツインバードを完全子会社化することで、販売から製造、アフターサービスまでを一体化する「製販垂直統合モデル」の構築をめざしていた。単なる買収ではなく、自社の販売力とツインバードの技術力を掛け合わせ、燕三条のものづくりやツインバードの成長戦略も尊重しながら企業価値を高めたいという考えだった。

一方、ツインバードは量販店チャネルへの影響やブランド毀損、BtoB事業の停滞、人材流出、燕三条のモノづくり基盤への影響などを理由に反対を決議しており、両社の見解は最後まで一致しなかった。

ジャパネット、ツインバードへのTOBを取り下げ。「当社見解のお知らせ」で記した公開買付の経緯、買収への思いとは
ジャパネットが当初描いていたツインバードTOBの意義(画像はジャパネットHDの公表資料から編集部がキャプチャ)

ジャパネットはあらゆる面で「真摯に回答してきた」と主張

ジャパネットは、6月19日にTOB開始予定を公表した理由について、インサイダー情報の状態を解消しつつ、株主、取引先、従業員を含むステークホルダーと広く対話できる環境を整え、透明性の高いプロセスで検討を進めるためだったと説明している。

7月9日には秘密保持に関する確認書を締結。その前後で、ツインバードや特別委員会との間で複数回にわたり書簡ベースの質疑応答を重ねたという。ジャパネットは、取引の目的やシナジー、非公開化後の経営体制、従業員の処遇などについて真摯(しんし)に回答してきたと強調する。

必要な情報が得られないなかでもシナジーを具体的に説明

ジャパネットは、ツインバード側からシナジーの定量化を求められていた一方で、製品カテゴリー別の売上高・粗利益・営業利益、原価構成、部材調達先、BtoB事業の主要顧客リストなど、検証に必要な詳細情報は共有されなかったと主張している。

それでも、過去の販売実績データ、ブランド・型番のすみ分け、価格統制、生産能力拡充に向けた設備投資案などを示しながら説明を重ねたという。8月10日には、TOB成立を条件に、法的拘束力のある形で合計30億円分の発注通知書も提示。内容は、「匠プレミアム」全自動コーヒーメーカー10万台、単機能電子レンジ5万台のほか、掃除機、IH炊飯器、ドラム式洗濯機などを中心としたもの。ジャパネットは、こうした発注確約を通じて、買収後の売上貢献やシナジーをより具体的に示そうとしたとしている。

さらに8月26日付の書簡では、プライベートブランド化を検討していた3商品に関する初期試算を示し、これらに限定してもツインバードの売上高は約40%伸長する可能性があると説明。その他の商品やBtoB領域のシナジーも加味すれば、ディスシナジーを「圧倒的に凌駕(りょうが)する企業価値向上が定量的にも見込める」と考えていたという。

また、ジャパネットはツインバードのBtoB戦略についても「適切な戦略であると高く評価している」と説明、買収後も尊重する考えを伝えていたとしている。加えて、ツインバードの懸念への対応として、買収後もBtoB事業や高付加価値製品の製造に必要な経営資源を確保した上で、BtoC領域の追加成長に向けて継続的に積極投資し、支援していく方針も示していた。

量販店や従業員との対話を重視していたと強調

ツインバードは反対理由として、取引停止も起こりかねないとし、量販店チャネルへの悪影響を重く見ていたが、ジャパネットはそうした量販店からの具体的な声は8月31日の反対意見公表まで共有されなかったと説明している。

8月26日付の書簡では、他販路への供給継続条項を契約に盛り込むことや、幹部レベルで継続取引を依頼することなど、懸念を抑える対応策を取る用意があると伝えていたという。具体的な懸念があるなら事前に共有してほしいとも求めていた。

また、ジャパネットは、ツインバードの従業員や地域社会の理解も重要だとして、6月19日付で従業員向けの手紙を送り、社内での回覧を依頼していたことも明かした。加えて、両社トップの面談、従業員からの意見聴取、株主向け書簡の配布、燕市・三条市の商工会への説明なども求めていたが、実現しなかったとしている。

8月20日には、ツインバード社長や特別委員会との面談が行われたが、ジャパネットは、対話やディスカッションというより一方的なインタビューに近い場だったという。このように対話機会が限られるでも、ジャパネットはステークホルダーを含めた公開性の高い議論を重視していた。

「走りながら」との受け止めや買付価格協議にも認識の違い

ジャパネットは、ツインバード側から「詳細は『走りながら』考えていく予定である」と受け止められた点にも言及。「スピード感をもってトライアンドエラーで進めていきたい」という自社の考えを「揶揄」されたものだとして、残念さをにじませている。

その上で、M&Aでは当初からシナジーを完全に定量化することが難しいケースも多いとしつつ、限られた情報のなかでも可能な限り具体的に説明し、発注通知書の提示なども含めて踏み込んだ対応をしてきたと主張している。

また、ジャパネットは8月26日付の書簡で、当初提示した1株800円の公開買付価格について大幅な引き上げを検討していると伝えていた。さらに、「ツインバードの中期経営計画で示された事業計画から算定されうる1株当たり株式価値以上の公開買付価格を提示することも十分可能と考えていた」と記した。

ただ、ジャパネットによると、ツインバード側から価格引き上げに関する実質的な交渉はなく、中期経営計画の内容も事前共有されなかったという。結果として、価格面を含めた追加協議の余地が十分にないまま、8月31日の反対意見公表に至ったとの認識を示しており、価格引き上げの余地を示しながらも、具体的な交渉に進まなかったことへの不満ものぞかせた。

「ご縁をいただくことはできなかった」と総括

そのツインバードは、自社の新中期経営計画を進める方が企業価値向上に資すると判断し、TOBに反対の意向を表明。これを受け、ジャパネットは提案を取り下げることになった。

今回の文書の応酬からは、ジャパネットが買収の意義や将来構想、対話を尽くした姿勢を強調したのに対し、ツインバードは現時点で賛成できない事業リスクと検証不十分を重視しており、両社の主張は最後まで平行線だったことが垣間見える。

「当社見解のお知らせ」でジャパネットは、「ご縁をいただくことはできませんでしたが、ツインバードは長年の経験と高い技術力に裏打ちされた高品質かつ魅力的な商品を生み出す大切な企業様であるという考えに一切変わりありません」と記載。今後もパートナー企業との共創や自社での挑戦を通じて、商品やサービスの開発に取り組む考えを示している。

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