累計販売85万着超の裏側。“出版社が本気で作った”疲労回復ウェアが支持を集めた理由とは
宝島社の疲労回復ウェア「Recoverypro Lab.」が、発売から約3年半でシリーズ累計実売85万着を突破するなどヒットしている。雑誌編集で培った読者理解を生かした商品企画や、女性向け市場の開拓、価格設計などが支持拡大につながったようだ。
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宝島社が販売する“着るだけで疲労回復をサポートする”一般医療機器「Recoverypro Lab.(リカバリープロラボ)疲労回復ウェア」が、2023年2月の発売から約3年半でシリーズ累計実売85万着を超えた。出版社発の疲労回復ウェアという異色の商材が、なぜここまで支持を広げたのか。背景には、雑誌編集で培ってきた読者理解を商品開発に生かす力と、読者や店頭の声を素早く商品に反映する仕組みがあった。

宝島社は、ヒットを支えた要因として、読者の悩みを起点とした商品企画、女性視点を生かした差別化、顧客の声を反映した商品改良、手に取りやすい価格設定などを挙げている。
「読者の悩みを企画に」出版社の強みを商品開発に生かす
事業をけん引する天野真里花氏は、雑誌編集部やマーケティング部を経て、現在はリカバリーウェア事業部の責任者を務める。宝島社によると、疲労回復ウェアの開発や拡販は、天野氏にとってまったく新しい挑戦ではなく、編集者として続けてきた「読者の悩みに寄り添って企画を作る」仕事の延長線上にあったという。

雑誌編集では、読者アンケートなどを通じて悩みやニーズを拾い、それを企画や付録、商品に落とし込む。この発想を疲労回復ウェアにも持ち込み、単なる機能訴求ではなく、生活者の不満や要望に寄り添った商品開発につなげたことが、支持を広げる土台になった。
女性向け市場の“空白”に着目
商品開発の初期段階で着目したのが、女性向け疲労回復ウェアの選択肢の少なさだった。
天野氏は自身の着用実感に加え、当時の「健康」「タイパ」といったトレンドも踏まえ、女性向けの商品に勝機があると判断したという。
その後、50代以上の女性向け雑誌「大人のおしゃれ手帖」編集部と読者会「ミモザ会」が連携し、体形やデザインについて意見交換を重ねた。こうして女性ならではの悩みに寄り添った商品を開発。読者のリアルな声を反映した商品設計が、発売後の支持につながった。

「出版社発」そのものをブランドの差別化に
同ブランドの成長要因として、宝島社は「出版社が作っていること」自体も差別化になったと説明している。
発売当初は、一般医療機器である疲労回復ウェアを出版社が手がけることに社内で慎重な見方もあり、あえて社名を伏せて展開していたという。しかし展示会では、バイヤーから「宝島社がやるのは面白い」といった反応が相次ぎ、“出版社発”であることが関心を集める要素になった。
さらに、雑誌付録や関連商品の開発で培ってきたものづくりのノウハウも強みとなった。編集者が持つ読者理解に加え、「良いものを多くの人に届けたい」という発想が、商品開発や販路拡大の土台になっているという。
こうした出版社ならではの強みは、スヌーピーやディズニーとのコラボ商品にも表れている。長年の付録・商品開発で築いてきた権利元との関係性を生かせる点も、他社との差別化につながっているようだ。

サイズ展開も工夫、独自の「ゆったりM」を投入
ヒットの裏側では、サイズ設計という課題もあった。発売当初は男女兼用の「M・L・XL」の3サイズ展開だったが、店頭からは「Mだと小さい」「Lだと丈が長い」といった声が上がっていたという。
これを受け、商品開発チームはさまざまな体形の人に試作品を着てもらい、短期間で女性の体形に寄り添った「ゆったりM」を投入。その後は子ども用も含めてサイズ展開を広げた。

責任者自らポップアップストアの店頭に立ち、顧客の声を直接聞いている点も特徴だ。
ECではレビュー分析やCRMの活用が重視されるが、同社では読者コミュニティとリアルな店頭接点の双方から得た声を商品改善につなげる体制を構築している。
顧客の声を集めるだけでなく、商品に反映するまでのスピードも支持を広げる要因になったようだ。
「良いものを多くの人に」9000円台からの価格設定
価格面でも、間口を広げる工夫を施した。宝島社は、長袖上下セットでも税込9000円台から購入できる価格に設定している。原材料高騰やデザイン性の向上で原価が上がっても、価格をできる限り抑える方針を取ってきたという。
背景にあるのは、「良いものを多くの人に届けたい」という考え方だ。書店で誰もが手に取れる価格の本を作ってきた出版社のDNAを、疲労回復ウェアの価格設計にも反映している。
機能性商材では高価格帯に寄せる戦略もあるなか、同社は“広く届ける”ことを重視。価格も含めた商品設計で裾野を広げたことが、累計85万着超の販売を支える要因の一つになったようだ。
書店から自社EC、「ZOZOTOWN」へ販路を拡大
「Recoverypro Lab.」は、自社ECサイトのほか「ZOZOTOWN」でも展開している。もともとは書店流通以外で販路を広げることをミッションにスタートしたが、疲労回復ウェアをきっかけに、書店外の販売チャネル開拓も進んだとしている。
読者の声を起点に商品を作り、出版社ならではの企画力で差別化し、リアルな顧客接点から改善を重ねる。「Recoverypro Lab.」の累計販売数85万着という実績は、出版社が持つ「読者を知る力」を、商品開発と販売に転換した事例ともいえそうだ。

