AI時代にECの巨人Amazonに勝つ方法とは。アマゾンの「外部AIお断り」と「オープン連携」の戦略差から見えてくること
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』の最新調査によると、EC売上首位のAmazonがAI対応度ランキングでは158位に。その理由はサードパーティAIへのデータ遮断と自社AIエコシステムへの囲い込みがあげられます。
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米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』の「AI Commerce Rankings(AIコマースランキング)」におけるAmazonの順位(158位)は、サードパーティの商品発見チャネルよりも自社のAIエコシステムを優先するという明確な戦略が反映されており、Walmartをはじめとする他のEC事業者とは一線を画しています。
AmazonのAIコマース戦略は何が違うのか?「AI Commerce Rankings」で見えたスタンス
『Digital Commerce 360』とReFiBuyが公表した最新の「AI Commerce Rankings」において、北米EC市場で売上トップに君臨するAmazonの順位に、大きな地殻変動が起きました。
Amazonは、年間EC売上高に基づく「北米EC事業 トップ1000社」データベースにおいて1位の座を保持しています。しかし、AIチャネルを通じた消費者との接続性や、リーチの拡大度を評価する「AI Commerce Rankings」では、100位圏外となる158位にまで大幅に順位を落としました。
なぜ、EC界の巨人がAIの評価指標でここまで苦戦しているのでしょうか。そこには、他社とは明確に一線を画すAmazon独自の戦略が存在します。
なぜAmazonはAIランキングで158位に沈んだのか?「自社囲い込み」の意図
「AI Commerce Rankings」では、各EC事業者の商品カタログデータがサードパーティのAIエージェント(「ChatGPT」や「Gemini」など)にとってどれだけアクセスしやすいか(AI Readability)、サードパーティAIからのトラフィック量やその多様性、過去90日間の成長モメンタムなどを総合的に評価しています。
ReFiBuyの創業者兼CEOであるスコット・ウィンゴ氏は、Amazonの姿勢について次のように分析しています。
Amazonは「外部のAIボットに自社データを開放する必要はない」という明確なスタンスを取っています。サードパーティからのアクセスを遮断しているため、4つの評価指標すべてでスコアを得られず、今回のランキングでは上位から脱落することになりました。
自社のAIエコシステムへ誘導するための戦略的判断
この低い順位はAmazonの失速を意味するものではありません。
Amazonはクラウド基盤「AWS(Amazon Web Services)」を通じて他社へテクノロジーを提供するB2B企業であると同時に、「Alexa for Shopping」や「Buy for Me」といった自社独自のエージェント型AIツールを多数展開しています。
つまり、自社の商品カタログを「ChatGPT」などのサードパーティAIに開放せず制限することで、消費者を自社のAIサービスへと直接誘導・囲い込むという明確なメリットがあるのです。
対照的なのが、売上順位2位のWalmart(ウォルマート)です。Walmartは「AI Commerce Rankings」で37位にランクインしており、Amazonとは121位もの差があります。Walmartは自社を閉じさせることなく、サードパーティのAIプラットフォームに対してオープンな連携姿勢を取っており、両者のAIコマース戦略の違いが鮮明になっています。
売上700位以下の小規模ECが「AI集客」で1位に躍進
AmazonやWalmartのような巨人が攻防を繰り広げる一方で、サードパーティAIチャネルを積極的に活用することで、圧倒的な成長機会を掴んでいるのが中堅・小規模のEC事業者です。
2026年第2四半期の「AI Commerce Rankings」でトップ3に輝いたNixon(時計・アクセサリー・ライフスタイルブランド)、Online Labels(商品パッケージや配送用ラベル印刷の専門EC)、Everlane(原価公開で有名なサステナブルアパレルブランド)の3社は、通常のEC売上ランキング(トップ1000社)ではそれぞれ722位、814位、264位にとどまっています。
売上規模ではトップ100に遠く及ばないブランドが、AI対応度においては全米トップクラスの評価を獲得しているというこのギャップは、ChatGPTやGeminiなどのLLMプラットフォームに自社データを最適化することで、規模の小さい事業者でも爆発的な集客力を持てるという可能性を証明しています。
膨大なカタログを抱える「ニッチカテゴリー」に眠る巨大なチャンス
AI検索(エージェント型コマース)による新たな成長の波は、特定のニッチな商品カテゴリーにおいて特に顕著に表れると予想されています。その代表例が「自動車部品・アクセサリー」のような複雑かつ商品点数が多いジャンルです。ウィンゴ氏は次のように指摘します。
自動車関連企業はどこも膨大な商品カタログを抱えています。AIボットがパース(解析)しやすいように構造化データの課題を少し解決し、カタログに文脈情報を追加するだけで、AIチャネル経由の売り上げを一気に伸ばすことができるでしょう。
検索エンジンでの人気度や大規模な広告予算に頼らざるを得なかった従来の集客構造から、「AIにいかに正しく自社商品を理解させるか(AI Readability)」が問われる時代へ。
Amazonがデータを囲い込む今だからこそ、サードパーティAIにデータをひらくオープンなアプローチが、一般のEC事業者にとって最大の勝機となっています。

