鳥栖 剛[執筆] 6:00

トリドールホールディングスは9月から、人的資本経営をさらに深化させた独自の経営手法として、人の「心」を起点にする「心的資本経営」を始動した。

「心的資本経営」とは

「心的資本経営」は、「従業員の『心』の幸せ」と「お客様の『心』の感動」を共に重要な資本と捉え、「心」も満たし続けることで持続的な事業成長を実現するという独自の経営思想。好循環作り、永続的な人材確保、離職率の改善、求人や教育コストの削減、店舗の地元への地域貢献など、さまざまな価値を長期的に生み出し、グループ全体で持続的な事業成長をめざすものとしている。

トリドールホールディングスでは2024年6月から「心的資本経営」の社内浸透を推進。その結果、従業員の離職率は約12.9%低下、寄せられた顧客からのポジティブな声は24.5%増加するなど、成果が表れている。

労働人口の減少、人材獲得競争の激化に直面する飲食業界では、省人化・機械化が急速に進んでいる。トリドールHDは、あえて省人化・機械化の対極にある「人の力」に最大限注力する経営方針を掲げ、主力業態である丸亀製麺ではその思想を体現するために「手づくり・できたて」のうどん、人の温もりが感じられる接客を大切にし続けているという。

こうした実績と業界環境を踏まえ、「人の力」が顧客に唯一無二の感動を届け、ブランドの源泉になると再認識。「心的資本経営」という原動力の元でトリドールグループ全体で経営改革を始動したという。

従業員の「幸福実感」=「ハピネス」が「心的資本経営」の起点

従業員の「幸福実感」=「ハピネス」が「心的資本経営」の起点。従業員が心から幸福感を持って働ける職場環境を整えることで、自らが考え行動するという内発的動機が育まれるという。

店舗の持続的な「繁盛」は、顧客の感動体験の積み重ね。その成果を従業員へ適切に還元し、再びハピネスが高まり、感動体験の質が深化していくという好循環が形成されるとしている。

なお、「心的資本経営」は「ハピネス(幸福)」と「カンドウ(感動)」の頭文字を組み合わせた「ハピカン経営」という呼称で全従業員に共有。このトリドール独自の実践モデルを「ハピカン繁盛サイクル」と定義している。

トリドールが掲げる「ハピカン繁盛サイクル」の概念図
トリドールが掲げる「ハピカン繁盛サイクル」の概念図

従来の店長制度を刷新、最大で年収2000万円へ

「心的資本経営」を具現化するため、従来の店長制度を刷新。新たに「ハピカンオフィサー制度」を導入した。店舗での「ハピカン繁盛サイクル」の実現が主たる役割という。

従来、店長が担っていたオペレーション業務の一部を他メンバーへ移管。店舗で働く従業員1人ひとりの内発的動機を引き出し、店長業務は店舗独自の感動体験の創造をリードする役割へとシフトする。

報酬制度も抜本的に見直す。「ハピカン繁盛サイクル」の実践レベルに応じて報酬が変動し、最大で年収2000万円を得られる制度として報酬体系を構築した。丸亀製麺では「ハピカンキャプテン」という呼称で、2025年11月からの導入に向けて研修を進めている。

今後、国内その他業態へも展開し、2028年には丸亀製麺で300人の「ハピカンキャプテン」を育成予定としている。

食事を無償提供する「家族食堂制度」も開始

従業員本人だけではなく、その家族にも良い体験を届けることを目的とした新制度「家族食堂制度」も開始する。

トリドールグループの店舗で働く従業員の15歳以下の子供を対象に、所属するブランドの全国の店で、いつでも無償で食事を楽しめる機会を提供する制度。家族との団らんの時間づくりや従業員の子育て支援、職場への理解を深めるきっかけとして導入する。

2025年12月に「丸亀製麺」「天ぷらまきの」「焼き鳥とりどーる」「長田本庄軒」「とんかつとん一」で導入し、その後他ブランドへの展開も視野に入れている。

独自指標「ハピネススコア」を設計・導入

「心的資本経営」の基盤を支えるデータサイエンスとして、独自指標「ハピネススコア」を設計・導入。丸亀製麺では2024年4月から、顧客の食後の感情をアンケートによって「感動スコア」として可視化している。 2025年7月からは店舗で働く従業員の心の満足度を計る「ハピネススコア」を導入。従業員と顧客双方の「心の状態」を可視化し、業績との相関・因果関係を複数の統計手法を用いて明らかにするという。 初期分析では、「ハピネススコア」が高い店舗ほど感動スコアが高く、業績への貢献が明確に現れる傾向を確認。今後は、この成果をさらに深掘りした詳細と「ハピカンアクション」を促進するデータサイエンスの活用を発表予定としている。

省人化が進む時代だからこそ、「人の力」が唯一無二の感動を生む源泉だと信じている。「心的資本経営」を通じて、従業員の幸福とお客さまの感動が循環する仕組みを育み、これからも「食の感動で、この星を満たせ。」という使命を追求していく。(トリドールHD 粟田貴也社長)

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