EC現場の実態。担当者の8割「ノンコア業務のために実施したかった施策や顧客対応を諦めた」

シナブルの調査によると、EC担当者の81.6%がデータ整備などのノンコア業務を理由に、本来実施したかった施策や顧客対応を諦めた経験があるという。データ前処理の負荷が、UI/UX改善やパーソナライズ施策の実行を妨げている実態が浮かび上がった。

鳥栖 剛[執筆]

10:00

EC担当者の多くが、売り上げ拡大に向けた施策よりも、データの前処理などノンコア業務に多くの時間を割いている実態が明らかになった。EC専用のMA・CRMツール「EC Intelligence」を開発・提供するシナブルは8月5日、「EC・D2C事業者における顧客データ分析と業務リソース」に関する調査結果を公表。これによると、EC担当者の81.6%が、データ整備などのノンコア業務を理由に、本来実施したかった施策や顧客対応を諦めた経験があるという。

自社ECに導入しているツールの活用状況では、いずれのツールも「導入済み・ある程度活用できている」が4割台で最多だった。一方、「導入済み・十分に活用できている」との回答は、自社ECカートシステムでは比較的高かったものの、CDP・データ統合ツールやMAツールでは低く、高度なデータ処理を伴うツールほど十分に活用しきれていない傾向がみられた。

EC現場の実態。担当者の8割「ノンコア業務のために実施したかった施策や顧客対応を諦めた」
自社ECに導入しているツールの活用状況

ツール活用における課題は、「ツールの管理画面や操作が複雑で分かりにくい」が37.0%でトップ。「専門知識やノウハウがなく、心理的なハードルが高い」が35.6%、「データの突合や前処理(クレンジングなど)に時間がかかる」と「ツールのサポート体制が良くない・不十分と感じる」がともに34.7%で続いた。

EC現場の実態。担当者の8割「ノンコア業務のために実施したかった施策や顧客対応を諦めた」
ツール活用における課題

自社ECの管理・運用業務のうち、「データの前処理(突合、整形、クレンジングなど)」に費やす時間は、「6割~8割未満」が34.9%で最も多く、「4割~6割未満」が33.9%だった。全体の68.8%が、業務時間の4割以上をデータの前処理に充てていることがわかった。

EC現場の実態。担当者の8割「ノンコア業務のために実施したかった施策や顧客対応を諦めた」
データの前処理にかかる業務時間の割合と処理方法

前処理の手法では、「自社エンジニアが組んだ専用プログラム」が39.9%で最多。「表計算ソフト(関数やマクロ、VLOOKUPなど)を用いた手作業」が39.7%、「カートシステムや各モールの管理画面からCSVをエクスポートし、手動で統合」が37.8%で続き、多くの事業者が手作業や個別開発に依存している実態が浮かんだ。

顧客データの集計・抽出を他部署のエンジニアや外部ベンダーへ依頼した場合、データが手元に届くまでの時間は「翌日(1日程度)」が35.5%でトップだった。「2~3日」が29.5%、「即時(当日中)」は17.3%にとどまり、大半のケースで1日以上のタイムラグが発生していた。

EC現場の実態。担当者の8割「ノンコア業務のために実施したかった施策や顧客対応を諦めた」
データが手元に届くまでの時間

「本来実施したかった企画・マーケティング施策・顧客対応を、データ整備や分析などのノンコア業務に追われて諦めた経験があるか」との設問では、「頻繁にある」が21.4%、「たまにある」が60.2%で、合計81.6%に達した。

EC現場の実態。担当者の8割「ノンコア業務のために実施したかった施策や顧客対応を諦めた」
ノンコア業務による業務圧迫状況と、それにより諦めてしまった施策や対応

諦めた施策・対応では、「サイトをより見やすく、買い物しやすくするためのUI/UX改善・ページ制作」が51.5%で最も多かった。「顧客ごとにパーソナライズした情報提供やメールマガジン配信」が45.0%、「限定クーポンやイベント・キャンペーンの企画」が32.6%で続いた。

一方、「データ処理がシステム化され、時間を削減できた場合に注力したい業務」では、「既存顧客のロイヤリティ向上(CRM施策・ファン化施策)の設計」が50.3%で最も多く、「顧客対応(カスタマーサクセス・サポート)の強化」が50.0%、「新規プロモーション・キャンペーンの企画立案」が29.3%だった。

EC現場の実態。担当者の8割「ノンコア業務のために実施したかった施策や顧客対応を諦めた」
時間を削減できた場合に注力したい業務と検討している施策

改善策として検討している施策は、「現在のMA・CRMツールの見直し・リプレイス」が41.9%で最多。「外部ベンダー(コンサルティング、運用代行など)の活用」が38.8%、「データの自動統合・クレンジングツール(CDPやiPaaSなど)の導入」が30.7%で続いた。

今後、MA・CRMツールに期待する機能では、「専門知識がなくても直感的に操作できるノーコード・シンプルな管理画面」が43.7%でトップ。「自社ECの状況に合わせた施策を提案・自動設定するAIアシスタント・自動生成機能」が39.6%、「複数システム(カート、モールなど)とのノーコードによる自動データ連携機能」が31.6%で続いた。

EC現場の実態。担当者の8割「ノンコア業務のために実施したかった施策や顧客対応を諦めた」
MA・CRMツールに期待する機能

シナブルは今回の調査について、データの前処理に多くの時間が割かれ、本来注力すべき顧客対応や施策立案が後回しになっている実態が浮き彫りになったと分析。そのうえで、誰もが直感的に扱えるデータ環境の構築が、EC事業者の顧客向け施策を後押しするとしている。

調査概要

  • 調査期間:2026年7月1日(水)~2026年7月3日(金)
  • 調査方法:PRIZMAによるインターネット調査
  • 調査人数:1006人
  • 調査対象:調査回答時にEC(Eコマース)事業を展開する企業に勤務し、自社ECサイトへのツール導入と、顧客データ分析やCRMを含むマーケティング施策の企画・実行に携わっている担当者・責任者と回答したモニター
  • 調査元:シナブル
  • モニター提供元:PRIZMAリサーチ
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