
CVRの中央値は2.4%。北米EC実施企業TOP2000の調査結果から見えたコンバージョン率を改善させる3つのアプローチ

米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』の「2025年版Eコマース・コンバージョンレポート」の掲載データ、企業調査の回答などによると、コンバージョン率を高めるために有効な新しい手法が見えてきました。レポートから、EC事業者がコンバージョン率をアップさせるための、主に3つの手法を探ります。
北米大手EC企業によるCVR改善の取り組み
北米の大手EC小売事業者が運営するECの2023年のコンバージョン率は、前年から低下しました。各社がその低下を食い止め、改善させようと模索するなかで、一部の戦略が成果を出し始めています。
コンバージョン率は商品のカテゴリごと、Amazon、Walmart、Costcoといった大手小売事業者の間でも差があります。さらに重要なのは、卸売りを手がける企業にオムニチャネル戦略を提供する小売チェーンと、そうでないチェーンの間でもコンバージョン率に違いが見られる点です。

レポートでは、こうした違いの詳細に加えて、主要なEC小売事業者がどのようにコンバージョン率を引き上げ、購入につながる割合を高めているかを分析。消費者が最終的に購入を決める際に最も重視する点についての調査データも紹介しています。
また、調査の主要な結果に加え、EC小売事業者自身が「自社では何が効果的だったか」を取りまとめた最新のノウハウもまとめています。
ここでは、レポート内で特に注目すべき3点を掘り下げます。
顧客の好み、市場環境への適応
『Digital Commerce 360』が集計した「北米EC企業トップ2000社」に含まれる小売事業者全体の2024年におけるコンバージョン率の中央値は、2.4%と前年比で横ばいでした。2年前の2.6%からはやや低下しています。

改善を見せている企業に共通しているのは、「顧客にとって何が最も有効か」を理解する努力と、顧客の好みの変化に合わせて適応する姿勢です。
その一例が、環境に配慮した食材を使用した料理を提供するCarbone Fine Foodです。ショッパー&デジタルコマース担当シニアマーケティングマネージャーであるエミリー・フレミング氏は、『Digital Commerce 360』の取材に対し次のように語っています。
Carbone Fine Foodは市況の変化に素早く適応し、EC顧客と市場環境の両方にとって最も有効なことに注力することに努めました。ただし、今日有効なことが6か月後にも有効とは限りません。(フレミング氏)
Carbone Fine Foodが力を入れたのは、商品ラインナップの最適化、Amazonの「Amazonプライム」の配送特典を自社ECサイトでも提供できる「Buy with Prime」を活用した配送オプションの追加などです。
AI活用や「リアルタイム在庫の可視化」などオムニチャネル戦略の推進
米国の大手ブライダル企業David’s Bridalのケリー・クックCEOは『Digital Commerce 360』のインタビューで、2025年に予定しているShopifyを活用したECサイトのリプレイス、新しいAI搭載の「AIエージェント型ウェディングプランナー」について語りながら、オムニチャネル戦略を広い視点で説明しました。

これからは、あらゆるチャネルに対応する戦略を採用していきます。DtoCチャネル、つまり自社ECサイトと実店舗に関しては、チャネルをまたいで共通する施策もありますが、David’s Bridalのビジネス戦略は他の小売事業者とは異なります。(クック氏)
クック氏は2025年4月の時点で、David’s Bridalが新たに追加した機能の1つに「リアルタイム在庫の可視化」があると説明しました。この機能の追加で、David’s Bridalは2024年に『Digital Commerce 360』が調査した北米トップEC企業1000社に入った小売チェーンのうち、店舗在庫状況を可視化していた65.5%の企業の1つになりました。
ルールの明示化+高い透明性で顧客の期待を裏切らない
2024年から2025年にかけて、『Digital Commerce 360』の消費者向け調査では大きな変化が見られた回答もありましたが、顧客の期待を裏切ることがEC小売事業者の売り上げを下げる要因になるという点は変わりません。
2025年の調査結果における変化のなかで、事業者が消費者の「期待を裏切る」ことになったことが、カゴ落ちの要因として依然として大きいことがわかりました。
代表的な理由としてあげられたのは、「予想外の送料」(30.1%)、「無料配送の条件を満たせなかったこと」(26.6%)、「カート内に入れた商品の在庫切れ」(19.1%)でした。
これらの課題に対して小売事業者は、テクノロジーを活用して、透明性が高く、わかりやすい基準を用いることで改善する方法があります。