EC売上500億円をめざすTSIグループのネット通販戦略とは?
TSIホールディングス傘下のTSIECストラテジーは、グループEC戦略のけん引役としてブランド単位のオムニチャネルサイト(O2Oサイト)に磨きをかけるとともに、ネイティブアプリ化や海外ECモールとの基幹連携でグループのEC拡大に貢献していく。
TSIグループは2022年2月期までの5カ年計画で、EC売上高を17年2月期実績のほぼ倍となる500億円を目標とし、EC化率も前期の16%から25%を目指している。
現状、グループのECは順調に成長しており、前期のEC売上高は前年比29・4%増の255億円に拡大。商品の店頭受け取りや取り寄せ(試着予約)などもできるO2Oサイトが16年2月期までにほぼ出そろい、前期は年間を通じてO2O施策が機能した。EC化率の低いブランドが軒並み10%を超えるなど、底上げにつながったことで、「ブランドスタッフの意識が実店舗からECにマインドチェンジした“元年”となった」(柏木又浩社長)としている。
TSIの場合、グループ内にEC化率が40%を超えるナノ・ユニバースや、30%に近いアルページュといった指標があることも奏功。ECではブランドや商品の情報をウェブ上でいかに伝えるかが大切だが、ナノ・ユニバースでは商品分類ごとに掲載すべき情報やビジュアルのあり方を独自の視点で持つため、これらをテンプレート化してグループ内で使えるメリットがあるという。
前期後半からはスマホファーストに着手しており、今年2~4月にかけて約20ブランドでスマホアプリを開始した。アプリはメンバーズカードの機能を搭載しており、各ブランドの店舗ごとに競いながらアプリへの切り替えを推進中だ。
TSIグループでは実店舗とECの併用客はひとつの販売チャネルしか使わない顧客と比べて購入金額が3~4倍になることから、併用客を増やすためにもアプリの役割は大きいとする。
1to1対応強化
今期は“イミディエイト”と“パーソナライズ”“オーセンティック”の3つをキーワードにECを強化する。イミディエイトは“速さ”を意味し、すべてにおいて速度を重視する。モバイル化時代は決済までのスピードが大事で、導入を進めるアプリも決済までアプリ内で完結するネイティブアプリ化を推進し、今秋をメドに主要ブランドから切り替える。
“パーソナライズ”では前期からマーケティングオートメーションツールをテスト導入。通常はカゴ落ちやブラウザ落ちした来訪者に対し、リターゲティングメールを配信して再訪問を促すが、今期はこれをアプリで実行する。例えば、アプリをダウンロードしたものの起動していないユーザーに自動でプッシュ通知を送る。この場合、ツールをアプリに埋め込む技術が必要だが、プッシュ通知はメールよりも約4倍開封率が高まると言われていることから、ネイティブアプリ化に合わせて対応し、アプリでの売り上げ拡大につなげる。
“オーセンティック”は本物、信頼性を意味する言葉で、商品レビューなど消費者の求めるコンテンツを充実させる。前期は米ベンチャーの画像プラットフォーム「オラピック」をテストした。同ツールを使えばインスタグラムに投稿した画像を自社ECにも表示でき、人気ブランドの「フリーズマート」では店舗スタッフのコーデ画像をすべて商品詳細ページに組み込むことで成約率が改善したのに加え、顧客からの問い合わせや評価が増えたという。
「フリーズマート」では今期、サイト下部に掲載するインスタ画像の中に顧客が撮影した写真も入れていく。実店舗で商品を試着した写真を投稿するとポイント付与などの特典を設けることで、常に新しい写真がアップされるようにする。
また、消費者が安心してECを利用できるようにグーグル認定ショップの取得を進めており、グループO2Oサイトの7割程度が取得済みだ。
基幹連携も強化
EC売上高の約60%を占めると見られる他社ECモールとは在庫とデータの基幹連携を徹底強化。前々期に5サイト、前期は9サイトとつなぎ込みを行い、合計14サイトとの連携が完了し、今期は海外モールも含めて基幹連携先を広げる。
海外は、中国の主要売り場を「タオバオ」と「Tモール国際」に絞る。「タオバオ」は卸サイトのため、バイヤーにウェブ上で卸す仕組みを作った。「Tモール国際」ではアウトレット品を活用してテスト販売を行ってきたが、今期は定価の商材を中心に展開することにしており、すでに基幹連携も完了している。上期は「Tモール国際」に出店中の「ジルスチュアート」と「ジルバイジルスチュアート」の2ブランドで再テストを行い、その結果を受けて下期から展開ブランドを増やす。
ただ、現状は越境ECに取り組むが、TSIグループは中国で生産している商品も多いため、最終的にはローカルの「Tモール」での販売に切り替えていきたい考え。
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