内製×外注の最適解を見つけるEC実践講座

EC業務の内製or外注はどう決める? 課題から考える「内製と外部活用を切り分ける考え方と視点」

「何を自社で持ち、何を外部に任せるべきか」をテーマに、ECの現場で起きているリアルな課題を掘り下げていきます【連載2回目】

石田 麻琴[執筆], 林 昌孝[執筆]

8:00

「EC事業を内製化する」。この言葉を聞くと、「広告運用もサイト制作もシステム開発も、すべて自社でできるようになること」と考える人も少なくありません。一方で、「プロに任せれば大丈夫」と考え、制作会社や開発会社、ツール会社に成果を委ねてしまうケースもあります。しかしECを取り巻く環境は、AIの登場も含めて大きく変化しており、「内製か外注か」という単純な話ではなくなっています。

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内製×外注の最適解を見つけるEC実践講座

本連載では、システム開発・事業支援に長年携わってきたボクラブロック代表の林氏と、マーケティングチームの内製化連載を執筆しているECMJ代表の石田氏が、「何を自社で持ち、何を外部に任せるべきか」をテーマに、ECの現場で起きているリアルな課題を掘り下げていきます。

EC事業者は何を自社で考え、何を外部と進めるべきか

林

まずは、「内製化」という言葉に対する誤解について、振り返りたいと思います。

内製化というと、広告運用や制作、開発など、自分たちでできる範囲を広げることだと思われがちです。もちろんそれも一部は正解です。ただ、私たちがお伝えしたかったのは、本質的にはそこではありません。本当に大事なのは、自社で考えて判断できる状態を作ることです。外部パートナーに任せるにしても、AIを活用するにしても

  • 何を依頼するのか
  • 何を成果と見るのか
  • 提案を受けるべきなのか

そういったことを判断できる力が自社にないと、結局は丸投げになってしまいます。今回は「EC事業者は何を自社で考え、何を外部と進めるべきか」という話をしていきたいと思います。

ただ、これは単純な業務分担の話ではありません。EC事業者ごとに課題も違いますし、めざす方向性も、今持っている強みも違います。だからこそ、まずは自社にとって本当に何が課題になっているのかを整理することが重要だと思っています。

石田さんは10年以上、EC運営の現場を見てきていると思いますが、「会社ごとに課題はまったく違うな」と感じることはありますか?

石田

課題がまったく違うかというと、実はそうでもないんですよ。コンサル側から見ていると、比較的いくつかのパターンには分かれていくと思っています。たとえば、

  • 会社の歴史
  • BtoBかBtoCか
  • ネットリテラシー
  • デジタルへの理解度
  • 商材が仕入れ商品なのかオリジナル商品なのか

こういった要素で、ある程度分類はできると思うんです。ただ、その先まで含めて考えると、会社ごとに課題は異なると言えるかもしれません。

林

そういう意味では、自社固有の課題だと思っていても、商材や業態、会社の歴史などによって大分類はできる。ただ、その先の枝分かれした部分については、各会社固有の課題がある、という理解でしょうか。

石田

そうですね。

林

私も同じ感覚です。ある程度、業界特有の課題というものはあります。ただ、それでもEC事業者ごとに課題はかなり異なっていると思います。

私が相談を受ける時も、多くの場合は「ECの売り上げを伸ばしたい」というのが表面化された課題です。でも実際に話を聞いていくと、課題は会社によってまったく違います。

たとえば「新規集客が足りない」という課題だったり、「商品の魅力が十分に伝わっていない」という課題だったり、「顧客分析ができていないため、リピートにつながっていない」という課題だったり。あるいは「単純にシステムが古くなっていて、今やりたい施策が実行できない」というケースもありますし、「商品やブランドの強みが顧客に伝わっていない」ということもあります。

意外と多いのが、店舗や卸、営業部門との関係です。「ECも必要だよね」ということで立ち上げたものの、会社におけるECの役割が曖昧なままになっている。結局、従来の商習慣が優先されてしまい、ECの立ち位置が曖昧になり、その結果、施策も打てなくなっている。そういうケースも結構あります。

「売り上げを伸ばしたい」という相談内容は同じでも、課題は会社ごとに異なる

林

つまり「売り上げを伸ばしたい」という相談内容は同じでも、その裏にある背景や会社の考え方、課題は会社ごとにかなり違うんです。

だから「広告をうまく回したい」「ECサイトをリニューアルしたい」「新しいツールを導入したい」といった局所的な相談を受けることもありますが、それを鵜呑みにすることはありません。まずは、その会社ごとの課題やめざす方向性を整理するところから始めるようにしています。

石田さんも多くのEC事業者を支援していると思いますが、「売り上げを伸ばしたい」という相談の裏に別の課題が隠れているケースや、お客さまが認識している課題と、本当に解くべき課題がずれているケースはありますか?

石田

それはかなりありますね。まず後者から話すと、多くの会社さんが「集客に問題がある」と考えています。売り上げが伸びない理由も事業が伸びない理由も、「うちは集客ができていないからだ」と思っている。

でも実際には、自分たちの商品力やお客さまへの提案の仕方、本質的な差別化の見せ方など、そういった部分が掘り下げ切れていないケースがすごく多いんです。「自分たちは理解している。でも、お客さまには伝わっていない」そういう状態が本当に多い。

みんな最初は集客の話をします。「うちは集客ができていないからダメなんです」と。だから林さんが言ったように、「じゃあ広告をやりましょう」という流れになりやすい。これは事業者側だけではなく、ソリューションを提供する側も含めた業界全体の課題だと思います。

採用や組織作りといった別の課題、狙いが隠れているケースも

石田

もう1つあります。「売り上げを伸ばしたい」という相談の裏に、実は別の目的があるケースです。たとえば「若いスタッフにもっと活躍してもらいたい」「今のやり方がアナログすぎるので、デジタルを活用できる組織に変えていきたい」「将来的な採用を考えると、今のままでは厳しい」、そういった背景から、ECやデジタルマーケティングに力を入れたいという会社もあります。

つまり「売り上げを伸ばしたい」という言葉の裏に、採用や組織作りといった別の課題や狙いが隠れているケースもあるんです。

林

まさにこの後に話そうと思っていたことに近いですね。事業者が課題だと考えていることが、本当に今取り組むべきことなのか。そこを俯瞰して考えた上で相談しているかどうかが非常に重要だと思っています。

たとえば、「リニューアルしたい」「広告を強化したい」「新しいツールを入れたい」これ自体は間違っていません。ただ、「そこにたどり着いた経緯が整理されているのか」「それが本当に成果につながるのか」「そこまで考えた上で相談しているのか」、ここが大事なんです。

相談を受ける側も、「リニューアルしたいなら、どうリニューアルしましょう」「広告強化したいなら、どこに広告を出しましょう」と返すのが仕事でもあります。だからこそ、私は一度立ち返って、「それは本当に今やるべきことなのか」を考えてほしいのです。

「広告を強化したい」という話もそうです。先ほどの新規集客の話につながる部分だと思うのですが、実は商品ページに課題があるかもしれないし、広告費を増やしても売り上げにつながらないかもしれない。そもそも広告を出しているターゲットが間違っている可能性だってあります。

また、「サイトをリニューアルしたい」という話もあります。でも、それは本当に機能やデザインの問題なのでしょうか。実はサイト内の商品構成に問題があるかもしれないし、在庫管理に課題があるかもしれない。もしくは「本当に届けたいタイミングでお客さまに商品を届けられているのか」という、運用体制の問題かもしれません。CRMを強化したいという話も同じです。「顧客データが整理されていない」「購入データの見方が間違っている」、そういったことが原因かもしれません。

重要なのは「なぜそれを行うのか」という視点&「課題は短期的or中期的に取り組むべきか」を整理すること

林

つまり、表面に出ている課題だけを見て施策を決めてしまうと、その投資や外部への相談内容自体が、最初からずれている可能性があるということです。だから、自社で持つべきなのは「この施策を行いたいから誰かに頼む」という発想ではなく、「なぜそれを行うのか」という視点なんです。それが本当に解くべき課題の解決策になっているのか。

そしてもう1つ大事なのは、それが短期的な課題なのか、中長期で取り組むべき課題なのかを整理することです。そういったことを考える力は、やはり社内に持っておくべきだと思っています。

もちろん、EC運営の現場は日々の業務に追われて忙しい。本当に課題を整理する時間が取れていない会社も多いと思います。石田さんから見て、そういうことをしっかり考えられている会社の方が伸びているなと感じることはありますか?

石田

多くの会社さんは、そもそもECというもの自体の立ち位置が、会社のなかで曖昧なんですよ。明確にEC部門として組織化されている会社は、まだまだ少ないです。担当者が決まっていないケースもありますし、兼務しているケースも非常に多い。

だから、ECの施策だけではなくて、会社全体の仕事に追われてしまうんです。EC以外の業務もあるし、本業もある。そのなかで、デジタルを活用したマーケティングを整理する時間が取れていない会社がほとんどだと思います。

課題は2つあると思っています。1つは、EC担当者自身が日々の業務に追われていること。もう1つは、会社全体としても目の前の仕事を優先してしまっていることです。だから将来のための投資や、デジタル活用のための時間が確保できていない。これはすごくもったいないことだと思います。

ただ、そのなかでもやはり伸びる会社はあります。経営者や将来的に会社を担う事業責任者、あるいは若手リーダーが、「会社として短期目標も追わなければいけない」ということを理解した上で、「それでも将来のために何に投資するべきか」という視点を持っている

時間もお金も限られているなかで、「ここには投資しよう」という判断ができる会社は、やはり伸び方が違うと思いますね。

 「ここに投資する」と判断できる会社は伸び方が違う
「ここに投資する」と判断できる会社は伸び方が違う(画像はイメージ)

「ECで何をめざすのか」を自社できちんと考える

林

そうですよね。私も石田さんと一緒にいくつかのプロジェクトを進めていますが、「最初はECの課題だと思っていたものが、実は組織全体の構造の課題だった」ということはあります。ECだけの問題では済まない。ECをきっかけにして、会社全体の課題が見えてくる。これは非常によくある話だと思います。

そこで改めて、「自社で持つべきものは何か」という話をしたいと思います。「ECの売り上げを伸ばしたい。そのために自社で判断できるようになりたい」と考えた時に、自社で持つべきものは何なのか。

私は「ECで何をめざすのか」ということだと思っています。そして、「顧客は誰なのか」「なぜ顧客は自社の商品を選んでくれているのか」「自社の商品やサービスの強みは何なのか」「その強みはきちんと伝わっているのか」といったことを理解することです。

さらに、それぞれの課題について、短期で解決できるものなのか、中長期で取り組むべきものなのか――そこを整理した上で、何から着手するのかを決める。その後に初めて、外部パートナーをどう活用するかという話になると思っています。

もちろん、私たちのような外部パートナーも、その整理をお手伝いすることはできます。ただ、自社の商品や顧客、現場、ブランドの背景を一番知っているのは、やはり事業者さん自身なんです。そこまで外部に丸投げしてしまうと、どうしても一般論の施策になってしまいます。

ボクラブロックとして一番大事にしているのは、事業者さんが本来持っている価値や強みを一緒に整理することです。そして、それを顧客に正しく届けられる形に再設計すること。そこができて初めて、「どの施策をやるべきなのか」「どこを外部に任せるべきなのか」という話になっていくのだと思っています。

◇◇◇

次回は、こうした課題整理を踏まえて、EC事業者が自社で持つべき情報や判断軸、外部パートナーに任せるべき領域についてさらに掘り下げていきます。

ECマーケティング人財育成は「マーケティングチームの内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

ボクラブロックは、EC事業者ごとに異なる課題や目指す方向に合わせて施策を設計し、実行・改善まで伴走するEC支援会社です。外部パートナーも活用しながら、売上向上や業務改善につながる取り組みを支援します。詳しくはボクラブロックのホームページをご覧ください。

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