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ブランド・小売がECを「代行」する時代に? AdidasのAIエージェントを活用したEC支援の「EaaSサービス」とは

Adidas(アディダス)がAIを活用し、注目のF1チーム「Audi」のECサイトをわずか8週間で構築しました。新ビジネスモデル「EaaS」や、少人数で1億ドル規模の事業に拡大した成功の裏側を解説します。

Digital Commerce 360[転載元]

9:30

アパレルブランドのAdidas(アディダス)のシニアプロジェクトマネージャーであるドミニク・ゼーベルガー氏によると、わずか8週間でAudiのF1チーム「Audi Revolut F1 Team」のECサイトを立ち上げました。これは、AdidasがSalesforceのAIエージェントを活用し、新しいビジネスモデルを展開しようとすることを示す実例です。

ブランドがAI活用でEaaS事業に進出

Adidasは、SalesforceのAIエージェントを活用し、eコマース・アズ・ア・サービス(EaaSまたはECaaSと略されます。ECサイトの構築、運用、フルフィルメントまでを一括提供するモデルを指します)としてAudiのF1チーム(Audi Revolut F1 Team)のECサイトを運営しています。

ドミニク・ゼーベルガー氏は、AdidasがSalesforceのテクノロジーをどのように活用して、新しいビジネスモデルであるEaaSを立ち上げたかを共有。これにより、1億ドル以上のビジネスチャンスが切り開かれたと言います。

Adidasはわずか8週間でAudiのサイトを稼働させました。ゼーベルガー氏は、AIエージェントの導入によって、人員を増やすことなく事業を拡大できた仕組みについて説明しました。

ゼーベルガー氏は、6月上旬にシカゴで実施された「Salesforce Connections 2026」のセッション「AIとエージェントを活用したサービスとしてのECの拡大」に登壇。次のように話しました。

世の中にはFanatics(編注:スポーツライセンスのアパレル商品・グッズの製造や流通、オンラインECサイトの運営を手がける企業)のようなデジタルディスラプター(破壊的イノベーター)が存在します。彼らは、ライセンスパートナー事業やEaaS事業を急速に成長させることで市場シェアを拡大しています。彼らのサービスには200以上のパートナーを対象としたエンドツーエンドのサービスが含まれており、その多くはAdidasのパートナーでもあります。ご想像の通り、私たちはこの状況をあまり嬉しくは思っていません。

ブランド・小売がECを「代行」する時代に? AdidasのAIエージェントを活用したEC支援の「EaaSサービス」とは
ドミニク・ゼーベルガー氏がEaaSモデルを提供できるようになった仕組みを解説(画像はSalesforceから提供を受けたDigital Commerce360のサイトからキャプチャ)

Fanaticsやその他のマーケットプレイス事業者に対抗するため、Adidasは自社のビジネス能力と技術力で同様のモデルを提供できるかどうかを評価したと言います。その結果、対応できると判断。現在、Adidasは他のパートナー企業とこのECビジネスを推進するための協議を進めているとのことです。

Audiと提携しEaaSを提供

EaaSを提供する他の競合企業は、製品の製造、EC運営、そしてグローバルなフルフィルメントまでを提供しているとゼーベルガー氏は説明。Adidasが競争力を維持するためには、同様のエンドツーエンドのサービスを提供する必要がありました。

ゼーベルガー氏によると、AudiとのEaaS契約の一環として、Adidasは相互のブランドパートナーシップによるメリット、ブランド価値の向上、そして競合他社からの防衛策を提供しているそうです。これは、自社のデジタルサービスモデルを魅力的なものにし、プレミアムなEC体験を提供することを意味します

また、一貫したブランド表現を保証しながらマーチャンダイジングを最適化すること、市場を荒らす競合の拡大に対抗して顧客の市場シェア拡大とデジタルプレゼンスの強化を支援することも含まれています

たとえばAudiのケースでは、AdidasはAudiのF1向けECストアを構築し、2月にこのストアをローンチしました。AdidasとAudiはすでに商品開発で提携していたため、AudiにとってAdidasを選ぶことは「極めて自然な流れ」だったとゼーベルガー氏は振り返ります。

これはあくまでAudiのWebストアです。消費者は、Adidasがこのサイトを運営していることには気づかないでしょう。簡単に言えば、パートナー企業は席に座ってショーを楽しんでいればいいのです。彼らの側での負担はゼロです。私たちAdidasが、彼らに代わってWebショップを運営します。彼らは何もする必要がありません。(ゼーベルガー氏)

ゼーベルガー氏によると、Adidasは200以上の国や地域への販売が可能。世界規模での決済に対応し、100の通貨を利用できるようにしています。さらに、Eメールとチャットの両方を含む、24時間年中無休のカスタマーサービスを提供しているそうです。

そしてもちろん、私たちはAudiのためのグローバルな物流体制も整えています。ドイツから世界中、200以上の配送先へ向けて発送を行っています。(ゼーベルガー氏)

AdidasはどのようにAIエージェントをEaaSに活用しているか

ゼーベルガー氏によると、現時点でAdidasのこの事業に関わっているのは、マーチャンダイザーが1人、コンピューターサイエンティストが1人、そしてサイト運営担当者が1人だけです。AdidasがEaaSをさらに拡大していくためには、AIエージェントの活用が不可欠であると話しています。

AdidasはすでにAudi向けのAIエージェントの構築に取り組んでおり、そのなかにはマーチャンダイジング用のAIアシスタントも含まれています。Adidasは、Salesforceの「Agentforce」というサービスを使ってこれらのAIエージェントを構築しています。

Salesforceのアカウントディレクターであるアンドレアス・キャスパー氏も、ゼーベルガー氏とともにセッションに登壇。キャスパー氏は、扱うブランドが1つだけであれば、商品管理は「非常に簡単」かもしれないと話します。

しかし、20も30もの異なるサイトがあり、すべてのサイトを1人で処理しなければならないとなると、それは不可能です。そのため、マーチャンダイザーの軍団を雇うか、あるいはAIを使うかの二択になります。Salesforceのマーチャンダイジング向けエージェントは、自然な言語を使って検索順位に戦略的な影響を与え、ルールに沿って商品を自動的に目立たせたり、あるいは下位に下げたりすることができます。これは特注で一から作ったものではなく、テンプレートとして用意されているものです。(キャスパー氏)

少数精鋭のチームで数億ドル規模のビジネスを運営するには、多くの人手が必要であり、それはつまり、多くのAIテクノロジーが必要であることを意味します。

ゼーベルガー氏とキャスパー氏は、AudiのF1向けECサイトで、「Adidas Agent」がどのように機能するかというデモを披露しました。

デモでは、ユーザーがTシャツを求めます。「Adidas Agent 」は、ユーザーが探しているスタイル(半袖か長袖かなど)や、色、デザインに関する好みを尋ねます。ユーザーが「グレーの半袖シャツ」と答えると、Adidas Agentはハイパーリンク付きの選択肢を3つ提案し、さらにユーザーの過去の購入行動に基づいてサイズを推奨した上で、そのうちの1つをカートに追加するかどうかを問いかけました。

ブランド・小売がECを「代行」する時代に? AdidasのAIエージェントを活用したEC支援の「EaaSサービス」とは
Salesforceのキャスパー氏が「Adidas Agent」について実演(画像はSalesforceから提供を受けたDigital Commerce360のサイトからキャプチャ)

また、ユーザーが商品の返品を要求する場面のデモも実施。「Adidas Agent」は注文番号とEメールアドレスを求めますが、ユーザーはEメールアドレスのみを送信します。すると、エージェントはいくつかの注文履歴を表示し、ユーザーはリストの2番目のものを返品すると答えます。最後に、エージェントはどの商品が返品の対象となるかを提示しました。

ブランド・小売がECを「代行」する時代に? AdidasのAIエージェントを活用したEC支援の「EaaSサービス」とは
ユーザーの返品手続きを処理する「Adidas Agent」のイメージ(画像はSalesforceから提供を受けたDigital Commerce360のサイトからキャプチャ)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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