日本のオムニチャネルはどう変わる? 米国シカゴから見えてきた近未来のeコマース
連載の最終回となる今回は、世界最大規模のeコマースイベント「IRCE(Internet Retailer Conference+Exhibition)」が開催されたシカゴの街中で見たオムニチャネルの実情、eコマースの近未来を感じることができた米国現地の状況をレポートします。
メーカーが直接販売する動きが加速
「オムニチャネル」で有名なメイシーズやブランドショップが集まるシカゴの一等地を歩いていると、抜群の存在感を示していたのがスポーツブランドの「UNDER ARMOUR(アンダーアーマー)」。日本でたとえると、表参道か銀座の一等地に店舗を構えているイメージです。2015年に「アンダーアーマー」の全体売上高は4500億を突破し、前年比20%増で成長。eコマース事業も急速に伸びています。
店舗では、カテゴリーごとに巨大オブジェや壁面を最大限に活用してビジュアル訴求を実施。「店舗で見て楽しむ」仕掛けを施し、「リアル」だからこそできる情報発信を行っていました。
一方、デジタルとの連携も実施しています。2階のゴルフコーナーに設置した試打エリアでは、ゲーム形式でコースのシミュレーションをしながら試打を行うことが可能。会員登録すると、スコアやランキングなどの結果を自分宛にメールで送信できるようにするなど、デジタル連携を意識した仕掛けも行っています。
「アンダーアーマー」の視察で感じたのは、有名ブランドを持つ企業やメーカーが、一等地に旗艦店やショールーム的な店舗を構え、直接販売で売り上げを拡大しながら、ネット連携で消費者との接点を直接増やす動きが目立っていること。
日本でもメーカーが既存の流通が抱える垣根を越え、ネット販売を含めて「直接販売」に本腰を入れる動きが加速していく予感がしました。今後、百貨店やGMなどには脅威の存在になる可能性があります。
複数のソーシャル活用が必須に
ユニクロがシカゴで展開する店舗も視察しました。ネットで注文した商品を受け取るためのカウンターが設置され、「オムニチャネル」化を推進していることが垣間見えました。
もう1つ特長的だったのがソーシャルを使った販促です。「Facebook」「Instagram」「Pinterest」「YouTube」「Twitter」という米国で主流になっている5つソーシャルを使った訴求はもちろん。急速に広がっている「Snapchat(スナップチャット)」も含めて、情報発信とフォロワーを増やすさまざまな取り組みを行っていることです。
米国ではすでに4つ程度のソーシャル活用は当たり前。多いところでは6つも活用、それぞれのソーシャル特徴を生かした情報発信を行い、拡散を通じて集客やファン作りにつなげています。日本でも20代の顧客を取り込むためには、複数のソーシャル活用が必須になっていくと感じました。
もはやオムニチャネル対応は当たり前に
毎年訪問しているディスカウントストアの「ターゲット」。オムニチャネル取り組み事例として頻繁に取り上げられる企業です。
画期的な変化を感じることはできませんでしたが、簡単な注文はもちろん、短時間での商品配送、店舗での受け取りを簡単に行えるアプリを訴求していました。店舗内にソーシャルでの発信を行うための場所を設置。地道な取り組みとはいえ、着実に進化していることが実感できました。
前回の連載をご覧になればわかるように、米国の流通業界では「オムニチャネル」対応するためのシステム統合/プラットフォームリニューアルはおおむね終了。オムニチャネル対応は「経営戦略のなかでは当たり前の取り組み」として進化をさせていくタイミングに入ってきています。
日本よりは3年程度進んでいる状況ですが、課題を乗り越えた取り組みや失敗も含めて米国企業の事例は参考になるはずです。
米国視察から見えた3つのキーワード
eコマースの最先端を確認するための米国視察から、eコマースを成長させるためのキーワードとして3つのことを感じました。
「アマゾンを中心とした成長モールの活用」「オムニチャネルをごく普通の取組みとして進化させる」「メーカー系企業のダイレクト販売の強化」です。
この3つのキーワードのどれかに経営資源を集中し、AIやパーソナライゼーションといったテクノロジーやソーシャルを活用すること。米国を含めた先進事例を参考にして事業に取り込んでいくことが貴社のeコマースの成長につながると確信しています。
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