IRCE2016から見えた米国eコマース最前線

成長のカギはソーシャルメディア活用 自社ECサイトを伸ばす最新の米国EC事例

今後の日本では何が起きる? 世界最大規模のeコマースイベント「IRCE」からEC事業者に役立つ最新情報を紹介(vol.2)

高木 修

2016年6月22日 8:00

米国のEC業界では、ソーシャルメディアを駆使した“独自モデル”を構築して成長しているEC企業が増えています。なかには2500%という驚異的な成長を遂げている企業も。そんな事例などが明らかにしされた世界最大規模のeコマースイベント「IRCE(Internet Retailer Conference+Exhibition)」(6月7~10日にシカゴで開催)から、最新のEC事例、オムニチャネル事例を紹介します。

自社サイトECを成長させるための3ポイント

大手ではできないスピード感で、“独自モデル”を築いて急成長を遂げた事例をいくつか共有します。その事例に共通する成長のポイントは次の通り。

  • 新しいカテゴリーでビジネスチャンスを創出
  • 単品に絞って販売する
  • 食品以外の定期購入モデル作り

こうした点は、独自サイトを持つ中堅企業の成長のヒントになるはずです。

食品の通販で新しいカテゴリー創出したECサイト「HOME CHEF」。このサイトは2500%という驚異的な伸び率で成長しています。

レシピや食材をすべてセットにして消費者に配送、ユーザーはそれをレシピに沿って簡単に調理して食べるという日本でもありそうなビジネスモデル。「HOME CHEF」が急成長している理由は、「料理が苦手な人」をターゲットに設定しているという点です。

「HOME CHEF」のTOPページ

「HOME CHEF」のTOPページ

「単品」商材の販売に集中するマットレス販売の「saatva」のほか、男性用の髭剃りをユニークなYouTube動画をきっかけに新規客を獲得し、髭剃りの替刃やスキンケア用品を定期購入へつなげる「サブスクリプションコマース」の成功事例も紹介されました。

「サブスクリプションコマース」の事例として取り上げられたECサイト

こうした自社ECサイトを中心に成長している企業の集客方法は「YouTube」のほか、「Instagram(インスタグラム)」の活用といったソーシャルメディアを最大限利用しています。「IRCE」ではソーシャル経由売上が急速に増えているデータも紹介されています。

米国EC売上トップ500社が抱えている各ソーシャルメディアのフォロワー数

米国EC売上トップ500社の各ソーシャルメディア経由の売上推移

最近は、投稿した写真や動画が短時間で消える機能を持つ「Snapchat(スナップチャット)」も、ネット上のセール活用で急速に広がっています。近いうちに、日本でも利用が広がる可能性がありますので注目しておきたいところです。

シカゴのユニクロの入口の写真:あらゆるソーシャルを活用している

シカゴのユニクロの入口の写真:あらゆるソーシャルを活用している

オムニチャネル推進に必要な3段階の手順

日本のEC市場で注目を集める「オムニチャネル」は、米国においてその言葉が強調して使われることはありません。店舗やブランドを持つ企業にとっては、「ごく普通の活動」となっていることが印象的でした。

オムニチャネルの事例で有名なターゲット社の幹部が登壇したセミナーでは、これまでの取り組みを振り返り「いきなり理想のオムニチャネルをめざしても上手くいかないので、手順を追って進めていくべき」と指摘。ステップを踏んで進めることの重要性を説明していました。

その手順とは以下の通りです。

  1. ネットで注文した商品を在庫のある店舗で受け取れるようにする(店頭在庫の活用と店舗スタッフの慣れ)
  2. ネットで注文した商品を店舗や物流センターからスピーディーに届ける(お客さまの指定時間に確実に届ける仕組みを作る)
  3. ネットで注文した商品をどこでも好きな場所・都合の良い時間で受け取れるようにする(全店の仕組み、店舗の一体化)

その結果、ネット売上を増やしながら、ネット注文の内15%は店舗受け取りとなったとのこと。店舗への誘導を増やすことができ、ネットと店舗の相乗効果を出せるようになったそうです。

ターゲット社のセミナーの様子

ターゲット社のセミナーの様子

オムニチャネル化が進むと、日本では「ネットの売り上げは伸びるが、店舗の売り上げが喰われてしまう」と懸念する声もあります。ターゲット社の事例では、店舗での受取来店や商品体験をしたいというユーザーが増え、店舗売上アップつながることが起きています。

米国の事例を聞いてみると、日本の流通企業もオムニチャネルの取り組みを“普通に”進めていかなければ、主に20~40代の顧客を他社(オムニチャネルを推進している企業)に奪われるリスクが大きくなるでしょう。

企業経営にとって最大の効果は、店舗在庫の削減や最適化が進んでいくこと。全社の「資産の有効活用」によって経営効率指標も改善することが説明されました。今後のEC戦略の参考になる点も多いはずです。

◇◇◇

次回は、展示会で得た情報をご紹介。米国のEC支援企業が提供する注目のソリューションや気になったブースなどから、日本のECの近未来を予測していきます。

 

【株式会社いつも.からのお知らせ】

日本最速<アメリカ視察報告>Eコマース&オムニチャネル戦略共有セミナー

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