オンラインコミュニティはどう形成し運営する? Webディレクターのコミュニティ「ディレ森」運営者に聞く継続の秘訣

「ディレ森」は「LINEオープンチャット」を中心に展開し、業界の最新情報や実践的なノウハウを共有する場として約1400人(11月21日現在)が参加。ルールは特に設けず参加者によって自治が進んでいるという。

鳥栖 剛[執筆]

7:00

EC業界ではファンマーケティングの一環でオンラインを中心とした消費者とのコミュニティ形成が注目を集めている。近時ではアスクル、キーコーヒー、ニトリ、そごう・西武などがコミュニティサイトを開設。CRM施策、LTV(顧客生涯価値)アップを目的にコミュニティ形成への取り組みを進めている。コミュニティ形成に重要なポイントとは何か。Webディレクターやデザイナー・ライター・エンジニアなど多彩な専門家が集うオンラインコミュニティ「集まれ!Webディレクターの森(ディレ森)」の取り組みから探ってみた。

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LINEオープンチャットを中心に展開

「ディレ森」は2022年8月にX(旧Twitter)で9000人以上のフォロワーを擁するWebディレクターである幸野剛士氏(通称:タケ、@takelogtakeによって「LINEオープンチャット」に開設された無料のオンラインコミュニティ。

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「ディレ森」の「LINEオープンチャット」(画像は編集部がキャプチャ)

「LINEオープンチャット」は、友だち登録をしていない人とも最大1万人が匿名で参加できる公開チャット機能。業界の最新情報や実践的なノウハウを共有する場として約1400人(11月21日現在)が参加している。そのほかにはオンラインイベントやリアルの交流会なども開催。6月からは企業とクリエイターをつなぐ「プロダクション事業」もスタートした。

コミュニティのメインとなるプラットフォームを「LINEオープンチャット」にした理由は、「LINEは誰でも毎日開くプラットフォームであるから」(タケ氏)。参加者約1400人の職種は、コミュニティ内で聴取したアンケートによると100人中約7割はWEBディレクター、1割がデザイナー、1割がエンジニア、残り1割がその他(SEOコンサルタントやコピーライター、経営者など)だったという。

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取材に応じてくださったタケ氏

「WEB制作者は国内に何十万人といると思います。そう考えるとまだ『ディレ森』の参加者数は決して多くはないです。コミュニティとして大きくしたいという目的があったわけではないのですが、もっと広がっていければ嬉しいです」とタケ氏は話す。

「ディレ森」設立のきっかけはタケ氏がX(当時はTwitter)上で、自身がメンターとなるメンティーの募集をしたことだった。

当時Xのフォロワー数は6000〜7000人くらい。そのなかでメンティーを募ったところ10数人から応募がきました。ただ、私が提示したメンターの費用が合わず、ご縁を築くことはできませんでした。ただ、せっかく多くの人が集まったのに何もしないのはもったいないと思い、コミュニティを作ることにしました。それが「ディレ森」のスタートです。(タケ氏)

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「ディレ森」はWebサイトも用意している

コミュニティの目的は業界の活性化・サイロ化防止

コミュニティの活動目的は業界の活性化とサイロ化を防ぐこと。サイロ化の防止は、10人単位のグループが横のつながりを持つことなく情報共有や連携が取れない状態を避けるためで、サイロ化による業界内での孤立を防ぐのが目的だ。「コミュニティや交流会などを通して、普段は作れない人脈形成につながっています。それをきっかけに仕事につながったり、転職に成功したケースもあります」(タケ氏)

「ディレ森」は細かい参加ルールは定めていない。その分、ユーザー同士による自治が行き届いているという。「LINEオープンチャット」上で、入室の際に必ずあいさつをするといったルールもない。「あいさつは不要。やめるやめないも自由。下手にルールを作るとかいくぐってくる人も出てくる」(タケ氏)。SPAMはシステムで排除。不審なIDや特定のキーワードが入ると排除されるようにし、SPAMなどの流入を防いでいるという。

トークのなかでちょっと不適切な表現だなと思うようなことがあれば、主催側から都度注意はしている。ただその時にも頭ごなしに怒るのではなく、「こういう表現がいいよね」といった注意喚起。参加者同士でも注意をし合うなど自治ができています。(タケ氏)

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「ディレ森」で交わされるトークの例

自治が進んでいる理由にはタケ氏のキャラクターも一役買っているという。

ディレ森の参加者はXでの私のキャラクターを知って入ってくる人が多いです。コミュニティ参加前にX上などで接点があった人など細かくコミュニケーションを取ってきた人も少なくないです。最近は落ち着いていますが、開設当時のXではふざけた投稿をしまくっていました(笑)。ゆるい感じでアカウントを運用していたんですね。ある種、何を言っても許されるようなキャラを形成していました。それを知った上で、参加者のボランティア精神で「ディレ森」は成り立っていると感じます。コミュニケーションが自然発生するような雰囲気。私から何か質問するなど積極的にオープンチャットで話題を投下し、コミュニティが活性化されるようにしています。反対に参加者の困りごと投稿にも積極的に返事をしています。(タケ氏)

タケ氏いわく「コミュニティは現在、自走している状態」。なかには「ギブの精神が強く、お金を取れるレベルの高度な回答をしているケースも多い」とタケ氏は言う。「ディレ森」では専門家を取りこむような取り組みはしていない。オープンチャットで誰も回答できない質問があったときは、タケ氏がX上で質問を呼びかけその結果をフィードバックしたりするという。

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オープンチャット内で課題が解決されていくケースが多い

コミュニティ形成は「運営側が楽しむ」

ファンマーケティングの推進としてオンラインコミュニティの形成を検討するEC事業者は少なくない。形成や運用で重要なことはなんだろうか。タケ氏は「運営側が楽しむこと」が何よりも重要だと指摘する。

コミュニティ形成において、運営側が楽しむことが重要。「参加者のため」の運営を進めていくと苦しくなってしまう。運営側のメリットを考慮して、ストレスがないように運営していくことが大事です。そして、極力、運営が楽な設計がいいでしょう。無理をしない範囲で運営するのが継続の秘訣(ひけつ)です。運営する上でルールがあってもいいと思いますが、半年後とかに必要のないルールは消していくなど更新していくことがベストです。(タケ氏)

「ディレ森」は現在、企業から声をかけられることも増えているという。今後は企業とのコラボレーションを増やしたいと意欲を示している。また、さまざまな地方でのイベント開催も進めていく考えという。

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「ディレ森」には現在、3社のスポンサーが活動を支援している
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