2030年度のIT投資額は31.8兆円で2024年度比で31%増。小売・卸売業は「利幅の少なさから人件費削減や業務効率化といったコスト削減目的の投資が優先される傾向」

富士キメラ総研は、国内IT投資が2030年度に31兆8763億円(2024年度比31.2%増)へ拡大すると予測。小売・卸売は省人化やECのマルチチャネル投資が続く見込み。

鳥栖 剛[執筆]

10:00

富士キメラ総研が実施した国内企業のIT関連投資に関する企業規模別・業種別調査によると、2025年度の国内IT投資額は25兆8952億円となる見込みで、2030年度には2024年度比31.2%増の31兆8763億円に拡大すると予測している。

2030年度のIT投資額は31.8兆円で2024年度比で31%増。小売・卸売業は「利幅の少なさから人件費削減や業務効率化といったコスト削減目的の投資が優先される傾向」
国内IT投資額は2030年度には2024年度比31.2%増に

関税問題やインフレ、人件費高騰といった世界的な情勢変化に加え、少子高齢化や生産年齢人口の減少といった国内課題を背景に、各産業で業務効率化や社会環境の変化への対応を目的としたIT投資が活発化。近年は、レガシーシステムを刷新・最適化する「モダナイゼーション」や、システム・アプリケーション・データを新環境へ移行する「マイグレーション」が成長要因になっているという。

小売・卸売業は省人化・高度化で投資継続

小売・卸売業

小売・卸売業では、慢性的な人手不足解消に向けた投資が継続的に行われ、利幅の少なさから人件費削減や業務効率化といった、コスト削減目的の投資が優先される傾向にある。一方、ECを中心としたマルチチャネル化の進展により、営業・マーケティング関連投資も活発化している。

今後も省人化・自動化への継続的な投資が見込まれ、これまで代替が難しかった接客業務においても、ロボットやアバター活用への投資が進むと見ている。小売・卸売業のIT投資額は、2025年度に2兆2910億円、2030年度には2兆6860億円に拡大すると予測している。

交通・運輸・物流業

交通・運輸・物流業では、法改正などの規制対応や顧客満足度向上に向けた投資が拡大。今後はAIやロボットの活用による人件費削減、管理システム導入の増加が見込まれる。さらに、将来的な輸送力不足を見据え、次世代交通や共同配送の実現に向けた投資拡大も期待されている。

サービス業

サービス業では、業務効率化や人件費との比較によるコストメリットを背景にIT投資が進む。宿泊業では宿泊施設管理システム(PMS)やセルフチェックイン、外食業ではモバイルオーダーや予約管理システムが伸長している。

製造業

投資規模では製造業が最大で、全体の約3割を占めた。独自性や属人性の高いシステムの継承が課題となるなか、個人依存を低減する柔軟なシステムへの刷新が進み、今後もモダナイゼーションの流れが続くと見ている。

企業規模別のIT投資動向

企業規模別では、資金・人材面で余力のある大手企業の投資規模が最も大きい。一方で、中堅・中小企業においてもIT投資の必要性は高まっている。

大手企業がスクラッチ開発したシステムをベースに、ITベンダーがパッケージやSaaSとして展開することで、中堅・中小企業への普及が進み、高い成長率が見込まれるとしている。

中小企業では、IT要員に加え、戦略策定やIT活用を推進するマネジメント層の人材不足、導入・運用における検討事項の多様化・複雑化が課題となっている。このため、戦略策定から日常運用、セキュリティ対策までを包括的に支援するマネージドサービスの需要が拡大。業務プロセスを含めたアウトソーシングとしてBPaaS(Business Process as a Service)の需要も高まると見ている。

注目サービス「トラック受付サービス」「外食業向け予約管理システム」

物流現場では「トラック受付サービス」に注目

富士キメラ総研は、注目分野の1つとして物流現場向けの「トラック受付サービス」をあげる。工場や倉庫で荷物の積み下ろしを行うバースの予約・受付を管理するシステムで、荷待ち時間の削減による物流コスト低減やドライバーの労働環境改善に加え、周辺道路の混雑や路上駐車対策としても注目されている。

2025年4月の法改正により、全トラックで荷役時間の記録が義務化されたことを受け、荷役時間削減に向けた動きが活発化。効率的なバース管理を目的に導入が進んでいる。人件費高騰により事務コスト削減ニーズも高まっており、市場は2桁成長が見込まれる。

2025年の市場規模は前年比12.5%増の45億円、2030年度は2024年度比65.0%増の66億円と予測。今後はWMS(倉庫管理システム)や車両運行管理システムとの連携、生成AIやロボット技術の活用が進み、庫内業務の効率化・自動化が加速することで、堅調に推移すると見ている。

外食業向け予約管理システムも注目

外食業向け予約管理システムの拡大にも注目している。予約情報を電子化し、予約業務の効率化を図るシステムで、店舗における業務効率化ニーズの高まりや、コロナ禍以降の外食需要回復を背景に市場が拡大している。

予約手法の多様化による管理業務の複雑化への対応に加え、インバウンド需要の増加も市場を後押ししている。都市部では導入が進んでいるが、地方では未導入店舗も多く、拡大余地が残る。

今後は予約の一元管理にとどまらず、データ活用によるマーケティング支援や顧客管理機能の高度化により単価上昇も見込まれ、市場を押し上げると予想。2025年の市場規模は前年比17.9%増の79億円、2030年度は2024年度比2倍の135億円に拡大すると予測している。

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