アリババのジャック・マー氏が語る「アマゾン」と「トランプ米大統領」
スイスのダボスで開かれた2017年度世界経済フォーラム(1月18日)で、アリババグループのジャック・マー会長が登壇、「グローバル化は良いと思うが、改善が必要。もっと広範囲なグローバル化でなければならない」と話しました(編集部追記:講演は対談形式)。
ジャック・マー氏、トランプ米大統領を語る
ニューヨークタイムズのコラムニストであるアンドリュー・ロス・ソーキン(Andrew Ross Sorkin)氏の問いに対し、ジャック・マー氏は「過去30年間のグローバル化は6万の大企業に大きく左右されてきた」と指摘した上で、「今までの大手企業による完全なコントロールから脱却し、(アリババは)中小企業に力を与えていく。勢力均衡をめざしている」と述べました。そして、次のように問い返しています。
今後30年間で、私たちが600万の企業の越境ECビジネスをサポートできるとすれば、どうだろうか?
ジャック・マー氏は先日、米大統領のドナルド・トランプ氏と面談し、今後5年間で米国において中小企業100万社の雇用創出を約束しました。
ジャック・マー氏はトランプ氏について、「オープンな考えの持ち主で、私の話に耳を傾けてくれた」と説明。会談の内容は、米国の中小企業の育成、農産物プロジェクト、米中間の貿易でした。ジャック・マー氏はこう言います。「彼(トランプ氏)が会談結果に非常に満足してくれていた」。
米国との貿易黒字に関し、トランプ氏の過去の否定的なコメントや貿易戦争につながる可能性があるかどうかについて、聴衆の1人が尋ねました。そして、ジャック・マー氏はこう答えました。
ドナルド・トランプ大統領にしばらく時間を与えてください。彼はオープンな考えを持っています。米中間の貿易戦争は両国にとっても世界にとっても不幸なことです。それ(貿易戦争)を止めるためなら、(私たちは)何でもします。
ジャック・マー氏が見る「アマゾン」のビジネスモデル
ソーキン氏はアマゾンとアリババのビジネスモデルを比較。どちらが正しいか、どちらが正しくないかと尋ねました。ジャック・マー氏はこう言います。
私はどちらも正しいと思っています。決して1つのモデルでなければならないということはない。もし、正しいビジネスモデルが1つしかなければ、それは退屈です。両社の異なるビジネスモデルは、根本的に言えば異なる哲学に由来します。アリババはセールス・チェーンやロジスティック・ネットワーク全体を保有するのではなく、売り手、サービス会社、物流会社などを支援する側なのです。
アマゾンは1つの帝国のようです。自分ですべてをコントロールしたがります。(それに対して)私たちは1つのエコシステムになりたい。私たちの哲学は、他人の販売やサービスの手助けをし、私たちができないことをやってもらう。私たちはすべての企業をアマゾンのようになることを手助けすることができる。
ジャック・マー氏は、中小企業の売り手1000万社がマイクロソフトに匹敵できるような巨大企業になる日を期待し、このようにコメントしました。
アリババがハリウッドに進出した理由
アリババのハリウッド進出について(編集部追記:米映画監督スティーブン・スピルバーグの映画会社に出資したと2016年に発表)も説明しました。ジャック・マー氏が映画ビジネスに参入すると決めたのは、数年前の事業戦略会議中で語られたことです。
アリババグループは、幸福(Happiness)と健康(Health)のため、いわゆる「2-H戦略」の一環としてショービジネスに参入することを決めました。映画は面白くて楽しい。(ショービジネスは)アリババのすべての事業と同様に、成功については長期的な期間が必要でしょう。
ソーキン氏は、エンターテイメントへの投資を通じて達成したいことを尋ねました。ジャック・マー氏は中国とアメリカの映画を比較し、聴衆から笑いを引き出すコメントをしました。
中国の映画では、英雄はいつも死ぬ。一方、アメリカの映画では英雄は決して死ぬことはありません。私の映画では、英雄を死なせない。
ビッグデータを使いプラットフォーム上の偽造品・模造品を取り除くというアリババの取り組みについても言及しました。ジャック・マー氏は、アリババが偽造品・模造品の検出と撲滅に大きな成果をあげ、法執行機関が行なった違法な売り手に対する取り締まり(2016年に実施)に協力し、400人を摘発しました。そして、アリババが反偽造・模造対策に年間10億元(約165億円)を費やしていることも説明し、次のように講演を締めくくりました。
人々は私たちを批判する。でも、私たちは私たちの進歩に嬉しく思っている。
このコーナーの記事は、アリババグループから記事提供を受けたネッ担編集部が日本用に翻訳しています。