通販新聞[転載元] 2023/9/12 8:30

通販専門放送を行うジュピターショップチャンネルの2023年3月期決算は減収増益で着地した。販管費削減のためにここ数年、新規顧客獲得のために積極化していたテレビや新聞への広告出稿を抑制した影響で売上高は前年実績にわずかに届かなかったものの、前年は苦戦した衣料品などのファッション関連商品の売れ行きが復調するなど堅調に推移したようだ。小川吉宏社長に現状と今期以降の方向性について聞いた。

ジュピターショップチャンネル 社長 小川吉宏氏 
ジュピターショップチャンネル 社長 小川吉宏氏

2023年3月期の増益に寄与した“変革”とは?

――前期(2023年3月)は減収増益(※売上高は前年比1.1%減の1555億3800万円、営業利益は同6.9%増の190億5400万円、経常利益は同6.7%増の194億3600万円、当期純利益は同0.8%減の135億6100万円)だった。

特別編成の特番の際などに合わせて、積極的に投下していた新聞広告やインフォマーシャルの出稿について、当期から費用対効果のよいものに絞ったことで増益に寄与した一方で、売上高は前年実績に少し届かなかったものの、手ごたえは感じている。

前々期(22年3月)が減収減益と振るわなかったが背景には過去の実績に基づいた実績ある商品や番組をベースに計画・進行することが当たり前となり、商品と番組の新鮮味が不足し、お客さまの期待に応えられなかったことがある。これを反省し前期はさまざまな挑戦をして変革を進めた。実質的な力は上向いてきている。社員の努力に感謝した1年だった。

ファッション特化の常設スタジオを新設

――前年は苦戦した主力ジャンルの1つであるファッション商材の売れ行きは。

好調だ。さまざまな挑戦が実を結んできた。たとえばファッション関連商品に特化した常設のスタジオを作ったことだ。これまではファッションでも食品でも家電でも同じスタジオで撮影し、見せ方もある程度、フォーマットが決まっていた。

ただ、特にファッションは商品の特徴をわかりやすくかつ魅力的に伝えるためには奥行や陰影、モデルの動きも出したい。そのため、ランウェイを設けたスタジオをファッション用に固定してカメラワークも動きのあるものに変えた。また、特別編成で1日中ファッションアイテムだけを特別価格で紹介する『ファッションデー』というものを年に何度か放送している。

「年代ごとのテイスト」「コーデの提案コンテンツ」などが上向きの売れ行きに貢献

これまでは各番組は独立していたが、ある共通のコンセプトを持ってお客さまに楽しんで頂けるようにできないかと考えて、たとえばこの時間帯は50年代、60年代など年代ごとのテイストの商品を紹介するような形などの編成を行ってみた。これまでは共通コンセプトを設けた形ではやってこなかったが、まずは実績はある程度、度外視してもよいので、やってみようと。

さらにこれまで過去の実績から平日のみに実施していた『ファッションデー』をお客さまのライフスタイルの多様性を考えて初めて土日など週末にも放送してみた。今年1月からは通販サイトで番組に出演するメーカー担当者や司会者のほか、社員が当社で販売する商品を使ったコーディネート画像を紹介、提案するコンテンツ「ショップチャンネルピープル」を開始した。

コーディネートを提案する「ショップチャンネルピープル」(画像は「ショップチャンネルピープル」のサイトから編集部がキャプチャ)
コーディネートを提案する「ショップチャンネルピープル」(画像は「ショップチャンネルピープル」のサイトから編集部がキャプチャ)

お客さまからは自身の体型や好みに合ったコーディネートを参考にでき、着用イメージの確認やサイズ選びなどに役立てられると評価も上々だ。こうした施策などファッション関連商品を紹介する番組の視聴が明らかに増え、売れ行きも下期から確実に上向きになってきた。過去の成功をそのまま踏襲せず、あえて崩していくこともまったくいとわなくなった。

好調ジャンルはリピート商材

――他ジャンルの商材の売れ行きは。

家電はコロナ禍による巣ごもりで買い替えが一周したようで動きは戻っていない。食品は堅調だ。最も好調なのは化粧品や健康食品だ。

一昨年から一部の番組で画面上にQRコードを表示して、お客さまがスマートフォンで読み取ると簡単に番組にメッセージを送れ、番組の画面にそのメッセージが表示されるという試みを開始しているが、前期はそれが定着し、お客さまとのエンゲージメントが高まったことや、当社はスキンケアはもともと売れ行きがよいがメイク関連もコロナが落ち着き、外出が増えたことで下期から伸びてきたことも大きい。

2023年3月期の目標は増収増益

――今期(2024年3月)の見通しは。

第1四半期(4~6月)は順調で業績は前年実績を上回って推移している。コロナが収束し、外出が増え、ファッションアイテムやコスメなどの売れ行きなども伸びてきた。こうした流れに加えて、本部長クラスの執行メンバーの見直しや“挑戦した人”をきちんと評価する人事制度の見直しなども行い、前期に本気で取り組んださまざまな改革が番組力や商品力を高めた。これらが相まった結果ではないか。コロナ前の業績に迫れるくらい今期通期でも増収増益をめざしていきたい。

――増収増益への具体策は。

引き続き商品や番組の向上を進める。また、お客さまとの接点を拡大する施策を積極的に実施していく。

商品ラインアップ拡充、体験型商品にも注力

――商品面は。

たとえばアパレルに関して言えば、より幅広い年代のお客さまやさまざまなし好に合致するよう百貨店で取り扱うような有名ブランドの商品も紹介していく一方で、カジュアルな商品ももっと拡充して幅広いお客さまのニーズに応えられるようラインナップを充実させていく。

一昨年から注力しているコト・体験型商品についてもさらに充実させていきたい。前期には阪急交通社と組んで、北海道や沖縄、北九州の旅行ツアーを合計4回企画したが売れ行きはよかった。通常のツアーでは名所などを効率的にまわれるような内容が多いと思うが、お客さまのし好に合わせて商品開発を行い、あまり詰め込まずゆったりと旅行を楽しめるような内容としたことなどが好評だった。こうした企画の旅行商品をさらに増やしていきたい

展開する旅行商品の一例(画像はジュピターショップチャンネルのECサイトから編集部がキャプチャ)
展開する旅行商品の一例(画像はジュピターショップチャンネルのECサイトから編集部がキャプチャ)

また、前期はコロナ禍の影響で催行できなかった阪急交通社と組んで行うクルーズについても今年から改めて再開しており、3月から旅客船「MSCベリッシマ」を部分チャーターして8月に催行するクルーズを、5月からは来年5月に催行予定の旅客船「ダイヤモンド・プリンセス」を全船チャーターしたクルーズの販売を開始しており、期待している。

家系図の作成やプロのヘアメイクが整え、カメラマンが撮影する女性向けフォトセッション利用券など前期も好調だった体験型商品などもさらに充実させていきたい

このほか、今年3月からマクアケのクラウドファンディングで開発した商品を当社のテレビショッピングで販売する試みを始めており、第1弾として販売したほうきや枕の売れ行きもよかった。今夏には第2弾商品の販売も行う予定でこうした新たな取り組みも進めたい。

視聴者が見て楽しいと感じる番組づくり

――番組面では。

ファッションで言えば現在、スタイリストがコーデネート提案をしながら商品を紹介する「VENUS NAVI(ヴィーナスナビ)」という番組を放映中だが、ブランドの垣根を超えてファッションを提案する番組は面白くお客さまからも好評だ。こうした番組をもっと増やしていく。

また、ある地方から当該地域の特産品などを現地から生中継で紹介・販売する「日本を見つけよう」を3年ぶりに復活させる。中継番組は昨年も北海道旅行を販売した際に洞爺湖から、また、陶器を紹介した際に東京・銀座の陶器専門店から簡易中継でスタジオと結んで放送し好評だった。「日本を見つけよう」だけでなく、お客さまに楽しんで頂けるような番組を増やしていきたい

顧客接点拡充の打ち手とは?

――顧客との接点拡大のための施策とは。

お客さまから寄せられた質問や意見などに回答する非販売の番組「Oh!Cha15(お茶行こう)」の放送を昨年12月から開始するなどの取り組みを行っている。

昨年6月にはテレビ画面で当社番組の生放送や編集した番組などが視聴できるテレビアプリの配信、昨年10月には「ヤフーショッピング」、今年5月には「楽天市場」と仮想モールへの出店も始めて、想定以上の売れ行きとなっている。

ライブコマースに手応え

一昨年から開始したインフルエンサーを活用したライブコマースサービス「コレイヨ」も試行錯誤しながら進めて売り上げも前年比で数百%アップしており、さらによりよい最適なやり方を模索していこうと思う。

ライブコマースサービス「コレイヨ」のイメージ(画像はジュピターショップチャンネルのプレスリリースから編集部がキャプチャ)
ライブコマースサービス「コレイヨ」のイメージ(画像はジュピターショップチャンネルのプレスリリースから編集部がキャプチャ)

こうしたお客さまとの接点を増やす取り組みを、デジタルサービスの強化も含めて行っていくために昨年4月にお客さまの声を収集・分析する部門を一元化して、担当部門を強化し、情報の収集とその情報を落とし込んだ施策を進めているが、さらに今年4月に「3554認知&新規獲得推進準備室」を新設した。

新設部署での立案進む

これからのお客さまの中心となる世代である35歳から54歳までのお客さまで、現状、あまりテレビを見ないであろう層に対してタッチポイントを作っていくための施策を行っていく目的だ。同組織では現状、色々なビジネスプランの立案などを行っている。

既存顧客はもちろん、まだ当社を知らないお客さまとの接点を増やすべく、さまざまな取り組みを進めていきたい。

※記事内容は紙面掲載時の情報です。
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