鳥栖 剛[執筆] 7:30

厚生労働省は10月28日が公表した2024年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、定期昇給実施(予定含む)は一般職で83.4%、管理職で76.8%だった。ベア実施(予定含む)は一般職で52.1%、管理職で47.0%となり、定昇・ベアは2003年以降の調査のなかで最高の実施率となった。

調査は全国の民間企業における賃金の改定額・改定率・改定方法などを明らかにすることを目的に、7月から8月にかけて調査を実施。常用労働者100人以上を雇用する民営企業を対象に、3622社を抽出して調査を行い、1783社から有効回答を得た。

定期昇給制度の有無と実施状況

定期昇給(定昇)制度のある企業における定昇の実施状況(予定含む)は、管理職で「行った・行う」は前年調査比5.0ポイント増の76.8%、「行わなかった・行わない」は同0.7ポイント減の4.3%だった。一般職で定昇を「行った・行う」は同3.9ポイントアップの83.4%(同79.5%)、「行わなかった・行わない」は同1.1ポイント減の2.6%。

厚生労働省は10月28日が公表した2024年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」
「運輸業、郵便業」の管理職は定昇制度の有無・実施率ともにワーストに(画像は厚労省の公表資料から編集部がキャプチャ)

産業別では、「卸売業、小売業」の管理職で定昇制度ありは84.1%で実施率は83.1%、一般職が制度ありは実施率ともに87.5%だった。「運輸業、郵便業」の管理職は定昇制度の有無・実施率ともにワーストで、制度ありは61.0%で実施率は55.1%だった。ワーストではないが「運輸業、郵便業」の一般社員は制度ありが72.2%、実施率69.9%と平均より低い。なお、一般社員の定昇制度有無と実施率のワーストは「生活関連サービス業、娯楽業」だった。

厚生労働省は10月28日が公表した2024年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」
定昇の実施割合は管理職・一般職ともに2003年以降最高に(画像は厚労省の公表資料から編集部がキャプチャ)

ベースアップの実施状況

定昇制度がある企業のベースアップ(ベア)実施状況(予定含む)は、管理職では「ベアを行った・行う」は同3.6ポイント増の47.0%、「ベアを行わなかった・行わない」は同2.9ポイント減の18.1%。一般職で「ベアを行った・行う」は同2.6ポイント増の52.1%、「ベアを行わなかった・行わない」は同3.3ポイント減の14.9%となった。

厚生労働省は10月28日が公表した2024年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」
「卸売業、小売業」のベア実施は管理職・一般職ともに平均以上に(画像は厚労省の公表資料から編集部がキャプチャ)

産業別では、「卸売業、小売業」のベア実施は管理職で53.2%、一般職は56.8%だった。「運輸業、郵便業」のベア実施は管理職が25.5%、一般職は33.4%。ワーストではないものの他業種と比べ低い実施水準となった。

厚生労働省は10月28日が公表した2024年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」
ベアの実施率も管理職・一般職ともに2003年以降最高に(画像は厚労省の公表資料から編集部がキャプチャ)

企業が賃金改定に重視した要素

2024年中に賃金の改定実施(予定企業も含む)企業が、賃金改定について最重視した要素は「企業の業績」が同0.8ポイント増の35.2%でトップ。「労働力の確保・定着」が同1.8ポイント減の14.3%、「雇用の維持」が同1.2ポイント増の12.8%と続いた。

厚生労働省は10月28日が公表した2024年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」
賃金改定に当たって最重視した要素は「企業の業績」がトップ(画像は厚労省の公表資料から編集部がキャプチャ)

なお「企業の業績」を重視したと回答した企業で、企業の業績評価が「良い」と回答した企業は 45.6%。「悪い」が15.2%、「どちらともいえない」が37.9%となった。業績評価の理由では、「良い」の回答企業は「販売数の増加・減少」が 35.0%で最多。「悪い」の回答企業もその理由は「販売数の増加・減少」が 9.1%で最多となった。

厚生労働省は10月28日が公表した2024年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」
賃金改定の企業で業績評価が「良い」の回答は45.6%に(画像は厚労省の公表資料から編集部がキャプチャ)
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