中川 昌俊 2015/3/12 9:00

大手家電ECサイト「家電専門店まいど」を運営するディーケーシーは3月6日、運営するすべての通販サイトを閉鎖した。「Yahoo!ショッピング」のキャンペーン時などに不正にポイントを取得していたことが一部メディアで報道されており、そのことが原因で閉鎖したとみられる。

ヤフーでは、ディーケーシーがポイントを不正に取得していたことを認めており、現在、警察と協議して告訴を検討しているという。一方、ディーケーシーが出店していた「楽天市場」などの他のモールでは、こうした被害は確認されていない。ディーケーシーの不正行為は、ヤフーが2013年10月から実施している、出店手数料無料化の“スキ”を突いたものと考えられる。

「家電専門店まいど」ヤフーショッピング店では、3月6日で閉店した旨を掲載している

「家電専門店まいど」ヤフーショッピング店では、3月6日で閉店した旨を掲載している

楽天市場、ポンパレモールでの被害は確認されていない

「Yahoo!ショッピング」では集客力を高めるための施策として、増額ポイント分の原資をヤフーが負担し、定期的に「ポイント10倍」などのポイントアップ企画を行っている。ディーケーシーはこうしたキャンペーン時に、複数のIDを利用して自社の商品を購入し、ポイントを不正取得したとみられる。

ただ、モール運営会社がポイント原資を負担して開催するキャンペーンは、他のモールでも実施されているが、ディーケーシーが出店していた他のモールでは被害は確認されていない。

楽天では「報道があった後にログを詳しく調べてみたが、不正に当たる行為は確認されなかった」(広報)。また、「ポンパレモール」を運営するリクルートライフスタイルでも問題は確認されていない。

「Yahoo!ショッピング」の監視体制の甘さを指摘する声も

では、どうして「Yahoo!ショッピング」店だけで、ディーケーシーの不正が行われたのか。

ヤフーでは2013年10月に「eコマース革命」と称して、従来売り上げの2~6%を手数料として徴収していた料金体系を無料化。店舗運営に必要な手数料は、アフィリエイト手数料の1%とポイント原資の1%、合計2%だけだった。

一方、他のモールではアフィリエイト手数料やポイント原資に加え、売り上げに対するロイヤルティが必要なため、最低でも合計で売り上げの5%程度が手数料として徴収される。こうした手数料の差に目を付け、ディーケーシーによる「Yahoo!ショッピング」での不正行為が引き起こされたと考えられる。

今回の問題について、「Yahoo!ショッピング」のパトロール体制の甘さを指摘する声もある。「Yahoo!ショッピング」のある出店者はこう指摘する。

楽天は2014年の2重価格問題以降、ECサイト上の表記のほか、購買状況に対するパトロールを強化している。少しでもおかしな動きがると、すぐに連絡が来る。一方、『Yahoo!ショッピング』では明らかに楽天では“NG”になるような2重価格表示があっても、放置されているケースが多い。出店者が一気に増えたことで、審査に手一杯で、サイト監視がおろそかになっているのではないだろうか。

また、別のある出店者は「キャンペーン時は通常時の20倍の売り上げになっていたと報道されているが、(ディーケーシーは)手数料を徴収されるのを少しでも回避するために、銀行振り込みで架空決済をしていたと思う。一番気を付けて監視しなければならない銀行振り込み決済で、大量の注文があれば、少し注意すれば怪しいと気が付く。ヤフーの監視体制が甘かったのだろう」と推測する。

自社商品を購入することによるポイントの不正獲得は、出店手数料が無料化になったときから出店者間で話題になっていたようだ。

「今回は露骨なやり方だったため、発見されることになった。わからない範囲で不正を働いている事業者もいると思う。自社のショップに対する良いレビューを書くため、個人IDを使って自社商品を購入するという行為は、手数料無料化前から頻繁に行われていた。レビューが書けて、さらにちょっとしたお小遣い稼ぎのような感覚で、自社商品を購入してポイント付与率を高めている事業者もいるのではないか」と指摘する出店者もいる。

監視体制の状況、ディーケーシーと同様のケースがあったかについてヤフーに問い合わせたが、「警察の捜査に関わる部分でもあるため、詳しいことは話せない」(広報)とコメントしている。

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