「家電専門店まいど」がポイントを不正取得? ディーケイシーが廃業した理由とその背景
家電の通販サイト「家電専門店まいど」を運営するディーケイシーが、ヤフーの仮想モール「ヤフー!ショッピング」からポイントを不正に取得していた疑いがあることが分かった。ポイントアップのセール時にディーケイシーの社員がヤフーの同社店舗で架空注文し、ポイントを取得するというもので、ヤフーでは刑事告訴も検討。ディーケイシーは同社サイトで閉店を告知しており、ヤフーをはじめ各社の仮想モール店もすべて閉店している。ディーケイシーは年商100億円を超える大手ネット販売専業だけに、事実とすれば波紋を呼びそうだ。
1998年設立のディーケイシーはネット販売専業としては老舗で、各社の仮想モールでの受賞歴も多く、直近では「楽天市場」の「ショップ・オブ・ジ・エリア2014」の関東・甲信越エリアに選ばれたほか、ヤフー!ショッピングでは「年間ベストストア」の12年・13年で連続2位となっている。ユーザーレビューでも評価が高く、各社仮想モールにとっては「優良店」といえる存在だった。
2014年3月期の売上高は、前期比7・4%増の116億円だった。薄型テレビなどにエコポイントが付与されていた09年頃に売り上げを急拡大。エコポイント特需後の需要急減に苦しむ家電のネット専業が多い中で、同社はその後も売り上げを伸ばしていた。
一部報道によると、ヤフー!ショッピングのセール時に、ディーケイシー社員が自社のヤフー店で商品を大量に注文。ところが実際には購入しておらず、ポイントだけを不正に取得していた疑惑がある。こうして取得したポイントは数億円規模にのぼるとみられる。
ヤフー!ショッピングの場合、ヤフーがポイント増量分を負担するセールをたびたび実施しており、10%ポイント還元セール時にこうした架空注文を繰り返していたとすれば、ディーケイシーに負担のない形で多額のポイントを得られたことになる。また、ヤフー!ショッピングでは2013年秋から手数料を無料にしており「商品が売れても負担が発生せず、狙われやすい状態だったのではないか」(業界関係者)との見方もある。
ヤフーではディーケイシーがポイントを不正に取得した疑いがあることを認めた上で「警察に相談しており、刑事告訴も考えている」(広報室)とコメント。一方、ディーケイシーは廃業を告知、6日付で各仮想モールに閉店の連絡をした。「先月末頃から仕入れを絞っているようだった」(同業他社)との声もあり、しばらく前から廃業に備えていた可能性もある。同社が入居する東京都大田区のビル(画像)は1階のシャッターが閉まっており、外部からは入れない状態に。2月に同区内から移転したばかりだった。同社では本紙記者の取材に対し、インターフォン越しに「社長が不在なので分からない」。また、同社代理人の弁護士は「何もコメントできない」とした。
今回の事件の背景には、家電通販ならではの事情もありそうだ。家電のネット販売専業はメーカー販売会社経由の正規ルート以外から商品を仕入れることで、大手家電量販店の通販サイトよりも安い価格で販売、売り上げを伸ばしてきた。こうした商品は元をたどると大手量販店の仕入れ品であることが多く、ネット専業やブローカーが量販店のセール時に購入して転売しているケースだけではなく、業者に対して在庫を販売する、事実上の「横流し」をしている量販店もあった。
ところが、近年量販店がネット販売に注力し、価格比較サイトでも最安値付近をつけることが増えており、こうした横流しも「以前に比べるとかなり減った」(同業他社)という。そのため、仕入れに苦戦するネット専業も出ているようだネット専業やブローカーが量販店のセール時に購入して転売しているケースだけではなく、業者に対して在庫を販売する、事実上の「横流し」をしている量販店もあった。家電は特に消費者が価格に敏感なジャンルで、なおかつ利益率の低い商品だけに、ネット専業各社は人気商品を安価に仕入れるため、単発でのルート確保に血道を上げている。
ディーケイシーが架空注文で得たポイントは、商品仕入れに活用するため、ヤフー!ショッピングの他社店舗で利用していたと報道されており、ポイントの不正取得に手を染めていたのが事実とすれば、量販店のネット販売への注力で絶たれた仕入れルートの確保が目的となっていた可能性もありそうだ。
こうした不正取得は他モールでは行われていなかったのだろうか。楽天では「6日にディーケイシーから閉店の連絡があった。ポイント不正取得といった問題はない」(PR推進部)。「ポンパレモール」を運営するリクルートライフスタイルでも「そのような問題はない」(広報・ブランドマネジメントグループ)とコメントした。また「DeNAショッピング」のディー・エヌ・エーでは「現在調査中」(広報部)としている。
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