瀧川 正実 2016/3/8 7:00

「Yahoo!ショッピング」は2016年、どんな施策を打つのか? 急増する流通総額のけん引役であるポイントの“爆投”は続くのか? ヤフーの執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が「Yahoo!ショッピング Best Store Awards2015」(3月3日開催)で語った2016年の戦略、月商1億円超が2倍に増えたという2015年実績の振り返りなどから、「Yahoo!ショッピング」のこれからを探る。

小澤氏が掲げる4方針、2016年は「加速度が増すかもしれない」

4つの方針を覚えてほしい。加速度が増すかも知れない

「Yahoo!ショッピング Best Store Awards2015」に参加した受賞店舗の前で、小澤氏は2016年の戦略についてこう説明した。その4つの方針は「リピート施策」「集客」「販促施策」「信頼性」。

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り①

① ロイヤルカスタマーの醸成

カギを握るのは「Yahoo!プレミアム」会員などヤフーグループの会員基盤。

ヤフーは2015年、まず「Yahoo!プレミアム」会員にターゲットを絞ってポイント施策を集中的に実施。買い物時に常時ポイントが5倍付与される特典や会員限定クーポンなどを提供した。その成果もあり、プレミアム会員による取扱高は2016年1月度に前年同月比226%で成長。総取扱高に占める「Yahoo!プレミアム」会員による取扱高シェアは56%まで上昇した。

小澤氏はこう言う。

まだまだ伸びている。「Yahoo!プレミアム」会員は1000万人以上いるが、何分の1のユーザーが使うだけで、このような状況。伸びしろだらけだと思っている。ご案内するだけで購入していただける。

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り②
ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り③

2016年に注力していくのが「Yahoo!プレミアム」会員以外への「Yahoo!ショッピング」の誘導策。「『Yahoo!プレミアム』会員の成功モデルを横に持っていく」(小澤氏)案が主軸になる。

  • ソフトバンク契約者 → 3000万人超
  • Yahoo! JAPANカード、ソフトバンクカード(おまかせチャージ) → 約180万人(2015年12月末)
  • Tポイント会員 → 5700万人超(2016年1月末)
ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り④

4月1日から「Yahoo!ショッピング」出店者が負担するポイント原資負担料率を、現在の「1%~」から「2.5%~」に変更する施策で生じるポイントを、「ソフトバンク契約者の方に差し上げる案もある」(同)。

具体策は言及を避けたが、構想案としては割引きやクーポン活用などの可能性にも指摘。「『Yahoo! JAPANカード』、Tポイントなどの会員にしっかりマーケティングしていく」と小澤氏は言及した。

② 集客強化、マーケティングオートメーションの実現

2016年、出店者に向けてマーケティングオートメーションツールの提供を始める。子会社のバリューコマースを通じて2015年12月に買収したデジミホの顧客情報管理ソフト「Rエイト(∞)」(アールエイト)だ。

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り⑤

「アールエイト」は、既存顧客の行動履歴や購買情報を蓄積・分析し、各顧客に合った情報を適切なタイミングでメールなどで通知できるCRMツール。「Yahoo!ショッピング」での活用について小澤氏は次のように説明する。

デジミホさんの機能を『Yahoo!ショッピング』の皆さんに開放していく。ツールを使うなどして、ロイヤルカスタマーにアプローチできるようにする。

また、具体的な施策内容については言及を避けたが、「Yahoo!検索」を中心にショッピングへの集客を強化する。「早ければ来期の早々にテストを始めて、テスト結果を見ながら早ければ下期に導入したい」(同)

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り⑥

③ 2016年の販促施策を公表

5のつく日はポイント5倍、全員まいにちポイント5倍……など、2015年は定常的に大規模なポイント付与の施策を実施した。小澤氏は2015年を振り返り「べた付けのもの(いわゆる定常的なポイント施策)はお金があったからできた。(2016年のポイントキャンペーンは)季節と状況を見ながらやる。ただ、仮説ではある。どのようにポイントを付ければいいのかわかってきた」と説明している。

こうしたことを含め、2016年の大きな販促セールとして5つを掲げた。

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り⑦

特に力を入れるとみられるのが2016年6月に行われるヤフーの「20周年感謝祭」。内容はまだ決まっていないようだが、「全社的にセールをやろう」(同)という意見があがったという。

今後のポイント施策としては、定常的な大規模ポイントの付与施策は縮小し、イベントごとに大きな販促を仕掛けていくものと考えられる。

④ 信頼性の高い場所作り

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り⑧

2015年に詐欺目的サイトが相次いぎ見つかったことから、不正検知などの強化によるパトロールを厳格化したヤフー。だが、2016年1月、詐欺目的で店舗を開設する悪意ある第三者が再び現れた。

その該当サイト「ヒロタストアー」の詐欺行為について、ヤフーは事態発生から数時間で把握し、店舗閉鎖などの対策を矢継ぎ早に実施した。

こうした詐欺サイトの出現は、販売手数料の撤廃など出店ハードルが下がったことに起因するが、小澤氏には出店審査を厳格化する考えはない。

「eコマース革命」の理念は踏襲しながら、パトロールなどの強化で詐欺行為の事前防止に取り組む方針。「審査基準を厳しくすることはしないが、悪いことがあれば対処していく。パトロールの強化検索ロジックをいじったりするなどパトロールをしっかりやり、何かあったときの対応を強化する」(小澤氏)と気を引き締める。

こうしたことを踏まえ、次のように方針を説明した。

クオリティが担保されているようであればショッピングモールとして推していく。そうではないところは、パトロールをし、検索結果など、しっかりと厳密なルールでクオリティをコントロールする。

月商1億円超えの出店者が倍増 2015年の振り返り

月商1億円超えストアが倍増した。もっともっと売りたい、もうかりたいというストアが増えてきた。「Yahoo!ショッピング」は、ちょっとは売れると思ってもらえるような場になりつつある。以前はオオカミ少年的なところがあったが、やっと数字で提示できるようになった。

急成長ストアの事例

  • スポーツ用品 → 2016年12月度に250%成長(前年同月比)
  • オートバイ、自転車 → 2016年12月度に230%成長(同)
  • コスメ、香水 → 2016年12月度に270%成長(同)
  • 花、ガーデニング → 2016年12月度に260%成長(同)
ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り⑨

こうした急成長店舗は月商で「うん億円も売っている店舗が、そこから何倍も伸している」と小澤氏は説明。セールやクーポンを活用し、売り上げを伸しているという。

特に伸びが顕著なのは型番商品。価格を比較して同じ値段であれば「ポイント還元率が一番高いところで買おう」(小澤氏)。こうした消費行動の好循環が生まれていると指摘する。

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り⑩
ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り⑪

このように出店者の売り上げが伸びている背景の1つには、「PRオプション」というモール内の新広告が影響している。

「PRオプション」はモール内商品検索の結果画面や買い物カゴページ内などのページでレコメンドとして掲載する広告商品(詳細はこちらを参照)。ヤフーのビッグデータを活用し、コンバージョンされやすいユーザーや場所を計算して掲載位置を自動的に決めるもので、コンバージョン課金という料金体系で提供されている。

ヤフーによると現在はテスト段階といい、一定数の出店者に限定提供。ただ、「PRオプション」の利用幅は拡大しており、近く多くの店舗が利用できる環境になりそうだ。

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング」2016年の戦略と昨年の振り返り⑫
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