瀧川 正実 2017/3/6 9:00

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏は「eコマース革命」第二章の幕開けを宣言。「お得革命」と銘打ち、ユーザーの「Yahoo!ショッピング」利用を加速させる。2017年に実施する店舗向け、消費者向けの施策は? 小澤氏が掲げる方針は? 2016年の実績を踏まえながら、2017年の「Yahoo!ショッピング」の戦略を探ってみる。

成長が加速した2016年と4つの施策

2016年の重点施策として掲げた4施策「ロイヤルカスタマーの醸成(リピート施策)」「集客の大幅増(集客)」「販促企画の拡大(販促施策)」「お客様からの信頼(信頼性)」は、2017年も継続する。

2016年4~12月期(第3四半期)累計のショッピング事業取扱高(「Yahoo!ショッピング」と「LOHACO」の合算数値)は3417億円(前年同期比28.7%増)。ショッピング商品数は3年で3倍増の2.5億点、ストア数は16倍の48万1000店まで広がった。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 ショッピング事業取扱高(2016年10~12月期の実績)
ショッピング事業取扱高(2016年10~12月期実績、画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 ショッピング商品数(2016年12月半時点の実績)
ショッピング商品数(2016年12月半時点の実績、画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 出店店舗数(2016年12月半時点実績
出店店舗数(2016年12月半時点実績、画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

3月3日に開催した「Yahoo!ショッピング Best Store Awards2016」で2016年の通信簿を公表、小澤氏は次のように評価した。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 ロイヤルカスタマーの醸成(リピート施策) 集客の大幅増(集客) 販促企画の拡大(販促施策) お客様からの信頼(信頼性)
2016年の評価
  • ロイヤルカスタマーの醸成(リピート施策) → ◎
  • 集客の大幅増(集客) → △
  • 販促企画の拡大(販促施策) → △
  • お客様からの信頼(信頼性) → △

こうしたことを踏まえ、2017年もこの4施策を踏襲すると小澤氏は説明した。

2017年の戦略と2016年の振り返り

① ロイヤルカスタマーの醸成

2016年、集中的に実施したのがターゲットを絞ったポイント施策。「ソフトバンク契約者」「Yahoo!プレミアム会員」「Tポイント会員」「Yahoo!JAPANカード会員」といったヤフーグループ向けのポイント付与施策だ。

たとえば、1000万人以上を抱える「Yahoo!プレミアム」会員に向けたポイント施策では、「Yahoo!ショッピング」で商品購入すると“いつでもポイント5倍”を付与する施策を実施。こうした取り組みの成果について、小澤氏は次のように語る。

グループ会員向けの施策がなかなかうまくいった。全員にお得施策をやるといくらお金があっても足りない。ヤフーにとって大事なお客さまに対し、重点的に特典を付与した。

こうした施策の成果は顕著に現われている。「Yahoo!プレミアム」の年間客単価は、非プレミアム会員と比較すると3.5倍も高いという(比較は2016年2月~2017年1月実績)。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 「Yahoo!プレミアム」会員と非プレミアム会員の年間客単価の差
「Yahoo!プレミアム」会員と非プレミアム会員の年間客単価の差

四半期ベースでのリピート購入者(=既存購入者。前回購入から1年以内に再度購入したID数)は右肩上がりで増加。また、2016年10~12月期の取扱高の内、62%が「Yahoo!プレミアム」会員による購入が占めている

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 「Yahoo!ショッピング」取扱高に占める「Yahoo!プレミアム」会員経由の比率
「Yahoo!ショッピング」取扱高に占める「Yahoo!プレミアム」会員経由の比率(2016年10~12月期実績、画像は編集部がヤフーのIR資料からキャプチャ)
ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 リピート購入者と非リピート購入者の割合
リピート購入者と非リピート購入者の割合(画像は編集部がヤフーのIR資料からキャプチャ)*新規購入者数は、初回または前回購入から1年以上経過して再度購入したID数。既存購入者。前回購入から1年以内に再度購入したID数

ヤフーはグループの会員基盤を中心に展開するポイント施策を継続する方針。2017年2月からは、ソフトバンクのスマートフォンを利用しているユーザーを対象に、「Yahoo!ショッピング」などで購入すると、ポイント10倍を付与(通常は商品本体価格の1%分のポイント付与)する新たな取り組みを開始した。小澤氏はこう言う。

ソフトバンクのスマホユーザーなら、いつでもポイント10倍。期間は5月までだが、ちゃんと成果が出れば、(その後の継続を)考えていきたいと僕は考えている。ソフトバンクのユーザーはとても大事なお客さま。ロイヤルカスタマーの醸成をちゃんとやっていく。

ヤフー社員、ソフトバンク社員も「Yahoo!ショッピング」で購入している。だけど、お願いだからヤフオク! では売らないでくれ、と言っている。

② 集客の大幅増

2016年7月までに検索結果ページの表示を変更。ショッピングに関連するワードで検索した場合、検索結果ページの最上部で商品条件の絞り込みが行えるようにし、「Yahoo!ショッピング」への誘導を強化するデザインに変えた。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 ヤフーでの検索結果
検索結果ページから「Yahoo!ショッピング」への誘導を強化(画像は編集部がキャプチャ)

また、月間150億PVの「Yahoo!ニュース」のヘッダー部分に「Yahoo!ショッピング」への誘導枠を設置するなど、集客の大幅増につなげるための誘導強化を進めた。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 「Yahoo!ニュース」からの誘導も強化
「Yahoo!ニュース」からの誘導も強化(画像は編集部がキャプチャ)

2017年2月後半からは、ソフトバンクのテレビCM「白戸家『クイズ』篇」で「ソフトバンクユーザーならYahoo!ショッピングで10倍のポイントが付与される」といった告知を開始。「いまのところ結果はなかなか良い」と小澤氏は説明した。

今後の施策としてあげたのが「Yahoo!ショッピング」の実店活用。ソフトバンクが全国展開している3000店以上のソフトバンクショップを活用し、「Yahoo!ショッピング」のポイント付与特典などを告知していく予定という。

一部の店舗ではすでに、「Yahoo!ショッピング」のポイント告知を行っている。こうしたことを踏まえ、小澤氏は次のように宣言した。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 ソフトバンクショップではポスターなどを活用して「Yahoo!ショッピング」のポイント付与策などを告知
ソフトバンクショップではポスターなどを活用して「Yahoo!ショッピング」のポイント付与策などを告知

(ソフトバンクショップの活用は)「Yahoo!ショッピング」の店舗化だ。まだまだやる。ソフトバンクとヤフーは本気でECに力を入れていくんだ――これに気付いたショップが勝てる

③ 販促企画の拡大

ヤフーはセールが下手だと言われてきた。だが、おぼろげながら形ができてきた。「5」のつく日(5日、15日、25日)は売れる。11月11日の「いい買物の日」は過去最高の取扱高を記録した。年末セールも売れた。

こう説明する小澤氏は2016年、販促企画であることを学んだ。それは、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスに絡んだセールである。小澤氏は次のように振り返る。

ヤフーとソフトバンクに(資本)関係があることが知られていないためか、2~3年前の優勝セールは売れなかった。だが、2016年は優勝を逃したもののセールを行った。そしたら売れた。優勝しなくても売れるのがわかった。要するに、お客さまはセールが好き、何かをきっかけにしてセールに参加したいのだと。だから、優勝しなくてもセールを継続していく

小澤氏は続けて、「販促施策はずっと継続していく。まだまだお得なことが続く」と説明した。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏
「Yahoo!ショッピング Best Store Awards2016」で2017年の戦略を説明する小澤氏

④ お客様からの信頼

2016年に「Yahoo!ショッピング」へ突きつけられた課題。それは、「ロイヤルカスタマーの見る目は厳しい」(小澤氏)ということ。

ヤフーが2016年10~12月に行ったユーザー調査によると、最も改善要望が多かったのが配送面。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 ユーザーからあがった「Yahoo!ショッピング」の改善要望ランキング
ユーザーからあがった「Yahoo!ショッピング」の改善要望ランキング

商品が配送される日はいつで、いつ届くのか――こうしたことがユーザーの負担になっている」。小澤氏はこう課題を指摘。「検索面も迷惑をかけている。検索会社なのに、検索機能がいまいち。認識しているので、改善していく」。小澤氏はこう続けた。

2017年はこうしたユーザーの声をシステムに反映していく。配送日の表示、二重価格のシステム制御、キャンセル率をストア評価に反映するなどして、ユーザーと店舗、店舗とヤフーといった関係性を構築する。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 配送日の表示、二重価格のシステム制御などに取り組む
配送日の表示、二重価格のシステム制御などに取り組む

eコマース革命第二章は“お得革命”

eコマース革命は出店料を無料にするなど、売り手に対する革命だった。これからeコマース革命は第二章に入る。第二章は買い手への革命だ。やりたいのは“お得”革命。これを実現したい。腹を決めて“お得革命”をしっかりとやり遂げたい。ソフトバンクとYahoo!ショッピングの連動などが2017年にやること。Yahoo!ショッピングの出来上がった流れにしっかりと乗ってほしい。

ヤフー執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング2017年の戦略」と「2016年の振り返り」 「eコマース革命」は第二章「お得革命」に突入した
「eコマース革命」は第二章に突入した

小澤氏は戦略説明の最後、出席した店舗にこう呼び掛けた。

*3月6日12時に一部スライドを変更しました。
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