大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ

ヤフー小澤氏が語る「Yahoo!ショッピング&PayPayの2019年戦略」と「2018年の振り返り」

「2020年代初頭、楽天やAmazonを超える国内NO.1のECサービスになる」というヤフー。「Yahoo!ショッピング」の2019年戦略などを小澤隆生常務執行役員(コマースカンパニー長 ショッピング統括本部長)が語る

瀧川 正実

2019年3月4日 7:00

「Yahoo!ショッピング」は、間違いなく(楽天市場、amazon.co.jp、Yahoo!ショッピングの)3つのモールでもっとも成長している。今年もヤフーはがんばります。

ヤフーが3月1日に開いた「戦略共有会」(「ベストストアアワード2018」の中で実施)で、登壇した“おざーん”こと小澤隆生常務執行役員(コマースカンパニー長 ショッピング統括本部長)は、「ベストストアアワード2018」受賞店にこう宣言した。小澤常務が語った2019年の方針、2018年の振り返りをまとめた。

2019年の方針

ヤフーは今後の成長に向けて「伸び代をしっかりのばす」「PayPay」で新客を増やす」「良いお店が売れる仕組み」の3点をあげた
ヤフーは今後の成長に向けて「伸び代をしっかりのばす」「PayPay」で新客を増やす」「良いお店が売れる仕組み」の3点をあげた

「PayPay」でネットと店舗を連動

彗星(すいせい)の如く登場した「PayPay」はわずか4か月でユーザーは400万人を超えた。第2弾キャンペーンをやっているが、(登録者数は)一千万単位はいくだろう。

「PayPay」はわずか4か月でユーザーは400万人を超えた

小澤常務は「PayPay」についてこう評価。今後、「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」などと連携する予定を踏まえ、「『PayPay』がたまったユーザーは『Yahoo!ショッピング』に流れ込んでくる」(小澤常務)と説明する。

「Yahoo!ショッピング」は「PayPay」からの新規ユーザーという新たな新規獲得チャネルができた

ソフトバンクとヤフーの共同出資会社PayPayは、2018年12月に実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」に続き、「第2弾 100億円キャンペーン」を2月12日にスタート(期間は5月31日まで)。

第2弾は1回のユーザーへ還元する上限額を1000円、1人あたりの上限額を合計5万円までとし、付与額が100億円に達した時点で終了する。

「多くのお客さまに毎日使っていただくのが目的」(ヤフー)とした第2弾のスタートで、「PayPay」を使うユーザーがさらに増えると予測。小澤常務は、そのユーザーの多くが「Yahoo!ショッピング」で買い物すると見込んでいる。

リアル消費によるPayPayをECへ
3月1日現在、「Yahoo!ショッピング」での「PayPay」対応時期は明らかにされていない

ただ、当初は2019年2月から「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」での決済に「PayPay」は対応するとしていたが、1月末に延期を発表。対応時期について小澤常務は言及しなかったものの、こう出店者に呼び掛けた。

ユーザーは「Yahoo!ショッピング」でたまった(ポイントの)「PayPay」を実店舗でも使うようになるネットと店舗が連動できるようになるのだ。期待して下さい。

良いお店が売れる仕組みを強化

「Yahoo!ショッピング」は良いお店が売れる仕組みを強化するという

良いお店、良い物流を持っているお店で買ってもらった方がユーザーは満足する。だが、ヤフーはAmazonのように自社で物流もっていない。なので、良いお店が売れる仕組みを強化する

今後の方針をこう説明した小澤常務は、「良いお店」の評価を示す例として、出荷の速さや出荷遅延率などの指標について言及。店舗平均と上位500ストアの数値を公表した。

Yahoo!ショッピングの店舗平均と上位500ストアの数値
店舗平均と上位500ストアの各種数値

今まではどっちかと言うと公平にやってきたが、良いお店で買った方がユーザーは満足する。昨年、ビックマーチャント(ヤフー内の社内用語で、セール時にヤフーが良いお店を選定してイベント企画を行うというもの)という仕組みも始めた。たとえば、良いお店はセール時に検索結果で上位に出るなど、良いお店が売れる仕組みを強化する。(小澤常務)

伸びしろを伸ばす

「ヤフーで買い物することが当たり前になってきたというユーザーが増えている」。eコマース革命後の「Yahoo!ショッピング」についてこう評価した小澤常務は、そのけん引役としてソフトバンクとの連携をあげた。

「Yahoo!ショッピング」の取扱高
「Yahoo!ショッピング」の注文者数

ソフトバンクユーザーを「Yahoo!ショッピング」に呼び込む施策を実施しており、「ソフトバンク スマホユーザーならポイント10倍」はその代表例。3000店以上のソフトバンクショップ店頭で、ポイント付与特典などを含めた「Yahoo!ショッピング」利用の促進接客なども行っている。

こうした施策などにより、ソフトバンクユーザー経由の取扱高と注文数は2017年比で1.7倍に増加。「ソフトバンクを使う若い女性などが、『Yahoo!ショッピング』に来ている」(小澤常務)と言う。

ただ、ソフトバンクユーザーの中で「Yahoo!ショッピング」を利用したことがある経験者は45%にとどまっている。利用したことがない55%のユーザーの開拓には大きな伸びしろがあると指摘。ソフトバンクユーザーへの手厚いプロモーションを2019年も継続する

ソフトバンクユーザーの中で「Yahoo!ショッピング」を利用したことがある経験者は45%にとどまっている

2000万IDを超す月額462円の会員サービス「Yahoo!プレミアム」。「Yahoo!ショッピング」の取扱高の多くを「Yahoo!プレミアム」会員経由が占めている。ただ、「Yahoo!プレミアム」会員の「Yahoo!ショッピング」利用率は49%にとどまっており、2019年も「Yahoo!プレミアム」会員向けのポイント5倍施策を継続する方針。

2019年も「Yahoo!プレミアム」会員向けのポイント5倍施策を継続する
2019年も「Yahoo!プレミアム」会員向けのポイント5倍施策を継続する

2018年の振り返り

取扱高、訪問回数、CVR、注文回数、1億円超え店舗などの2017年比較

小澤常務は「Yahoo!ショッピング」の成長を示す各種データを公表した。取扱高、注文回数など、画像で各データの伸び率を確認してほしい。

ヤフーのeコマース取扱高
2017年(1~12月)と2018年(1~12月の取扱高)

ヤフーは2019年3月期からeコマース取扱高の定義を変更。従来の「eコマース国内流通総額」は「eコマース取扱高」に変更し、物販に加え「Yahoo!トラベル」やデジタルコンテンツなどを含む数値になる。物販は「ヤフオク!」「ショッピング事業」「アスクルBtoB」「その他」に分けている。

ヤフーのeコマース取扱高の定義
2019年3月期からのeコマース取扱高の定義(各種数値は2018年度の実績数値)
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における「Yahoo!ショッピング」の取扱高
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における「Yahoo!ショッピング」の取扱高
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における「Yahoo!ショッピング」のユーザーあたりの訪問回数
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における「Yahoo!ショッピング」のユーザーあたりの訪問回数
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における「Yahoo!ショッピング」の購入コンバージョンレート
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における「Yahoo!ショッピング」の購入コンバージョンレート
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における「Yahoo!ショッピング」の注文回数
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における注文回数
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)におけるクーポン経由の取扱高(平均)
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)におけるクーポン経由の取扱高(平均)
2017年(1~12月)と2018年(1~12月の取扱高)における「ベストストアアワード2018」受賞店の取扱高
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における「ベストストアアワード2018」受賞店の取扱高
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における月商1億円突破の店舗数
2017年(1~12月)と2018年(1~12月)における月商1億円突破の店舗数

PC版の「Yahoo! JAPAN」トップページ右下に「Yahoo!ショッピング」のコーナー設けた。1日のPVは1.6億PVに達するという。なお、「Yahoo!ショッピング」トップページのPCは1800万PV。小澤氏は「(トップページは)全部ショッピングにすればいいじゃないか、と提案したが、もちろんダメだった」と報告した。

「Yahoo!ショッピング」は「Yahoo! JAPAN」トップページとの連携も始めた
「Yahoo! JAPAN」トップページとの連携も始めた

UI、UXについて

小澤氏は「Yahoo!ショッピング」について、(楽天市場など)3つの売り場で最悪のサービス、最悪のシステムだと思っている。お客さまにも出店者さまにも申し訳ない」と陳謝。ユーザーインタフェース(UI)、ユーザーエクスペリエンス(UX)を改善し、使いやすい仕組み作りを進めていると説明した。

たとえば、「Yahoo!ショッピング」のトップページと検索結果ページでは、スクロールしても商品が表示され続ける設計へと変更。商品掲載数は従来比で10倍となり、「結構、効果がある」と小澤常務は言う。

「Yahoo!ショッピング」のトップページと検索結果ページでは、スクロールしても商品が表示され続ける設計へと変更
「Yahoo!ショッピング」のトップページと検索結果ページでは、スクロールしても商品が表示され続ける設計へと変更
UX向上の取り組み<
UX向上の取り組み例
UX向上の取り組み例
UX向上の取り組み例

今後のシステム改善などのリリース予定についても説明した。

今後のリリース予定について
今後のリリース予定について

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