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ソフトバンクグループとの本格連携を進め、高い成長率を続けるヤフーの「Yahoo!ショッピング」。「eコマース革命」の旗振り役である小澤隆生氏(執行役員ショッピングカンパニー長)は4月1日付で、常務執行役員コマースカンパニー長に就任。コマース事業のトップとして、「2020年代初頭、楽天やAmazonを超える国内NO.1のECサービスになる」というミッションの実現をめざす。

ヤフーの戦略共有会(2018年3月2日開催)で小澤氏は、2017年の振り返り、2018年以降の戦略を語った。

【2017年】振り返り

小澤氏「有料会員制コマースの時代がきた」

Yahoo!ショッピングの出店者数は、2017年12月末時点で65万店。商品点数は2.8億点を超える。購入者数は「eコマース革命」前の2倍超に拡大したという。

「Yahoo!ショッピング」購入者数
ヤフーの2018年第3四半期(4~12月期)連結決算の資料から編集部がキャプチャ。※新規購入者数は、初回購入または前回の購入から1年以上経過して再度購入したID数。既存購入者数は、前回の購入から1年以内に再度購入したID数

2018年4~12月期(第3四半期)におけるeコマース国内流通額(Yahoo!ショッピング、アスクルにおけるLOHACO事業、一休などを含む)は5747億円で前年同期比14.0%増。

ショッピング事業取扱高(Yahoo!ショッピング、LOHACO事業、チャームの取扱高)は4609億円で同34.9%増。高水準でショッピング事業の取扱高が増えている

ヤフーのショッピング事業取扱高
3Qベースでのショッピング事業取扱高の推移(画像は連結決算の資料から編集部がキャプチャ)

ヤフーのショッピング事業取扱高拡大をけん引しているのが「Yahoo!ショッピング」。現在、「Yahoo!ショッピング」取扱高の内、月額462円の会員サービス「Yahoo!プレミアム」会員による取扱高比率が75%に拡大している(2017年10~12月期)。執行役員でショッピングカンパニー長の小澤隆生氏はこう言う。

ECの領域にも、お金を払ってでも使いたいという優良顧客が「Yahoo!ショッピング」を使っている。有料会員制コマースの時代がきたかもしれない。(小澤氏)

「Yahoo!ショッピング」取扱高
「Yahoo!ショッピング」取扱高の内、「Yahoo!プレミアム」会員による取扱高比率(画像は連結決算の資料から編集部がキャプチャ)

ソフトバンクとの連携

高い成長率を維持している「Yahoo!ショッピング」。この成長のけん引役がソフトバンクとの連携だ。

小澤氏は、ソフトバンクとの連携をスタートしてから1年間で、ソフトバンク会員による「Yahoo!ショッピング」月次注文者数推移は1年間で3倍超に拡大したと説明。ソフトバンク会員による「Yahoo!ショッピング」取扱高は1年間で4倍超に広がった。

ソフトバンク会員による「Yahoo!ショッピング」取扱高推移
ソフトバンク会員による「Yahoo!ショッピング」取扱高推移(画像は連結決算の資料から編集部がキャプチャ)。2017年2月にソフトバンク会員が「Yahoo!ショッピング」を利用するといつでも10倍のポイントを付与するキャンペーンをスタート。スマートフォンなどの料金プランの月額料金はそのままで、「Yahoo!プレミアム」が利用できるようになる制度を6月に始めた

2017年はこのソフトバンクとの連携施策が「当たった」(小澤氏)。さて、2018年以降はどうなるのか? 戦略説明会を行ったこの週、小澤氏はソフトバンクの孫正義社長とミーティングを行ったという。このやり取の一部始終をこう話す。

今年はどうするの? と言われ、頑張りますと返した。そしたら、孫さんから、100億円、200億円の投資、そんな小さく考えるな。ドーンといけ!、と。私はまだまだ行けると思っている。(ヤフーは)こんなもんじゃないぜ。でも皆さん、継続できるの? って思っていますよね。凸凹はあるかもしれないが、やりますよ。だから、皆さん、ご協力をお願いします。

【2018年以降】Yahoo!ショッピングのこれから

Yahoo!ショッピングのこれから
Yahoo!ショッピングのこれから

「Yahoo!ショッピングはまだまだ伸びる」

「ITとかテクノロジーを駆使すると言うけど、結局、ネット通販は“商い”」。このように話すEC事業者は少なくない。小澤氏も同意見。「コマースビジネスに魔法の施策はない。多くの人をサイトに呼び込み、1人でも多くの人に購入してもらう。そして、1人でも多くの人にリピート購入してもらう。地味かもしれないが、これを愚直に、真面目にやる。それをやり抜く。私たちも一緒だ」。

「Yahoo!ショッピングはまだまだ伸びる」と話す小澤隆生氏
「Yahoo!ショッピングはまだまだ伸びる」と話す小澤氏

2018年も高成長率を維持するための施策にあげたのは、2017年も実施したソフトバンクユーザー向け施策。注文者数、取扱高の割合が増えていることを踏まえ、「まだまだいける」と小澤氏は話す。

小澤氏が根拠にあげたのがソフトバンクユーザーの「膨大な伸びしろ」。2017年12月時点で、ソフトバンクユーザーの2/3はまだ「Yahoo!ショッピング」を利用していない状況。「多くのソフトバンクユーザーは、(常に10%付与されるポイントキャンペーンなどの)お得さに気付いていない」(小澤氏)。

ソフトバンク会員の「Yahoo!ショッピング」利用状況
ソフトバンク会員の「Yahoo!ショッピング」利用状況

ソフトバンクユーザーの購入金額もまだ低い。購入している金額はまだ小さい。「Yahoo!プレミアム」「Yahoo! JAPANカード会員」と比べると、ソフトバンクユーザーの年間顧客単価は4割程度。「プレミアム会員はソフトバンクユーザーの2.5倍くらい『Yahoo!ショッピング』で買い物をしている」(小澤氏)。

ソフトバンク会員の「Yahoo!ショッピング」年間客単価
ソフトバンク会員の「Yahoo!ショッピング」年間客単価

こうした状況を踏まえ、2018年もソフトバンクユーザーを「Yahoo!ショッピング」に呼び込む施策を継続。「ソフトバンク スマホユーザーならポイント10倍」を継続すると小澤氏は宣言した。

「ソフトバンク スマホユーザーならポイント10倍」を継続
「ソフトバンク スマホユーザーならポイント10倍」を継続

「他にはない大きな武器」(小澤氏)と位置付けるのがソフトバンクショップ。ヤフーは2017年3月、ソフトバンクショップ一部店舗の店内や外壁に「Yahoo!ショッピング」の人気商品の画像とQRコードを掲載し、ソフトバンクショップの来店者をECサイトへ誘導する新たな取り組みを開始スタートした。

店舗でYahoo!ショッピングのPRを行うソフトバンク六本木の外観
店舗でYahoo!ショッピングのPRを行うソフトバンク六本木の外観

リアル店舗とネットの連携施策は現在、これだけではない。効果をあげていると言及したのが、ソフトバンクが全国展開している3000店以上のソフトバンクショップ店頭での、ポイント付与特典などを含めた「Yahoo!ショッピング」利用の促進接客だ。

戦略説明会で放映された接客時の様子
戦略説明会で放映された接客時の様子

地味な接客活動の積み重ねが重要。この1年間のソフトバンクとの連携で、購入金額は増えてきている。地味だけど、5年続けたらどうなりますか? お得だからご高齢の方々などは恐らくずっと使ってくれると思う。

「伸びしろ」がある領域として小澤氏がもう1つあげたのが「決済・金融」の領域。小澤氏曰く「『Yahoo! JAPANカード』会員はすごく伸びており、取扱高もどんどん増えている」。

クレジットカード有効会員数
有効会員数は、「KCカード」「Yahoo! JAPANカード」「ソフトバンクカード(おまかせチャージ)」会員を含む数値(画像は連結決算の資料から編集部がキャプチャ)

たとえば、「Yahoo! JAPANカード」会員の「Yahoo!ショッピング」年間客単価は、非会員と比べて3倍以上。そして、「Yahoo! JAPANカード」の一部会員のみが「Yahoo!ショッピング」を利用している状況に触れ、利用者数に「大きな伸びしろがある」(小澤氏)と期待する。

Yahoo! JAPANカード会員
「Yahoo! JAPANカード」会員の「Yahoo!ショッピング」年間客単価など

ECでロイヤルカスタマーをどう作る? (会員サービスに)お金を払ってまで「Yahoo!ショッピング」を使ってもらえるようにする。それがお客さまのロイヤル化。固定客が付いてきた。だから伸び続けている。そのお客さまの数はまだ天井じゃない。3~4倍も伸びしろがある。(小澤氏)

「Yahoo!ショッピングはまだまだ良くなる」

eコマース革命後、現在のコンバージョン率(CVR)は2倍くらいに伸びた。だが、ダメなところだらけだと思っている。まだまだ伸ばさなければならない。(小澤氏)

月間CVRはeコマース革命時と比べ、現在は2倍に拡大
月間CVRはeコマース革命時と比べ、現在は2倍に拡大

「スマートフォンの会社」に加えて「データの会社」になる――ヤフーはこうした方針を掲げ、「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」といったEC関連事業を管轄するコマースグループ長の川邊健太郎副社長を新社長に昇格する人事を2018年1月に発表した(6月の株主総会の決議を経て正式決定)。「データの会社」がコマースとどのように関係していくのか。小澤氏はこう訴えた。

ヤフーは日本一、データを持っている。Yahoo!ショッピングを1度も使ってもいないお客さまでも、赤ちゃんが産まれたからオムツはどうですか? という提案ができる。今、試験的にやっているがいい数字ができている。これまで、露出のために検索をどのように使っていくかを考えてきた。今は違う。検索もデータを集めるための1つの手法。検索は一番、利用者が関心を持っていることが表れるところ。トップページ、検索、商品ページで、コンピューターあるいはAIを使って出し分けしていく。(小澤氏)

ヤフー。データの利活用によるレコメンド強化

小澤氏はEC業界全体の課題となっている物流にも言及した。

物流についてはハードへの投資をしない」と公言。それを踏まえ、ソフトバンクグループが運営する巨大ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)について言及した小澤氏は、「(SVFは)世界中の物流会社に投資している。どの技術を使えばいいのか、どの技術が日本にフィットするのか、どれがITの力で物流問題を解決できるのか検討している。いつかお話しすることができる」と説明した。

そして、小澤氏が練っているという2つの物流対策「注文タイミングの変更」「店頭受け取り」について説明した。

ヤフーの物流施策

店頭受け取り

「Yahoo!ショッピング」の出店者数は65万店舗以上。リアルのお店も多い。この店舗網を使って店頭で受け取りできないかなぁと思っている。ヤフーの強みでもある、小売り、流通業とのつながりを活用していきたい。(小澤氏)

注文タイミングの変更

物流問題の1つの課題が注文してからのリードタイミング。(日用品などの)商品を注文してから届くまでの時間を無くせばいい。IT企業ができることは、たとえば、1か月前に購入したトイレットペーパーについて、無くなりそうになる2日前にITで通知する、といったアプローチがある。それが、定期購入かもしれない。今は、「あっ」と思ってから商品を購入し、手元に届くまでの時間がかかる。ITにはこうした問題を解決する力がある。(小澤氏)

このように言及した小澤氏は、「定期購入の仕組みは作る」と宣言した。

「1人でも多くのお客さまを獲得していただきたい」

小澤氏は戦略共有会に参加した出店者に対し、こう訴える。

1人でも多くのお客さまをつかみ、リピートしてもらってほしい。「Yahoo!ショッピングで買った」ではなく、「どこどこのお店で買った」「どこどこの店長が好きだからそこで買う」といった消費者を増やしていくのがヤフーのゴールであり、基本ポリシー。こうした世界を作っていきたい。だから、「Yahoo!ショッピング」はリピートしてもらうための仕組みを作りたい。(小澤氏)

「Yahoo!ショッピング」はリピート施策に注力する
「Yahoo!ショッピング」は1人でも多くのリピート客を増やしたいという

「Yahoo!ショッピング」内での検索対策としてあげられるのが「売れる仕組み」を作ることで、ヒット商品作り、レビュー向上といった方策がある。また、PRオプションを使って上位表示をめざすといった方法店数もある。

今回、小澤氏が言及したのがランキングの刷新。「現状については良くないと言われている。いよいよ変える。優良ストアにとって意味のあるものにする」(小澤氏)。

現在のランキングは購入者数がベースで、低単価商品が上位にきている。今後、購入者数と購入金額の間を採るようにし、お客さまが望んでいるモノが上位に表示されるような良い案配にしようとしている。ストアにはアナウンスし、2月から一部のユーザー向け(全体の2割)に新しいランキングをテストしている。結果が良ければ即リリースしたい。(小澤氏)

新たな集客施策として、2.8億以上の商品の中から、最適な商品を店舗が見つけて提案するQ&Aサービス「探しもの掲示板(β版)」をスタート。消費者が抱える課題を、65万店舗の出店者が無料で探して解決するサービスとして展開していく。

探しもの掲示板(β版)
探しもの掲示板(β版)」(画像は編集部がキャプチャ)

4月には「Q&A」コンテンツを公開する予定。「質問に対して真摯(しんし)な対応をしていけば評価が上がる。評価があがれば検索結果の上位にいく仕組みを作っていく」(小澤氏)。

2018年上半期中にストア単位で運用できる「ストアスタンプカード」をスタートする予定。「1回でも多く購入してくれるお客さまを作る」(小澤氏)のが目的で、特定店舗で買い物をするたびにスタンプをため、一定数に達したときに特典を付与する仕組みにする。

2018年上半期中にストア単位で運用できる「ストアスタンプカード」をスター
2018年上半期中にストア単位で運用できる「ストアスタンプカード」をスタート

まとめ

小澤氏は2018年以降の「Yahoo!ショッピング」について、「伸びしろがある」「質がよくなる」「1人でもお多くのお客様を獲得して欲しい」とまとめた。そして、次のように講演を締めくくった。

伸びしろを加速するために私たちは頑張ります。だから、店舗さんは1人でも多くのお客さまを獲得して下さい。

小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング」の伸びしろ
小澤隆生氏が語る「Yahoo!ショッピング」の伸びしろ
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瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

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