KDDIグループのECモール「Wowma!」2017年度振り返り&2018年度の戦略まとめ
KDDIが通信サービスに次ぐ収益の柱に据える「Wowma!(ワウマ)」。KDDIグループに運営主体が移った2017年度の振り返り、そして、「飛躍」と位置付ける2018年度の戦略をまとめた。
「Wowma!」を「au」に次ぐ中核事業にする
「Wowma!」を「au」に次ぐ中核事業にする。KDDIは4月に社長が交代し、経営体制が変わる(田中孝司社長が代表取締役会長に就任し、後任に高橋誠副社長が昇格)。相応の変化が求められており、KDDIは通信事業からライフデザイン企業に変革する。これを加速していく。
2月23日に「Wowma!」を運営するKDDIコマースフォワードが開いた戦略共有会。登壇したKDDIの村元伸弥氏(ライフデザイン事業本部 コマースビジネス部 部長)は、グループ方針をこう力強く宣言した。
ECなどのオンラインコンテンツから、オフラインのコンビニなどにおける実店舗決済、金融など、auの顧客基盤上でさまざまなサービスが流通する「au経済圏」を2019年3月期には2兆円超まで拡大する方針のKDDI。
村元氏は「社内の議論で『au』というワード以上に、『Wowma!』が飛び交っている。お客さまと接触する頻度を高めなければ、サービスの流通は増えない。ではどうする? その接触頻度を高めることができるのは、コマースだ」と説明。
KDDIとして「Wowma!」を全力でサポートすると話し、「先頭を走っているライバル企業に負けない、いつか追い抜くサービスに育てあげたい」(村元氏)と宣言した。
2017年度振り返り
流通額など実績
2017年(2017年1~12月)の流通額は前年比132%。2017年12月の出店店舗数は前年同月比370%、商品数は同160%。
KDDIコマースフォワードの八津川博史社長は「主要モールと比べると、商品数、店舗数が足りない。ただ、伸び出していることは実感している」と振り返る。
2017年度は「やってみよう」をスローガンに、「集客」「サービス」「出店プラン」を重点的に強化した。それぞれの重点施策の振り返りを見てみよう。
集客
2017年9月まではシステムを中心とした足回り、組織作りに注力したと言う八津川社長。テレビCMを使ったマスプロモーションを、2017年後半に数億円を投じて実施した。対象は全国で期間は3週間。8パターンのクリエイティブを用意し、地域をわけて出稿。期間内におけるアプリのダウンロード数は20万ダウンロードを突破した。「ほぼ新しいお客さまだった」(八津川社長)
24時間限定のお得な日替わりアイテムを紹介する「日替わりセール」は、テレビCMの受け皿として本格スタート。テレビCMによってPV数、ユニークユーザー数ともに大幅に拡大。CM終了後もテレビCM期間中と同等の数字を維持しているという。八津川社長はこう言う。
システムやMDにパワーをかけている。パワーをかけると、売り場は魅力的に映り、サービスにお客さまがしっかりつく。新たな発見だった。直接プロモーションをかけなくても、積み上がっていくことを実感できた。(八津川社長)
「au」ユーザーにデータ通信料をプレゼントする企画、毎月3の付く日に「au」ユーザーがお得に買い物できるようにさまざまな特典をプレゼントする「三太郎の日」は出店者からも好評だった。
いわゆる「au」ユーザーを対象に集客を強化したこうした施策は、「売り上げが一気に伸びた」と出店者は口をそろえる。八津川社長は「(アクセスが集中して)システム一時的に止まったこともあった。ただ、『au』ユーザーにきちんとメリットをぶつければ、商品購入につながることがわかった」と振り返る。
サービス
2017年9月にアプリをフルリニューアルし、ネイティブアプリに作り変えた。八津川社長によると、アプリは「1年前と比べるとポジティブな数字が出ている」。
アプリを使った購入者は2018年1月末までに1.5倍に拡大(2017年1月比)するなど、アプリ経由の成果が上がっている。
「検索エンジンを賢くし、検索結果の精度をあげるのはECの生命線」(八津川社長)と考え、KDDIグループのSupershipが提供しているサイト内検索ソリューションを導入。コンバージョン率(CVR)は従前比で2.2倍、クリック率(CTR)は2倍に改善した。
出店プラン
「Wowma!」のスタート時に、新たな出店プランをリリース。成約手数料を実質的に値下げした。従来と比べ手数料にかかるコスト負担が軽減される設計で、売れば売るほど手数料が軽減される仕組みになっている。
従来の成約手数料は決済手数料と合わせて9~11%。新プランでは決済手数料込みの成約手数料体系で、最低4.5%からに設定した。
2018年度方針
2018年のテーマは「飛躍」。八津川社長は「KDDIからは(4月以降の)新社長の下、総力をあげてサポートいただける。飛躍できるサービスを一緒に作っていく」と話した。飛躍するためのポイントは以下の3点。
- Wow! managerの進化
- ユーザーベースの拡大
- サービスレベルの向上
「Wow! manager」の進化(店舗側)
2017年10月、店舗運営の効率を高める新管理システム「Wow! manager(ワウ マネージャー)」の提供を開始した。商品・在庫・受注などに関する各種API(自社システムとの連携)、画像管理、出荷時自動売上請求といったバックヤード業務に関する機能をメインに搭載しているが、「3月以降に、集客・販促機能を載せていく」(八津川社長)。
2018年度下期以降、「Wow!なイノベーションを提供できるようにする」と八津川社長は宣言した。
「Wow! manager」の開発計画も公表した。2018年4~6月期(1Q)までに「あって当たり前の機能」(八津川社長)を搭載。1Qからは「Wowma!」が攻めるための機能を開発し、2Q以降は「イノベーティブに関する機能」(八津川社長)を搭載していくという。
本来、ECモールになければ困る、あって当たり前の機能をまずは搭載していく。一方で、「Wowma!」ならではの機能も開発する。(八津川社長)
八津川社長が例に出したのがデータの分析。データ分析に強い人材の採用が難しくなっていることを踏まえ、「データ分析機能をモールで提供し、正しく、効率・効果的に商売できる環境を整える。たとえば、メルマガのマイクロセグメントの配信、クーポンの大幅な改善のための分析ができるようにする。そうすれば、効果の高いクーポンをより効果的に届けることができるようになる」
なお、出店プランでは2018年以降も、月会費ゼロ円で出店できる料金体系を継続する方針。
ユーザーベースの拡大
「Wowma!」は、auユーザーだけをターゲットにしているのであれば、(サービス名称を)auショッピングとかauモールにすればいい。「Wowma!」は、全ユーザーをターゲットにしているが、まだリーチできていないお客さまが多い。課題は認知度だ。
Web、SNSの活用、テレビなどを通じて接点を拡大してきたが、「来期はそれを最大化する」(八津川社長)と言う。
テレビは正直、採算という観点で見ると悪い。だが、認知度は一気に上がる。テレビCMを打ちながら、Webによるクロスメディアでアプローチすることが重要。ディー・エヌ・エー時代、ゲームを展開する上でテレビCMはとても有効だった。リアルも含めて“Wow”な仕込みをしていく。(八津川社長)
新しいユーザー層へのリーチ策を積極的に進める。ファッションフェスタ「TOKYO GIRLS COLLECTION(TGC)」と提携し、TGC公式通販サイト「SELECT STORE by TGC」の提供を「Wowma!」内で展開することに合意。
イベント企画・運営のAATJと提携し、「肉フェス」「餃子フェス」の公式通販サイトを、2018年4月下旬以降に「Wowma!」内で提供を開始する。
KDDIグループ企業、グループ内サービスとの連携を進め、オープン接点を拡大する。KDDIグループには、ビッグローブ、ママ向けNo.1アプリ「mamari」、テレビショッピング最大手ジュピターショップチャンネル、LUXAなどさまざまな企業がある。「KDDI関連のコマースはWowma!でやっていく。グループのいろいろなサービスと連携し、『au』以外の顧客接点も作っていく」(八津川社長)とした。
サービスレベルの向上(商品とユーザーのマッチング精度向上)
2018年6月にサイト内検索エンジンを全面刷新。KDDIグループのSupershipが持つ技術を活用して開発したオリジナルの検索エンジンに切り替え、消費者ごとの検索結果のチューニング、カテゴリによってパラメーターの重みづけを変えていくことが可能になった。
レコメンドやサイト内検索の精度向上につなげるほか、「グループが抱えるデータを活用し、消費者へのタッチポイントを、タイミング、ターゲットともに最適化する。そうすれば、見込み客の質とボリュームを増やすことができると考えている」(八津川社長)。
2017年に刷新したアプリでは、「ライブ感を出していきたい」と八津川社長。ターゲットとしている消費者が使うアプリに対して、「マイクロセグメントする前提で、タイムラインで情報を届ける世界観を作っていきたい」(八津川社長)。