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KDDIグループはECにどれだけ本気なんですか?」。EC事業者がもっとも気にしているのが、DeNAショッピングとauショッピングモールが統合して誕生したECモール「Wowma!(ワウマ)」にかけるKDDIグループの本気度。

「Wowma!」の出店者で食品などのネット通販を手がける「くまもと風土」の吉永安宏社長が、KDDIの本気度、売上アップのコツなどを探るため、運営主体であるKDDIグループのKDDIコマースフォワード・八津川博史社長に直撃インタビューした。

KDDIが推進するライフデザイン戦略の中核を担うのが「Wowma!」

株式会社コムセンス 代表取締役社長 吉永安宏氏(以下、吉永):2017年3月に開催された「Wowma!」の戦略共有会で、八津川社長の「Wowma!を本気で伸ばしていく」という宣言を聞いて期待値が上がりましたし、KDDIグループのEC事業に対する熱意を感じたことを覚えています。僕も含めて「Wowma!」が今後どういう方向に進んでいくのか気になっているEC事業者は多いと思いますので、「Wowma!」のこれからの計画など含めて、KDDIグループとしてのECへの“本気度”を教えてください。

KDDIコマースフォワード株式会社 代表取締役社長 八津川博史氏(以下、八津川):KDDIグループにとってeコマースは非常に重要な事業です。KDDIグループは現在、通信やeコマース、旅行、電気、金融などさまざまなサービスを通じてお客さまの生活をより良くする「ライフデザイン戦略」を推進しています。そして、その戦略でeコマースは中核と言っても過言ではありません。なぜなら、eコマースはインターネット上で消費者が最初に触れるサービスの1つであり、もっとも人通りが多い領域です。

KDDIは、ECなどのオンラインコンテンツから、オフラインのコンビニなどにおける実店舗決済、金融などauの顧客基盤上における「au経済圏」を2019年3月期に2兆円超まで拡大する計画を掲げている
ECなどのオンラインコンテンツから、オフラインのコンビニなどにおける実店舗決済、金融などauの顧客基盤上における「au経済圏」を2019年3月期に2兆円超まで拡大する計画を掲げている(画像は編集部がKDDIのサイトからキャプチャ。2017年3月時点)

吉永: KDDIグループが推進する「ライフデザイン戦略」で重要な役割を果たすのがEC事業であり、「Wowma!」であるという認識でいいのでしょうか?

八津川:はい、おっしゃる通りです。実は、KDDIグループが運営する複数のサービスを利用しているユーザーほどブランドロイヤリティが高いという調査結果が出ています。ですから、より多くのauユーザーに「Wowma!」を利用いただくことが、KDDIグループがめざす「ライフデザイン戦略」の実現につながるんです。

KDDIが仕掛けるコマース事業
KDDIが仕掛けるコマース事業(資料は編集部がKDDIの決算資料からキャプチャ)

積極的な集客プロモーションの効果は?

吉永:「Wowma!」が誕生してから約半年が経過しましたが、ポイントセールなどかなり踏み込んだプロモーションを仕掛けているなという印象を持っています。こんなにポイント還元してしまって経営は大丈夫なのかなと(笑)。それも、KDDIグループがEC事業を本当に重視しているということなんですね。

八津川:EC事業の方向性として、まずは当社の売り上げや利益よりも、「Wowma!」の流通総額を増やすことを重視しています。積極的なプロモーションでの新規顧客の獲得、成約手数料を下げて出店者を増やす取り組みも進めています。「Wowma!」は規模がまだ小さいですが、“伸びしろ”を期待していただきたいんです。そして、その期待に対して、キャンペーンや機能強化などの形で応えていきたいと思っています。

吉永:これまでのプロモーションによる集客成果はいかがですか? 出店者としてとても気になります。

八津川:直近で実施した大型プロモーションの期間中は、新規顧客獲得数が過去最高を記録するなど一定の成果をあげました。また、「Wowma! for au」で買い物をしたauスマートフォンユーザーにデータ通信量をプレゼント(一定の購入金額に応じて)する業界初のキャンペーンも効果が高かったですね。大容量データ通信のニーズが高い若年層にとって、データ通信量がもらえるキャンペーンは「Wowma!」を利用するインセンティブになったようです。

「Wowma!」の流通額は他の大手ECモールと比べて少ないことは否めません。だからこそ、他社に先駆けて新しいキャンペーンやサービスをどんどん提供していきたい。そして、お客さまには「『Wowma!』って、なんか面白いことをたくさんやってるな」と感じていただきたいんです。買い物を通じてお客さまに驚きや感動を提供していくことがモールのブランディングにもつながると考えています。

「Wowma!」の戦略共有会で公表した流通計画
「Wowma!」の戦略共有会で公表した流通計画

吉永:戦略共有会では、プロモーションだけでなく、サイト内検索エンジンの機能改善、ECモールのアプリのリニューアルなども進めると公表していましたが。

八津川:6月にサイト内検索エンジンを全面刷新しました。お客さまごとに検索結果をチューニングしたり、カテゴリによってパラメーターの重みづけを変えていくことが可能になりました。これまで外部の検索エンジンを利用していましたが、KDDIグループのテックカンパニーであるSupershipが持つ技術を活用して開発したオリジナルの検索エンジンに切り替えています。細かい改善や機能追加も随時行えるようになったことも大きなメリットの1つと言えます。

アプリは上期をめどにリニューアルしますし、管理画面の改善なども随時進めていきます。近い将来、「Wowma!」(旧、DeNAショッピング)と「Wowma! for au」(旧、auショッピングモール)を完全統合し、より便利に利用いただける環境を整えます。

DeNAからKDDIへ移ってモールの何が変わった?

吉永: DeNAが運営していた時代の「DeNAショッピング」は「ファッションに強い」というイメージでしたので、当社は2016年8月にやっと出店しました。ガラケーユーザーが多く、若年層やアパレルジャンルに強かったという状況から、「Wowma!」に変わって何か変化はありますでしょうか。

「くまもと風土」を運営するコムセンス・吉永安宏社長
「くまもと風土」を運営するコムセンス・吉永安宏社長

八津川:DeNAさんは若年層のガラケーユーザー向けサービスを多く手がけていたこともあり、10~20歳代へのタッチポイントが強かったと思います。一方、KDDIグループは携帯電話やポータルサイト、決済などのサービスを手がけており、お客さまのボリュームゾーンは30~40歳代「au経済圏」の強みを生かして、30~40歳代へのリーチを強化できるようになったことが大きく変わった点の1つです。そのため、食品などのカテゴリなどはすごく伸びていますよ。

吉永:出店者の立場としては、「au経済圏」のさまざまなチャネルから「Wowma!」にお客さまが流入する仕組みを作っていただけるとありがたいです。ぜひお願いしたいです。

八津川:まさにその仕組み作りにも取り組んでいます。たとえば、「Wowma!」とKDDIグループのデータマネジメントプラットフォーム(DMP)を連携し、お客さまの属性や購買履歴などの情報を、お客さまに許諾をいただいた範囲でECのマーケティングに生かすことを検討しています。

KDDIコマースフォワード・八津川博史社長
KDDIコマースフォワード・八津川博史社長

吉永:将来的にはDMPを活用して広告のターゲティングを行えるようにしていくイメージですか?

八津川:そういったことも見据えていますが、広告だけではありません。たとえば、特定の属性のお客さまに対して「お客さまに合った商品」をレコメンドするような仕組みも作りたいですね。KDDIグループが持つデータを活用し、「Wowma!」を利用するお客さまが欲しい商品や好みの商品を見つけやすくすることで、心地のいい売り場を提供していきたいと考えています。

KDDIの検索エンジンの強化策
検索エンジンの強化策(戦略発表会で編集部が撮影)

「Wowma!」で売り上げを伸ばした方法

八津川:「くまもと風土」さんは「Wowma!」で売り上げを着実に伸ばしています。2016年8月に出店してからこれまで、どのようなことを意識して運営してきましたか。

吉永:「Wowma!」はメルマガ配信が無料なので積極的に活用しています。また、当社の商品は嗜好品が中心ですから、プッシュ型のメール系広告メニューも積極的に試しました。広告の費用対効果を測定して効果が高いものを続けているという状況です。他のECモールで成功した施策も参考にしながら試行錯誤し、少しずつ成功パターンを見つけてきました。

八津川:特に効果が高かった施策はありますか?

吉永:メルマガの反応は他のモールよりも「Wowma!」の方が良いように感じます。「Wowma!」はauユーザーにリーチしやすいことも影響しているのかもしれませんね。

八津川:メルマガはグルメ分野ではまだまだ強力ですよね。とはいえ、最近は若い世代を中心にコミュニケーションツールがメールからSNSに変わっています。メルマガの開封率はゆるやかに下がっていると感じているのですが、どうでしょうか?

吉永:お客さまの年齢層にもよると思いますが、メルマガの開封率は下落傾向にあると思います。ただ、メルマガに対するEC事業者側の期待値も下がっているため、業界全体でメルマガの配信数が減っていけば、競争が緩やかになって開封率が上がる可能性もあるのかなと思っています。

八津川:「くまもと風土」さんは、以前から「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」など大手ECモールに出店されていて、高い実績があります。他のECモールと比べた場合の「Wowma!」の特徴や、「Wowma!」に出店して想定外だったこと、想定通りに進んだことなどがあれば教えてください。

吉永:正直、出店する前は“若年層やアパレルジャンルに強いモール”というイメージを持っていましたから、食品ジャンルが売れるのか半信半疑だったんです。「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などで培ってきたノウハウが通用するか心配でしたが、実際に運用してみると客層は他のモールとそれほど大きな違いは無いというのが実感です。

逆に「Wowma!」で突出して売れている商品もないですね。客単価は「Wowma!」が他のモールよりもやや低いかなという印象です。

八津川:管理画面の使い勝手はいかがですか。忌憚のないご意見を聞かせてください。

吉永:たとえば、決済系のデータ処理などに関して複数商品を一括で実行できないなど、少し手間がかかると感じる部分があります。

八津川:「Wowma!」のシステムは、もともとオークションサイトとしてスタートした「ビッダーズ」が基盤としてあるため、ネットショップのデータの一括処理という点では確かに弱い部分はあります。その課題解決に取り組んでいる最中です。多品種の商品を効率的に販売できるようにシステムの改修を進めており、今年末頃にはシステムを刷新できる見通しです。

吉永:使い勝手についてもう1つあげるとすれば、メルマガのセグメント配信が少し弱いことでしょうか。「Aという商品を買ったお客さまにBの商品をレコメンドする」といったセグメント配信が簡単に行えるようになるとマーケティングの幅が広がるんですが……。

八津川:顧客セグメントについても改善を図っていきます。上期中を目処に、メルマガ広告のセグメント配信メニューの高度化が実現する予定です。

「Wowma!」社長があかす売り上げと利益を増やす方法

吉永:「Wowma!」で売り上げと利益を伸ばすには、どうすればいいでしょうか? 運営側の視点でアドバイスをいただけませんか?

八津川:まず、「お客さまは、どのような導線でショップに訪れているか」をしっかり理解することが大切ではないでしょうか。ショップへの主な流入経路は「検索」「カテゴリページ」「企画ページ」などがあります。自社のお客さまがどこから流入しているかを理解し、その導線をさらに太くする施策を打っていくことが売上拡大の王道だと思います。

2つ目のポイントは、お客さまのニーズに合致した決済手段を提供すること。サービスのベースアップという意味では決済手段のバリエーションは大切です。「auかんたん決済」のお客さまを上手く取り込んでいくことも大事ですし、近年ニーズが高まっている後払いに対応することも売り上げを伸ばすためには有効でしょう。

3つ目のポイントとして、当社のECアドバイザーをぜひ使い倒していただきたい。ECアドバイザーはモール全体のトラフィックや売れ筋商品のトレンドなどを知っています。ですから、自社のショップがモール内でどのようなポジションにあるのかを客観的に把握するため、ECアドバイザーにどんどん質問していただきたい。そうすれば、効果的なプロモーション施策を打ちやすくなると思います。

また、ショップのランディングページを無料で作成できる機能や、外部企業から提供を受けているWeb接客ツールなども活用し、一段上のマーケティングに取り組んでいただくと良いですね。

吉永:大変参考になりました。ありがとうございます。

新たな出店プランで成約手数料はどれぐらい下がる?

八津川:もう1点、新たな出店プランをリリースし、成約手数料を実質的に値下げしました。浮いた予算をうまく活用してプロモーションを行い、売り上げ拡大につなげていただきたい。従来の成約手数料は決済手数料と合わせて9~11%ほどでしたが、新プランでは決済手数料込みの成約手数料体系で、最低4.5%からに設定しています。

Wowma!の新出店プランの料金など
新出店プランの料金など

吉永:新しいプランでは月商が一定額を超えると、超えた金額の部分の成約手数料率が下がるんでしたよね?

八津川:いいえ。月商が一定額を超えると、超えた金額の部分だけでなくショップの売上全体に対して低い成約手数料率が適用されます。月商が増えるにつれて段階的にショップ全体の成約手数料率は下がります。これが新たな出店プランの特徴です。たとえば、月商1000万円を超えると成約手数料率は従来と比べて3%下がることもあります。

Wowma!の月商別の手数料率。月次売上が増えるほど手数料率が下がっていく
月商別の手数料率。月次売上が増えるほど手数料率が下がっていく

吉永:それはすごい。こんなに値下げして大丈夫ですか?(笑)

八津川:みなさんに心配されるぐらい思い切って値下げしました(笑)。

吉永:この仕組みなら売り上げを伸ばすモチベーションが湧いてきますね。物流費の値上げもあり、成約手数料が下がれば利益へのインパクトがすごく大きいですから。手数料をここまで下げていただいたので、浮いた予算を広告にも回していきたいと思います。売り上げを伸ばしていくために、ぜひ効果的な広告メニューを増やしてください。

八津川:わかりました、期待していてください。どうやら時間が来てしまったようです。本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。これからも一緒に売り上げを伸ばしていきましょう。

直撃インタビューは1時間半にわたって行われた
直撃インタビューは1時間半にわたって行われた

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