「Wowma!」始動から1年――最新の状況は? 売り上げを伸ばす方法は? 出店者とKDDICF社長のホンネ対談
KDDIコマースフォワードが運営するECモール「Wowma!(ワウマ)」が2018年1月30日で開設から1年を迎えた。出店数や流通額が成長を続ける「Wowma!」で売り上げを伸ばすには、どのような戦略が効果的なのか。「Wowma!」でベビー服を販売しているコージィコーポレーションのEC担当者と、モールを運営するKDDIコマースフォワード・八津川博史社長らが対談。最新の「Wowma!」の状況、「Wowma!」で成功する方法、有効な施策などを語り合った。
新規顧客を獲得しやすいフェーズ
子ども服・ベビー服のブランド「BABYDOLL(ベビードール)」を展開するコージィコーポレーションは、全国に約80店舗を構えているほか、自社サイトや複数のECモールでネット通販を手がけている。「Wowma!」の前身である「ビッダーズ」時代の2009年から出店。2010年から2016年までの7年間で計6回、「キッズ・ベビーカテゴリー」で大賞を受賞するなど実績を積み重ねてきた。KDDIコマースフォワード・八津川社長は「Wowma!において、子ども服カテゴリーのリーダー的な存在」と賞賛する。
KDDIコマースフォワード 八津川博史社長(以下八津川):出店者として「Wowma!」に期待することは何でしょうか?
EC事業部グループリーダー 西尾知華氏(以下西尾):「au」ユーザーを「Wowma!」に送客していただくことですね。「au」ユーザーを対象にしたキャンペーン企画が行われると、「Wowma!」店のアクセス数や売り上げは跳ねることが多いんです。たとえば、「au」ユーザーにデータ通信料をプレゼントする企画や、毎月3の付く日に、さまざまな特典をプレゼントする「三太郎の日」は、顕著に売り上げが伸びます。今後も「au」ユーザーをモールに誘導する企画をたくさん実施していただきたいです。
八津川:「au」ユーザーの利用比率が高いことは「Wowma!」の特徴の1つ。携帯電話キャリアとの親和性、ブランドへの信頼感を生かし、これからも「au」を含めてKDDIグループのお客さまに「Wowma!」を使っていただくための施策を打っていきます。
コージィコーポレーションさんは「Wowma!」の他に、「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「Amazon.co.jp」「ZOZOTOWN」に出店されています。「Wowma!」と他のモールの違いを、どのように感じていますか?
西尾:「Wowma!」の特徴はキャリア決済の利用比率が高いことです。コージィコーポレーションの場合、「Wowma!」のキャリア決済の利用比率は35%。他のモールと比べて20ポイント以上も高いんですよ。
八津川:キャリア決済の利用比率が高いことを踏まえて、販促で工夫していることは?
通販部 中野由貴氏(以下中野):キャリア決済の決済上限枠がリセットされる月初に売り上げが伸びやすいのが「Wowma!」の特徴です。そのため、毎月1日は送料無料キャンペーンを実施し、顧客獲得を図っています。
西尾:「Wowma!」のもう1つの特徴では、他モールでは獲得のできない「au」ユーザーという独自の客層をもっていること。複数出店を行っても、自社をはじめ他モールの売り上げを下げることなく、ブランド全体の売り上げアップにつなげることができます。そのため、他モールよりも新規顧客を獲得しやすい環境にあると感じています。「Wowma!」は良い意味で成長段階。新規顧客が多く流入してきていると感じているので、新規顧客開拓の施策を打てばモールの成長速度と同じペースで成長できていると思います。
中野:新規のお客さまが獲得しやすい環境であることはチャンスですよね。コージィコーポレーションでは新規のお客さまの購入ハードルを下げるために、キャンペーンやクーポンの発行などを積極的に実施しています。
執行役員兼ECコンサルティング部長 島崎匡織氏(以下島崎):メルマガやWeb接客ツールなども上手に活用しているという印象です。
中野:「Wowma!」はメルマガを月12回まで無料で送信できるので、メルマガにも注力しやすいです。メルマガでセールを告知するとアクセス数が増えるので、2017年秋からメルマガの回数を増やしています。特徴としては、セールの当日はもちろん、前日にもメルマガを配信していること。前日のメルマガがセールの告知として、当日配信のメルマガでセール中の案内を行うのですが、告知~実施の案内といった流れができたことによって、既存顧客がより楽しんで買い物をする環境が整備できたと思っています。
「Wowma!」はWeb接客ツール「KARTE(カルテ)」と連携しているので、それも活用しながら販促費の最適化を図っています。手軽にABテストを行えるため、試験的にプロモーションを行うこともあります。こうした外部のツールをいち早く導入していることも「Wowma!」を使うメリットの1つですね。
「Wowma!」と「Wowma! for au」を統合した影響は?
「Wowma!」では2017年にさまざまな制度の変更が行われた。「Wowma!」(旧DeNAショッピング)と「Wowma! for au」(旧auショッピングモール)を8月に統合。管理するモールが1つに集約されたことは、出店者にとって負担減などの影響があったと見られる。
また、アプリのリニューアルを実施。12月からはテレビCMの放映を始めた。どのような影響があったのだろうか。
中野:モールが統合されたことで、販促などの作業負担が減りました。別々に運用していた2つのモールのメルマガや広告が一本化されたため、運用がとても楽になりました。空いた時間を販促や顧客分析などの時間に充てることができています。アプリのリニューアル、そしてテレビCMも始めましたよね。
八津川:以前は「Wowma!」と「Wowma! for au」を別々に運用する必要があったため、出店者さんにご不便をおかけしていました。モールを統合したことで、作業負担が減ったというご意見を聞けて良かったです。
9月にアプリをフルリニューアルし、ネイティブアプリに作り変えました。アプリならではのサクサク感や検索の操作性などを向上し、お客さまにとっての使いやすさを改善できたと思っています。
テレビCMは「Wowma!」の認知度を高めることと、アプリの利用を促進することが狙いです。「Wowma!」がスタートしてから1年が経ちましたが、「そもそも『Wowma!』って何?」という消費者もまだまだ多い。認知向上のためにテレビCMは重要だと考えています。
少し話は逸れますが、テレビCMのクリエイティブは、若年層向けと、主婦層向けをイメージしたものの2種類を流しました。どちらも顧客獲得に成果は出ていますが、今回は特に、日中の時間帯に放映したCMによって、30代女性を多く獲得できたと実感しています。この結果から、「Wowma!」は「在宅の30代女性」といった層と親和性が高い傾向も見えてきました。また、アプリのダウンロード数に関しても、テレビCMは成果の高かった施策だと感じています。
八津川:コージィコーポレーションさんでは、統合後も含めて、「Wowma!」で売り上げを伸ばすために意識していることはありますか?
中野:今は、とにかく新規顧客を獲得するための広告やキャンペーンなどを積極的に行うことが重要かなと思っています。先ほどもお話しした通り、新規顧客を獲得しやすい時期なので、店舗にとって財産であるお客さまを、新規に獲得するためのコストはまだまだ安価な段階にあります。つまり、「Wowma!」で多くのお客さまと関係性を作ることが早ければ早いほど、売上・利益拡大につなげることができると思っています。
今の段階ですと、「三太郎の日」など売り上げが大きく跳ねるキャンペーンのタイミングに合わせて、広告や独自のキャンペーンなどを行っています。現段階ですと、その策が有効だと感じています。2017年11月に始まった検索連動型広告をはじめ、モール内広告の新規の獲得効率は高いと思っています。
出店プラン変更で新規出店数は2倍に
「Wowma!」のスタートと合わせてKDDIコマースフォワードは新たな出店プランをリリース。成約手数料を実質的に値下げした。従来と比べ手数料にかかるコスト負担が軽減される設計となっており、「売れば売るほど手数料が軽減される仕組みになっているので、予算をうまく活用してプロモーションを行ってほしい」(八津川社長)という思いを込めたという。従来の成約手数料は決済手数料と合わせて9~11%。新プランでは決済手数料込みの成約手数料体系で、最低4.5%からに設定している。
八津川:手数料プランを変更したこともあり、新規出店の数は「Wowma!」スタート時と比べて2倍強に増えています。「DeNAショッピング」時代から出店しているコージィコーポレーションさんはどんな影響がありましたか?
西尾:新プランの導入以降、毎月数字を見ていますが、利益へのインパクトが特に大きいです。たとえば、売上高が昨対比で110%だとすると、利益は150%になったりしますから。
八津川:売れば売るほど“恩恵を受ける”のが商売の本質ですよね。KDDIコマースフォワードは、出店者と共存共栄のモールでありたいと考えています。出店者の増加に伴い、「Wowma!」の競争環境は厳しくなっていると感じていますか?
西尾:他モールでは顧客の奪い合いが始まっていると感じていて、セールをしなければ伸ばすのが難しい状況。「Wowma!」で言うと、競合は増えていますが、コージィコーポレーションの売り上げは着実に伸びています。八津川社長がおっしゃったように成長段階ということもあると思うのですが、出店数が増えるほど、お客さまにとって魅力的なモールになる段階なのでしょう。モールの出店者が増えて利用者も伸びていく、その結果、出店者の売り上げも拡大していくというように感じています。
八津川:「Wowma!」にはまだ出店者さんが少ないカテゴリー、つまり“ホワイトスペース”があります。カテゴリー単位では、少しずつ商品がそろってきているような状況です。消費者から見るとまだまだ満足できない部分があると思うのですが、出店者から見るとまだまだビジネスチャンスが転がっている“場”ということですね。
島崎:営業的な戦略を説明すると、いまは2つの営業方針があります。1つは他モールで実績がある店舗さん、もう1つはまだまだ伸びしろがありこれから伸張していくだろうと考えられる店舗さんへの出店依頼です。たとえば、「Wowma!」のグルメジャンル。特定商材では売れている店舗が多いのですが、まだまだグルメは伸びしろがあるカテゴリー。出店者数や商材のバランスを見ながら、出店者を増やしていきたいと考えています。
「三太郎の日」に合わせた広告やキャンペーンが効果的
「Wowma!を本気で伸ばしていく」と八津川社長が出店者に宣言したのは2017年3月。KDDIグループ傘下となり、さまざまな施策を打ち続けてきた「Wowma!」は今後、どういう方向に進んでいくのか――。
西尾:「Wowma!」はこれからの伸びしろが期待できるECモールです。出店者としては、外部とのコラボレーション企画など、面白い施策を一緒に取り組んでいきたいなと思っています。
八津川:ファッションイベント「東京ガールズコレクション」との共同事業を2017年11月に発表しましたが、こうしたイベントと連動したeコマースなど、ユーザーのすそ野を広げるようなアライアンスを今後も仕掛けていきます。「Wowma!」の独自性を打ち出せるような企画をご一緒できたら面白いですよね。
中野:私からも実務的な要望があります。たとえばクーポン機能をもう少し改善していただけるとありがたいです。顧客のセグメントに応じて配信するといった機能が増えると、もっと売り上げを伸ばしやすくなると思います。
島崎:その辺りは「Wowma!」の課題です。出店者に提供できる武器をもっと増やしていきます。クーポン機能も近いうちに改善できると思います。
八津川:じつは今、専属チームを作って準備しているので、期待していてください。今後は動画やSNSを活用して、新しいプロモーションの方法に挑戦していきます。テレビ通販番組との連動、「東京ガールズコレクション」のようなリアルイベントの連動もその一環です。コミュニティーやコンテンツを軸に、外部と連携していくと、すごく面白い化学反応が生まれるのではないかと期待しているんです。モールの名称の由来でもある「ワウ!」という驚きを、お客さまに感じていただけるように、さまざまな新しいことに挑戦していきます。