auユーザー3800万人超にアプローチできるECモール「Wowma!」2017年度の戦略まとめ
KDDIが「au」のユーザー基盤などを活用した“本気”のネット通販を始める。2兆円規模の「au経済圏」をめざすKDDIがコマースの中核に据えるのがECモール「Wowma!(ワウマ)」。「au」ユーザーにアプローチできる販路として注目が集まる「Wowma!(ワウマ)」2017年度の戦略をまとめてみた。
2兆円めざす「au経済圏」の一躍担うECモール
ECなどのオンラインコンテンツから、オフラインのコンビニなどにおける実店舗決済、金融などauの顧客基盤上における「au経済圏」を2019年3月期には2兆円超まで拡大する(2016年3月期は7300億円)。(「新たな成長軸の確立に向けて」を要約)
KDDIは「au経済圏」を拡大するため、従来の通信サービスに加え、3800万人超の「au」契約者のライフステージに応じたさまざまなサービスを、「auライフデザイン」として総合的に提供する取り組みを始めている。
たとえば、auショップを活用した実店舗でのコマース事業「au WALLET Market」、オンラインでの「au WALLET Market powered by LUXA」において食品・日用品の販売を行うなど、生活に関わる商品・サービスを提供。
また、2016年4月からの電力小売全面自由化に伴い、各地域の電力会社から電力供給を受けてサービス提供をする「auでんき」、出資企業先が提供する生命保険、損害保険、住宅ローンをauブランドの金融商品として代理販売する「auのほけん」「auのローン」なども扱う。
こうした「au経済圏」の中核を担うECサービスとして期待されているのが「Wowma!」。ディー・エヌ・エー(DeNA)が運営していた「DeNA ショッピング」、DeNAと共同で運営していたECモール「au ショッピングモール」を2016年12月に引き受け、1月30日にブランド統合したのが「Wowma!」である。
たとえば、2016年末時点で2000万枚(プリペイドカード+クレジットカードの有効発行枚数)を超えたauのポイントシステム「au WALLET」。「au WALLET」のクレジットカード決済で買い物をするとポイントを増量するといった施策を展開、買い物面では「au」ユーザー限定のメリットを、出店者には「au」ユーザーの顧客基盤の提供といった施策を展開していく。
「決済額のさらなる拡大とポイントのエコシステム構築」をめざすKDDIグループにとって、多種多様な商品を取りそろえることができるECモールビジネスは、会員のLTV(顧客生涯価値)向上などで重要な役割を担う。
こうしたことも含め、KDDIコマースフォワードの八津川博史社長は「お客さまが訪問するきっかけから消費まで楽しいお買い物体験を店舗と一緒に構築していく」と説明。
ECモールの成長を示す重要なKPI(重要業績評価指標)である流通額について、まずは3年後となる2019年度(2020年4月期)に1500億円まで引き上げるとした。
なお、「au」ユーザー向けの「Wowma! for au」と、それ以外のユーザーを対象にしている「Wowma!」は2017年9月までにサイト統合する予定。出店者にとっては、共通販促の実行、店舗運営の負荷軽減につながる。
KDDIグループが総力をあげる3つの施策
「Wowma!」を運営するKDDIコマースフォワードは2017年度、「集客」「サービス」「料金プラン」の3施策に注力する。
「au」ユーザーの流入を活用する集客施策
「au」が抱えるユーザー数は3800万人以上。この「au」ユーザーを「Wowma!」の顧客に育成する施策に着手した。
- データプレゼント
「au」ユーザー向けの「Wowma! for au」で買い物すると、購入金額に応じて最大2.5ギガのデータをプレゼントする取り組みを2017年2月に開始 - au STAR(スター)
「au」の長期利用者をター省にした無料の会員制プログラム。600万人を超える会員に向けて、クーポン、ギフト券プレゼントなどを通じて「Wowma!」へ流入させる - au スマートパス
セキュリティアプリ・人気ゲームなどのコンテンツの使い放題、限定クーポン提供といった会員サービス。たとえば、土曜日限定のポイント最大18倍を付与するセールや、毎月2日と22日を対象にした「スマートパス」会員限定セールなどを実施。会員数は1500万人 - au WALLET
新規発行でクーポンプレゼント、クレジット決済でポイント倍増などのユーザー特典を用意している。2016年末時点で2000万枚超(プリペイドカード+クレジットカードの有効発行枚数)
こうした施策はすでに1月のブランド統合以降からスタート。八津川社長は次のように語った。
「au」というキャリアを持つKDDIグループだからこそできる集客策、競合のモールにはない独自のサービスを思い切ってプレゼントする。大きなインパクトはこれからと考えているが、現状は新たなユーザーの増加はもちろん、若いユーザー層の利用増につながっている。(八津川社長)
「au」顧客基盤の活用だけにはとどまらない。KDDIのグループ企業が提供するサービスを通じて、「au」以外でのユーザー接点を増やす計画も掲げる。
2017年1月にグループ入りしたビッグローブ(ポータルサイトの「BIGLOBE」提供)、テレビ通販最大手のジュピターショップチャンネル、セレクト・アウトレット型ECサイト「LUXA(ルクサ)」を運営するルクサなど、月間7700万超のユニークユーザー(UU)の基盤を活用する計画。八津川社長はこう言う。
KDDIグループが保有するアセットは大きく、さまざまな領域に広がっている。新しい消費者にアプローチしていくには、KDDIグループのアセットを活用してリーチしていくことがポイントになる。
キャンペーン強化も重要な集客施策の1つ。「毎日、お客さまにとって“Wow!な存在になることがゴール。毎週の買い回り企画、毎月の大型施策、毎日のイベント、などを実施して、“毎日何かが行われているECモール”というポジションを作っていく。(八津川社長)
「au」の会員基盤、グループ企業の資産活用以外の目玉集客施策がテレビCMを活用したプロモーション計画。“テレビ離れ”が言われて久しいものの、その影響力は大きい。ヤフーは「eコマース」以降、定期的なマスマーケティングを行い、流通額を拡大させた。
2018年3月期中にテレビCMを活用した大量集客を、デジタルを使いながら実施。「認知を上げるだけでなく、細やかなアプローチを実現し、購入までの効果を最大化させる」(八津川社長)。
サービスの拡充
リピートセールスにおいて、アプリという販売チャネルは切っても切れないものである。今完全リニューアルを進めており、2017年9月までにサービスを開始する。モールというプラットフォームだからこそできる購買体験を提供する。(八津川社長)
アプリのフルリニューアルをこのように説明した八津川社長。ファッションコーディネートアプリ「iQON(アイコン)」を提供する、KDDIグループのVASILY(ヴァシリー)が開発パートナーとなり、開発を進めているという。
VASILYとは別サービスの開発も行い、ファッションスナップ写真でモデルが着用しているアイテムから、「Wowma!」内に出品されている類似アイテムを提案する新機能「Wowma! コーディネートSNAP」をスタートした。
画像解析・人工知能(AI)によって商品コーディネートを自動提案する仕組みで、色や素材などの解析情報をAIが機械学習し、親和性の高い商品を提案するという機能を搭載した。まずはファッション分野で提供し、インテリア分野などにも応用していく計画。
「au」ユーザー1人ひとりに適した商品を提案するため、検索エンジンのてこ入れも着手する。
グループ会社のSupershipが保有するオーディエンスデータ、「au ID」などをDMP(データマネジメントプラットフォーム)に収集。商品レコメンド、検索エンジンの運用に活用する。
「au ID」の深いところまでをDMPに格納して、最適な情報や商品をお届けする。広告メニューも決まった枠の販売ではなく、動的に広告メニューを出し分けできるようにする。(八津川社長)
またこれまでの主要24カテゴリを33カテゴリへ細分化。各カテゴリに適した検索タグを用意し、より専門性の高い売り場をめざすとした。
出店費用は月額4800円に
「Wowma!」の大目玉施策は新出店プランへの全面移行。現在、月額1万6500円と5万円の出店プランを、2017年7月に4800円に値下げ。成約手数料も決済手数料込みで4.5%~に変更した。
すべての出店店舗で4.5%~となるが、流通規模とカテゴリに応じて手数料率は変動するという。
この新プランへの移行と同時に、出店キャンペーンを始める。入会金と月額会費を1年間ゼロ円とするキャンペーンでで、申込期間は2018年3月31日までが対象。
なお、新出店プランの開始までに現行のアドバンストプランに申し込む出店店舗については、2017年6月29日までの入会金・月会費をゼロ円とする「アドバンスト0円キャンペーン」を実施している。