「楽天市場」が取り組む2017年の戦略とは? ECモールの価値向上に向けた3施策
楽天は2017年、「楽天市場」の決済や配送、検索機能などの大幅な強化を図る。「楽天市場」の店舗向け決済サービス「楽天ペイ(楽天市場決済)」を4月から段階的に導入するほか、モール内検索の表示結果のパーソナライゼーション、配送サービスの強化などに取り組む。楽天が「新春カンファレンス2017」で明かした2017年の重点施策とは。ご招待いただいた新春カンファレンス2017(仙台)で行われた講演内容から、楽天が2017年に取り組むことなどをまとめてみた。
プラットフォームの価値向上に向けた3つの施策
楽天は2017年、楽天市場のプラットフォーム機能をより高めるため「モール内のナビゲーション強化」「配送の強化」「決済の利便性強化」に取り組む。
モール内ナビゲーションを強化
ECカンパニー・楽天市場開発ジェネラルマネージャーの兼平辰也氏は、「(ユーザーが)欲しい商品にスムーズに到達できるよう機能を強化している」と述べ、楽天市場内のナビゲーション機能を改善していくと強調した。
具体的には、モール内検索機能の検索結果を顧客ごとに最適化するため、同一のキーワードで検索した場合でもユーザーの年代や性別に応じて異なる結果を表示するようアルゴリズムを改善していく。
また、検索結果の一覧画面に、スーパーポイントアッププログラムにより付与されるポイントと、店舗により付与されるポイントを合わせた、最終的なポイント倍率や送料を表示するなど、買い物の利便性を高めるための施策も推進するという。
商品ページに登録する商品名やサムネイル画像をシンプルな内容に統一していく方針も打ち出した。商品名やサムネイルに「送料無料」「セール」といったプロモーションを目的とした情報を盛り込まないようガイドラインなどで促していくという。
その理由として、「商品名や商品画像にプロモーションの情報が多いと、検索結果の画面で商品を探しにくいという意見がユーザーから上がっている」(兼平氏)と説明。プロモーションに関する情報は「キャッチコピー」の欄に入れることが望ましいとした。
商品ページへの納期表示も
配送サービスの強化にも取り組む。楽天市場ではこれまで、コンビニ受け取りや商品別配送方法設定の導入など、多様化するユーザーの配送ニーズに対応してきた。
楽天市場では、これまで店舗ごとに送料テーブルを設定していたが、楽天が作成した標準の送料テーブルの導入を推奨していくという。これにより今後は楽天会員の住所情報をもとに商品ページへの納期表示などを通じて、より便利な売り場を目指す考え。
また、購入履歴画面に配送ステータスを表示する機能を改善し、納期をアプリなどでユーザーに通知するサービスを検討していることも明かした。
「楽天ペイ(楽天市場決済)」導入で決済を強化
兼平氏は2017年4月から店舗向けの新たな決済サービス「楽天ペイ(楽天市場決済)」がスタートすることも改めて説明。楽天市場内で利用でる決済手段を統一することで、まとめ買いなど買い物の利便性を高めるとともに、店舗側の決済の負担軽減や不正注文対策などの効果が見込めると強調した。
4月以降の一部新規出店者を対象に導入されるが、既存の出店者には移行期間を設ける。既存の出店者の移行スケジュールは現在策定中だという。
データを活用した店舗支援に注力
楽天市場のビッグデータを活用した出店者支援の取り組みを強化する。例えば、ショップのサービスレベルを数値化する診断サービス「R-Karte」は今夏以降、レビューの評価点の内訳をグラフ化したり、ユーザーからの評価の根拠を可視化したりする新機能を追加するという。「R-Karte」は今年1月にも診断項目の拡充などを実施した。
また、昨年から試験的に実施していた「楽天ページ診断サービス」を全店舗に展開。同サービスは商品ページのABテストを行うためのツールを提供するもので、2016年に約1100店舗が利用した結果、「転換率が平均43%向上するなど高い成果を上げたことから全店舗への展開を決めた」(ECカンパニーCOO&ディレクター・野原彰人執行役員)と言う。
現在はパソコンサイトのみに対応しているが、2017年下期にはスマホサイトにも適用できるようにする。
店舗同士の交流を促進
楽天市場の出店者同士が交流するプラットフォーム「RON会議室」を4月にリニューアルすることも発表した。店舗運営における課題や疑問を店舗同士の情報交換による課題解決を目指すQ&A型の「ご意見番機能」を開始するほか、楽天が発信した楽天市場に関するニュースのバックナンバーをカテゴリーごとに整理して情報を追いやすくする。
人気ショップの店長などが講師を務め、他の店舗にノウハウを教える「R-Nations」(アールネーションズ)も加速させる。2017年4月に第2期「R-Nations」を開始するほか、楽天の地方支社を拠点に全国16か所で地域毎の「Area-Nations」(エリアネーションズ)も新たに実施する。
初年度の2016年は5店舗のリーダー店舗が24店舗のパートナー店舗にノウハウを提供した結果、パートナー店舗の流通額が平均50%増えるなど高い成果を上げたという。
楽天が培ってきた文化も継承
EC事業を統括するECカンパニー プレジデント・河野奈保上級執行役員は今後の楽天市場の方向性について、「(楽天市場の)さらなる価値向上のために、プラットフォームを強化するための新しいアクションを行っていく」と述べた上で、「商品やビジネスに対する出店者の想いを重視し、それぞれの出店者が持つストーリーをお客様に届けるなど、これまで楽天が大切にしてきた文化も継承していきたい」と抱負を述べた。