【詳報】「Yahoo!ショッピング」が店舗に提供するリピート&優良顧客獲得の施策「STORE's R∞(アールエイト)」を解説
「Yahoo!ショッピング」出店者は、リピーターや優良顧客への最適な接客、離反顧客への効果的なアプローチなど、リピーター・ロイヤルユーザー獲得のための施策が手軽に利用できるようになる。これは他の大手モールにはない「Yahoo!ショッピング」独自の武器――。
ヤフーは「Yahoo!ショッピング」出店者に対し、「ロイヤルカスタマーの醸成」「集客の大幅増」を支援するためのマーケティングオートメーションツールの提供を9月にも始める。子会社バリューコマースのCRMパッケージ「R∞(アールエイト)」を「Yahoo!ショッピング」用にカスタマイズし、「STORE's R∞」として提供。「Yahoo!プレミアム」「Yahoo! JAPANカード」会員といったヤフーの優良顧客を、出店サイトのリピート顧客・ファンへと育成できるようにする。
「Yahoo!ショッピング」が優良顧客へのマーケを強化する理由
「STORE's R∞」は、「Yahoo!プレミアム」「Yahoo! JAPANカード」「Tポイント」の会員、「ソフトバンク契約者」といったヤフーの会員基盤と顧客の重なりを増やし、ロイヤルカスタマーの醸成をめざすマーケティングツール。
まずは「Yahoo!プレミアム」「Yahoo! JAPANカード」の会員基盤に対して、出店者がリピート施策などを実行できるようにする。
たとえば「Yahoo!プレミアム」会員。現在の会員数は1200万人超。2016年1~3月期(第4四半期)のショッピング取扱高のうち、プレミアム会員が占める割合は57%に達した。「Yahoo!ショッピング」は、プレミアム会員などヤフーの会員基盤の消費が大きなけん引約となっている状況だ。
プレミアム会員の購買状況
- 会員のうち、「Yahoo!ショッピング」利用客は約3割(2016年4~6月)
- 非会員と比べて年間の購買金額は3倍(2016年6月時点)
- 非会員の客単価は右肩上がりで増えているものの、プレミアム会員は伸び率がもっと大きい
ヤフーは2015年2月から、「Yahoo!ショッピング」「LOHACO」での買い物で、会員は常時5倍の「Tポイント」を付与する「Yahoo!プレミアム限定5倍キャンペーン」などを開始。会員に手厚いインセンティブを提供する“会員優遇策”に力を入れている。
「STORE's R∞」は購買意欲の高い会員に対して、出店者がリピート施策を実施できるようにするもので、店舗の売上拡大を通じて、「Yahoo!ショッピング」全体の取扱高を伸ばす狙いがある。
ツールの利用は「PRオプション」の全商品設定が必要
「STORE's R∞」は「PRオプション」の特典として提供する。利用できる店舗は、「PRオプション」の全商品設定が必要になる。
PRオプションとは……モール内商品検索の結果画面や買い物カゴページ内などさまざまなページに商品をレコメンドとして掲載する広告商品。コンバージョン課金(実売後に広告料を徴収する方式)で出店者が商品別または全商品に対して0.1%刻みで1~15%の料率を設定で入札できる。
「PRオプション」は現状、全店舗が利用できるわけではない。「一定以上の売り上げ実績のある店舗というのが第一の条件」(ヤフー)のほか、さまざまな条件をもとに利用できる店舗を制限している。
ヤフーによると出稿可能店舗数は、3月末時点で約6000店舗、8月現在で約1万店舗が対象になっているという。
「STORE's R∞」を利用するには、まずは「PRオプション」を利用できるように実績を積む必要がある。
現在、「PRオプション」に出稿できる店舗は、取り扱う商品すべてに対して成果報酬として料率を設定すれば「STORE's R∞」を使うことができるようになる。設定料率は1%からで可能という。
こうした条件をクリアした店舗が利用できる「STORE's R∞」は、出店者自身で顧客情報を一元管理し、One to Oneマーケティングを実現することができるようになる。
今まで「Yahoo!ショッピング」の機能で実現できなかったリピーター、優良新規顧客にセグメントしてクーポンやお知らせを商品ページ上でPUSHできる。さらに、ストアクリエイターPro統計情報で実現できなかった自社顧客の詳細を分析することができるツールとなっている。(ヤフー)
「STORE's R∞」でできるようになること
「STORE's R∞」は、「プレミアム会員」の情報、お得意顧客の情報などを出店者が使えるようにしている。「アールエイト」は専門的なものでシナリオ設定が細かい。「STORE's R∞」は目的別、施策別のUIを入れたのが大きな特徴。(ヤフー)
「アールエイト」を「Yahoo!ショッピング」向けにカスタマイズした「STORE's R∞」は、3つのステップで施策を実行できるようにした。
「STORE's R∞」の主なサービス概要は次の通り。
- 出店者の顧客属性を“見える化”する機能
- プレミアム会員比・購入比率を“見える化”する機能
- リピート限界アラート(リピートする確率が著しく低下するライン<最終購買日からの経過日数>を超えそうな顧客をアラート表示し注意喚起
- キャンペーンの目的と具体的な施策から、対象者を自動的に抽出する機能
- 「Yahoo!プレミアム」会員限定の特別クーポンのお知らせ、「Yahoo!JAPANカード」会員限定のセールなど、価値の高いユーザーにセグメントした販促
- 2回購入、3回購入、離反しそうな顧客といったタイミングで最適な特別セールの開催、限定クーポンの配信などを行う機能
販促事例① プレミアム会員向けの施策
予算100万円の販促のケースでは、1000円引きのクーポンをプレミアム会員にのみ発行する(例:1000人)ことができる。「STORE's R∞」を導入しなければ顧客をセグメントできないため、100円引きのクーポンを1万人に発行するといった施策しかできない。
クーポンにかかる販促費用は両施策ともに100万円の費用だが、1000円引きでは顧客が圧倒的に価値を感じることができる。
販促事例② プレミアム会員以外の施策
- バースデーのユーザーに限定したクーポン
→ 特別感を演出できるクーポンを誕生日のユーザーに自動表示。モール発行のバースデークーポンでCTRを改善- 購入から言って機関リピートがない離反客向けクーポン
→ 放っておくとリピーターに育成することができなかったユーザー、他の店舗に取られてしまう可能性があるユーザーに限定して訴求することが可能
店舗へのサービス提供は9月14日を予定。開発スケジュールの変更の可能性があるものの、10月には「STORE's R∞」上でクーポンを発行できるようにし、機能を順次強化していく。